天災予言師

文字数 627文字

 私は気象庁に勤めている。
ある日、上司からこう言われた。

「こいつを持って、あの人に会ってこい」

「あの人とは?」

「伝説の気象予言師だよ」

「はぁ、どなたです?」

と聞けば。上司は風呂敷包みを、私のデスクに置くと。

「天地知正(アマチトモマサ)さんだ。
知らんのか、お前は初めてか」

「はい」

「来年、あれがあるだろう」

「何がですか」

上司の斎藤さんの言葉は、歯切れが悪い。

「あれだよ、4年に1度の・・・」

「ああ〜、オリン・・・」

「言うな!言うと何かが起きる。だから言わないのが慣習だ。我々は何があろうとも一切、
私見を挟まないのだ。あれがあるから、何も起きませんなんて、忖度はしてはいけないのだ」

「はぁ〜、分かりました。それで何を聞くのです?」

「何も起きない事をだ。これは土産だ。
私と彼は同期でな、これを渡せば分かる。
忘れるなよ、失くすなよ」

と言われて。俺は今時、風呂敷包みとは?
流行りかな、とも思いながら。住所と簡単な、地図を描いたメモを渡され。
土産を持って天地さんの自宅へと向かった。
 タクシーで着いた所は。閑静な住宅街。
そこの、一戸建ての平屋が天地さんの家だった。まあ普通だなと思った。

 小さなフェンスの門を開けて。庭の横を過ぎて、玄関で私は呼び鈴を押した。
ピンポン♪と音が聞こえた。
表札を何気に見て、一人暮らしなのかな?
と思ってしまった。
何とも厳格な木の表札があり。そこには、天地さん一人の名しか、無かったからだ。
 尤も家族の名を彫れる程、大きくはなかったのだが。
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