第8話 復讐計画

文字数 1,082文字

 俺は単なる客ではない。一回店に行ったからすぐ「やらせろ」なんてムードのないことはしたくなかった。だから何度も奢ってやったしプレゼントまでしてやったのに、客の誘いを断るなんて言語道断だ。
 わざわざ日曜にデートに誘ってやって恋人気分を楽しませてやったのに。これからだって日曜にはデートしてやるつもりだったのに。
「お店に来て」って頼まれれば、緑ケ丘のスナックになら行ってやろうと思ってたのに、アイツは可愛いげがないから一切営業かけてこない。だから、「もう店には行ってやらないぞ?」って切り札が使えない。イライラする。
 
 ホステスのくせに客を選り好みするなんて生意気なんだよ。客に誘ってもらったら、感謝して抱かれればいいんだ。もっとサービスの良いホステスに乗り換えられないとわからないんだろうな。馬鹿な女だ。銀座のホステスといっても所詮はヘルプホステスだし、知性なんかない。顔採用だ。
 第一、場末のスナックに来るような民度の低い客と話が合うのは、ソイツらと同じくらい知性が低い証拠。「オナホって何? (うま)(たん)って何? (かく)(へん)って何?」とか言ってて、世間知らずで無知無教養。馬鹿だから面白がられてるだけ。
 要の店に行ったのは一回だけだからまだボトルは入れてないけど、明日はほかのホステスと連名でボトル入れてやる。アイツには飲ませてやらないし、口も聞いてやらない。
 指名替えしてやりたいところだが、アイツの店は指名制じゃないから、指名替えして悔しがらせてやることができない。イライラする。
 アイツの目の前でほかのホステスとイチャイチャして()かせてやる。もうアイツの(かね)(づる)にはなってやらない。俺を怒らせた罰だ。泣いても許してやらない。イイ気味だ。
 明日はママにも苦情を言っておかないと。客に対するサービスを徹底するように教育しなかったのはママの監督不行き届きだから、明日はボトル代くらいはサービスしてもらいたいところだ。
 俺に叱られたママがアイツを首にするかもしれないが、そうなっても俺のせいじゃない。アイツの職務怠慢のせい、身から出た錆だ。

 警察だって俺に味方してくれる。裁判官だって俺の主張を認める。すでに判例があるんだからな。俺の主張を理解できない奴が馬鹿なんだよ。
 ホステスのくせして枕営業もせずに、客に店に通ってもらおうなんて、考えが甘すぎる。
 
 甘 っ た れ ん な !

 ああ、イライラする。あの女のせいだ。気分転換にちょっと張り込みにでも行ってこよう……。

(了)
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