第7話 回らない寿司

文字数 737文字

 どうしても腹の虫がおさまらないから、今朝、(かなめ)に電話して言ってやった。

「回らない寿司、食いに行かない?」
「はい喜んで♪ 私、お寿司大好き」
「いつも奢ってやってるんだから、今日はお前の奢りだぞ?」
「何つまんないこと言ってるの?」
「じゃあ、やらせろ。俺は客だぞ?」

 言いたくはなかったが、言うしかなかった。馬鹿なコイツは言われなければわからないからだ。

「何が『じゃあ』なの?」
「お前は呑み屋の女だろ」
「そうよ、だったら何?」
「だったらやらせろ」
「なんで?」
「俺は客だぞ」
「だから何?」
「だから『やらせろ』って言ってんだよ」
「なんで?」
「客だからだよ!」
「うち、スナックなんだけど」
「それがどうした」
「ソープ行けば?」
「ふざけんな!!

 俺は叫んだ。コイツの神経がわからん! ホステスのくせに自分の職務がわかってない。

「お前が奢らないんだったら、一緒に飯食ってやらないからな」
「食事くらい、一人でできるけど?」

 ほんとは寂しいくせに、生意気な! 要が素直にならないから、罰として一緒にランチしてやらなかった。俺は今朝からコイツのせいで気分最悪だ。
 お陰で今日は一人で回転寿司を食うはめになった。面白くない。いつもは二人で冗談を言い合って食ってたのに……。
 腹が立っても腹は減るんだよなあ。周りは家族連ればかりで愉しそうなのに、俺だけ一人だ。せっかくの日曜だってのに、俺の日曜を台無しにしやがって。俺は休日は楽しく過ごしたいのに。
 仕事は好きだけど、毎日面白おかしく働いてるわけじゃないんだ。だからせめて休日だけは楽しく過ごそうと決めて暮らしてるのに。それをよくもアイツはぶち壊しにしてくれやがって……!
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