第11話ーー年越しーー

文字数 1,233文字


「部長、本日がなんの日かご存知ですか? そう、大晦日ですね。今年最後の日、ぜひ好きな部員とお過ごしください」
顧問の先生は一礼する。
「お世話になりました、来年もよろしくお願いしますね! それでは、良いお年を」

 屋上で冷たい風が吹く中、寒空にむかって手を振る先生であった。

 場面は切り替わり、瞬時に教室へとワープする。

「きたきた部長! これが今日のログインボーナスね! あと、先生がこれを部長に渡せって、プレゼントボックスに入れとくね~!」

 茶髪を短くかったセナちゃんが、満面の笑みで手をブンブンと降って部長を見送る。
 場面はそこで薄暗くなり、部長は他の場所、きっとプレゼントボックスの確認や、デイリーミッションをこなし始めた。

「ねぇねぇセナ、何渡したの?」

 只今、部員達は更衣室でグループ通話中です。
 おかっぱ姿のハナコちゃんは、セナちゃんに部長に渡した物の正体をたずねる。

「年越しそば! 一人分!」
「あ、そういえば大晦日恒例だったね!」
「今年最終推しキャラが、ここでわかる……一大イベント……!」
「スズ大袈裟すぎだし、メガネクイッてかっこよくもないから」

 一年生ペアと三年生ペアが楽しく会話をしているのを二年生ペアの私とあやなは微笑ましくみていた。
 好きな部員と一緒にすごして、そこで一緒に年越しそばを食べる。
 食べている最中には特別演出が入る。
 スズ先輩の言う通り、今現在の部長の推しキャラがわかる、重要な日でもあるのです。

「でも、ここ二・三年は年越しそば、部長渡し忘れてプレゼントボックスで伸びきって廃棄してるよね~」
「明日はきっと、おせちもあるよ!」
「お~、それも恒例だったね!」

 一年生ペアはキャッキャと笑っていた。
 明日・1月1日の元旦は同じ仕様でおせちが一人分配られるのも毎年恒例なのです。

「でも今年は……」
スズ先輩はメガネを押さえて斜め上を見る。
「最後の部長との年末年始……!!」

 ヒメノ先輩はため息をつく。

「だからどや顔で言わなくても、皆分かってるから」

 三年生ペアの漫才をみて、更に一年生ペアは笑っていた。

「お蕎麦やおせちをもらったら、特別撮影するんですもんね! セリフ覚えておかないと!」

 あやなは鼻息を荒くして意気込んでいる。

「あやな先輩、やる気満々ですね~、期待有りなんですか?」
「まあね!!」

 ハナコちゃんの問いにあやなは即答した。
 部長のSNSを覗き見した際に、あやなには謎の自信がついていたようだ。

 「そうですか~。まぁ、セナは近々でもらってるからあやな先輩より期待薄そうだし、それと比べたらありか~」
「そういう性格だからハナコはスキップされるんだぞ……」
「なにをー!」
「パートナーだからって流れでくれるってパターンもあるでしょ!」

 なんだか女の醜い部分が見えてきたので、私はすかさず、まぁまぁ、と間に入る。

「部長が忘れずにくれるかどうかの保証もないから、まずは部長が渡してくれるように信じて待ちましょう! 誰に渡すかは部長に任せて!」
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