第49話 戦う魔導師
文字数 1,886文字
「お三方!何とか後退を!」
「駄目だ!こんな奴を城に解き放つ気か?!ここで食い止める!」
ギルバが叫び、襲ってくる鳥を切り落とす。
「しかし、これでは……!」
ガーラントは剣を振り回し、リリスとおのれを護るので精一杯だ。
ルネイ達2人は、鳥に襲われながら杖を振り、必死に呪をつづった。
「おのれ!おのれ!聖なる水よ、その力を持ってこの地を清めよ!」
「地の精霊よ!地の精霊よ!その身を震わせ光を起こせ!闇を照らし、忌みたる影を消すがよい!」
床の聖水が霧となって舞い上がり、地の精霊が起こす光を乱反射する。
カッとあたりがまぶしい光に包まれ、黒い鳥達は燃え上がり、そしてチリになって消えて行った。
獣は楽しそうに、顔を上げ笑い始める。
よろめき膝を付いたグロスに、ベロリと長い舌を伸ばした。
「ヒ、ハ、ハ、ハ、ハ!ナント面白イ!
ククク!ホンロウセヨ、白イ魔導師!ソレ、女ガ死ヌゾ!ヒハハハ!」
ギュッとレナファンを握る爪に力が入り、彼女の身体が折れ曲がる。
「 きゃ、 あ、 あ、 ああ、 ああああ!!」
結界で石のようになっていたレナファンが、とうとう声を上げた。
彼女の顔に生気が戻り、激しく身を震わせる。
結界が完全に壊れてしまったのだ。
「レナファン!」
グロスとルネイが力を合わせ、大きな力を笑う獣の頭に当てる。
しかしそれはびくともせず、レナファンはいっそう壁にめり込んで行った。
「ううう……ルネイ殿……グロス殿……もう、私のことは……」
意識を取り戻したレナファンが、涙をこぼし2人に首を振る。
リリスはガーラントに護られ、複雑な呪をつづり精霊を集めながら、魔導師2人が戦っている壁から伸びる獣の顔を見上げた。
違う、あれは真の姿を現していない。
「……聖なる光を持つ精霊たちよ我が元へ集え。
その清らかな光を持って邪な者の真実を映す鏡となれ。
我が手に集まれ、我が言葉に答えよ、汝らの光はすべての者を慈しむものなり。
我らに救いの手を!ことわりによって真をあらわせ!」
リリスが高く掲げた手が、次第に光り輝いて行く。
その光は魔物をまぶしく照らし、そして巨大な魔物の顔を、レナファンを掴む爪の真実を暴いて行く。
「な!なんと!」
笑う獣の頭、それは壁から伸びた青黒い小さな無数のヘビの塊、そしてレナファンを掴む鳥の爪は、巨大な一匹の青いヘビが彼女の身体に絡み付き、壁にポッカリと空いた真っ黒な空間へと抜けようとしていた。
「本体はあの巨大な蛇! 頭はおとりです!」
リリスが大きく叫んで指を指す。
その声に、獣の頭を成していた小さな蛇はドッと一斉に床に落ち、絡まり合って一匹の巨大な大男のモンスターとなってゆく。
「コシャクナガキヨ、オ前カ?顔無シト赤目ヲ倒シタノハ?
りゅーず様の杞憂ヲ、消シサッテクレヨウゾ」
その問いにリリスは答えず、両手を掲げ心を集中する。
モンスターが手を広げると、その手の平から蛇が無数に出てからまり、大きな斧となった。
ガーラントがリリスの前に立ち、剣を構える。
太刀打ちできないのは目に見えている。
だが、身を挺してもリリスを護らなければ。
「ガーラント!」
グロスが、杖をガーラントの剣に向けた。
「地の精霊よ!剣に宿りて守護の力となれ!」
ガーラントの剣が、光り輝き軽くなる。
「オオ!」
モンスターが、渾身の力で斧をガーラントに振り下ろした。
「うおおおお!!」
バシンッ!
それは金属音ではなく、火花を上げて斧を受け止めはじき返す。
弾みでよろけたガーラントが、息を弾ませ再度来る攻撃に剣を構える。
モンスターが斧をもう一度振り上げた時、その動きがぴたりと止まった。
「精霊達よ、聖なる光を我が手に!」
すべてを清める光が、次第にリリスの手に集まりまぶしいほどにあたりを照らす。
「ナニ!」
モンスターが顔を手で覆い、思わず数歩後ろに下がった。
「風の翼よ!邪なる者を貫く矢となり、聖なる光をまとい我らの力となれ!
ルナルーン・ファルファス・セ・ガルド!」
ごうと風がリリスの手に集まり、そして手の中で光と風が絡まるように一つの矢となって行く。
「コノ光?!」
恐怖するモンスターが慌てて斧を振るう。
ガーラントが横なぎにそれをはじき、急速に弱まっていく輝きにリリスを振り向いた。
「リリス殿!」
リリスの身体が、矢を投げることも出来ず小刻みに震え動かない。
「ピピッ!リリスしっかりして!
