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 そして更に、天地さんはお茶を淹れると。
お前も食うか?とお握りを差し出したが、手でいいえと示して、話を聞いた。

「本を書いてな。斎藤が紹介してくれた出版社からな。気象庁バッシング本。タイトルは
『雨のち晴れ時々曇り、または雪、霧も出るかも?』だ。売れたなぁ〜、最近の若いのは、
タイトルが長いと喜ぶらしい。パート2まで
出したが、大して売れなかった。
あはは、まさにナマズどころか、ドジョウもいなかったんだな。だが印税と、これでも地方で講演なんかして結構儲かってる。
まっ、殆ど実地見聞と、こいつら養うのに使ってるがな。俺はお握り生活だ。台所も使えないから外食かコンビニ弁当だ、あはは。
だけど、アリゲーターガーが残り物を食ってくれるんで、残飯が出ない。綺麗なもんだよ、
この家は」

私は何となく面白かったが、兎に角帰ろうと。

「では、何も無いと斎藤さんには報告します。
貴重なお時間、有難う御座いました」

と頭を下げると。人恋しいのか、天地さんは
泣きそうな顔になり、

「実は・・・」

と、何か含んだような言葉を吐いた。
う〜ん、クソッ。まだ付き合えってかと私は、

「何です?」

と怒ったように聞いた。すると、

「いや、何でもないんだ」

「帰ります」

「それが・・・」 

「何なんですか!もう歯切れの悪い」

「君はネズミが何故、沈む船から逃げると思う沈む前にだ」

「伝説でしょ。沈んだ後に、ネズミの遺体は
探しませんから」

「あは!まあいい。私なら来年まで、東京から降りるよ、ネズミの様にね」
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