第4話 三回めのデート

文字数 981文字

 だから先週はイタリアンレストランでランチを奢って、有名ブランドの服をプレゼントして機嫌を取ってやった。中間地点の七丁目の※「マンジャーレ」で待ち合わせて、昼だけど奮発してワインも開けてやったんだ。
「優良商品か※クロウニで服買ってやるよ」
「じゃあ、優良商品。※くまむらって行ったことないから、くまむらでもいいけど」
 だけど「銀座のホステスにくまむらでプレゼントした」なんて自慢できないから、優良商品でプレゼントすることに。 
※マンジャーレ……関東圏で展開しているイタリアンのファミレス
※優良商品……「安くて良い品」がコンセプトの日系ファストファッション
※クロウニ……日系ファストファッション
※くまむら……格安の日系ファストファッション

 買ってやったシャツとジーンズに着替えさせてカラオケ行って、かなり盛り上がった。だから『今日こそはイケる』と思ったのに、駅前のラブホテルに連れ込もうとしたら逃げられた。
 なんでこっちが機嫌取ってやらなきゃならないんだよ。逆だろ? ホステスが客の機嫌を損ねないように気を配るべきなのに。立場もわきまえず彼女気取りか? ムカついたから言ってやった。

「俺たち、つき合ってるわけじゃないんだぜ?」
 このセリフ言うと、たいていの女は泣き出したり泣きそうな顔になるから、生意気な態度の女にはいつもこう言ってやるんだ。
 なのにアイツときたら平然と、「うん、そうだけど?」

「帰れーッ!」
 俺が怒鳴ると要は帰った。

 アイツはホステスのくせに愛想笑いもしないし、お世辞も言わない。「好き」って言わないし、「今度いつ来てくれるの? 会いたい会いたい」とも言わない。ボディタッチもしてこないし、キスもしてくれない。胸に触ったら怒る三流のホステスだ。客に胸を触られたら、「うふん」もしくは「あはん」だろう。色気が足りない。
 枕営業すれば、もっと色気が出てくるだろうに。立ち居振舞いや声とか匂いはセクシーなんだけどな。色気ゼロだったら俺だってやりたいとは思わない。俺がイイ女にしてやるのになぁ……。
 そうだな、髪を栗色にしてゆるふわにセットして、華やかな色のアイシャドウを付けて、ラメ入りのパンストとエナメルのピンヒールを履いて、叶姉妹みたいに胸の谷間が見える服を着て、胸元にもラメ付ければ超セクシーになるはずだ。
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