誰か!早く来て!ピピピ」
ヨーコ鳥は、尋常でない様子に加勢はまだかと外へ飛び出して行く。
その時リリスは過度な緊張の中、すでに疲れ果てていた身体が悲鳴を上げて、膝がガクガクと震え、まるですべての血が抜かれていくような強烈な脱力感と寒気に、気が遠くなっていった。
「駄目だ!こんな奴を城に解き放つ気か?!ここで食い止める!」
ギルバが叫び、襲ってくる鳥を切り落とす。
「しかし、これでは……!」
ガーラントは剣を振り回し、リリスとおのれを護るので精一杯だ。
ルネイ達2人は、鳥に襲われながら杖を振り、必死に呪をつづった。
「おのれ!おのれ!聖なる水よ、その力を持ってこの地を清めよ!」
「地の精霊よ!地の精霊よ!その身を震わせ光を起こせ!闇を照らし、忌みたる影を消すがよい!」
床の聖水が霧となって舞い上がり、地の精霊が起こす光を乱反射する。
カッとあたりがまぶしい光に包まれ、黒い鳥達は燃え上がり、そしてチリになって消えて行った。
獣は楽しそうに、顔を上げ笑い始める。
よろめき膝を付いたグロスに、ベロリと長い舌を伸ばした。
「ヒ、ハ、ハ、ハ、ハ!ナント面白イ!
ククク!ホンロウセヨ、白イ魔導師!ソレ、女ガ死ヌゾ!ヒハハハ!」
ギュッとレナファンを握る爪に力が入り、彼女の身体が折れ曲がる。
「 きゃ、 あ、 あ、 ああ、 ああああ!!」
結界で石のようになっていたレナファンが、とうとう声を上げた。
彼女の顔に生気が戻り、激しく身を震わせる。
結界が完全に壊れてしまったのだ。
「レナファン!」
グロスとルネイが力を合わせ、大きな力を笑う獣の頭に当てる。
しかしそれはびくともせず、レナファンはいっそう壁にめり込んで行った。
「ううう……ルネイ殿……グロス殿……もう、私のことは……」
意識を取り戻したレナファンが、涙をこぼし2人に首を振る。
リリスはガーラントに護られ、複雑な呪をつづり精霊を集めながら、魔導師2人が戦っている壁から伸びる獣の顔を見上げた。
違う、あれは真の姿を現していない。
「……聖なる光を持つ精霊たちよ我が元へ集え。
その清らかな光を持って邪な者の真実を映す鏡となれ。
我が手に集まれ、我が言葉に答えよ、汝らの光はすべての者を慈しむものなり。
我らに救いの手を!ことわりによって真をあらわせ!」
リリスが高く掲げた手が、次第に光り輝いて行く。
その光は魔物をまぶしく照らし、そして巨大な魔物の顔を、レナファンを掴む爪の真実を暴いて行く。
「な!なんと!」
笑う獣の頭、それは壁から伸びた青黒い小さな無数のヘビの塊、そしてレナファンを掴む鳥の爪は、巨大な一匹の青いヘビが彼女の身体に絡み付き、壁にポッカリと空いた真っ黒な空間へと抜けようとしていた。
「本体はあの巨大な蛇! 頭はおとりです!」
リリスが大きく叫んで指を指す。
その声に、獣の頭を成していた小さな蛇はドッと一斉に床に落ち、絡まり合って一匹の巨大な大男のモンスターとなってゆく。
「コシャクナガキヨ、オ前カ?顔無シト赤目ヲ倒シタノハ?
りゅーず様の杞憂ヲ、消シサッテクレヨウゾ」
その問いにリリスは答えず、両手を掲げ心を集中する。
モンスターが手を広げると、その手の平から蛇が無数に出てからまり、大きな斧となった。
ガーラントがリリスの前に立ち、剣を構える。
太刀打ちできないのは目に見えている。
だが、身を挺してもリリスを護らなければ。
「ガーラント!」
グロスが、杖をガーラントの剣に向けた。
「地の精霊よ!剣に宿りて守護の力となれ!」
ガーラントの剣が、光り輝き軽くなる。
「オオ!」
モンスターが、渾身の力で斧をガーラントに振り下ろした。
「うおおおお!!」
バシンッ!
それは金属音ではなく、火花を上げて斧を受け止めはじき返す。
弾みでよろけたガーラントが、息を弾ませ再度来る攻撃に剣を構える。
モンスターが斧をもう一度振り上げた時、その動きがぴたりと止まった。
「精霊達よ、聖なる光を我が手に!」
すべてを清める光が、次第にリリスの手に集まりまぶしいほどにあたりを照らす。
「ナニ!」
モンスターが顔を手で覆い、思わず数歩後ろに下がった。
「風の翼よ!邪なる者を貫く矢となり、聖なる光をまとい我らの力となれ!
ルナルーン・ファルファス・セ・ガルド!」
ごうと風がリリスの手に集まり、そして手の中で光と風が絡まるように一つの矢となって行く。
「コノ光?!」
恐怖するモンスターが慌てて斧を振るう。
ガーラントが横なぎにそれをはじき、急速に弱まっていく輝きにリリスを振り向いた。
「リリス殿!」
リリスの身体が、矢を投げることも出来ず小刻みに震え動かない。
「ピピッ!リリスしっかりして!
誰か!早く来て!ピピピ」
ヨーコ鳥は、尋常でない様子に加勢はまだかと外へ飛び出して行く。
その時リリスは過度な緊張の中、すでに疲れ果てていた身体が悲鳴を上げて、膝がガクガクと震え、まるですべての血が抜かれていくような強烈な脱力感と寒気に、気が遠くなっていった。