第11話

文字数 609文字

ちょうど日曜日。
ふたり、初めての共同執筆だった。
たしか太宰が妻に口述筆記させていた事に、ふたり同時に思い至り、悦に入った。
「誰が珍保を殺したか?」
もう、タイトルからして、花は夢中になった。
珍保が靭帯切るまではそのままの描写。
矢作川珍保の狂信的なファンである高島華が、スノーボードレッスン受講者に紛れ込み様々な仕掛けを施して我が物にせんと、と見せかけて、来たわ!セルフ犯人。
実は死にたい、死にたくてたまらない珍保が華のせいになるように仕組んだ巧妙な自殺。
もう、なんで世間様はこのスリルがわからないのだろうか。
スティーブン・キングの「ミザリー」のモロパク、華がハサミを持って無事な右足の腱もきっちゃうの?!
は、悲鳴を上げちゃった。
結局優しい華がギプスを切る描写で、心底ホッとしたわ。
すごいすごいすごい!
やっぱり珍保先生はすごい。
わたしなんか、足下にも及ばない。
逆立ちしたって。
他にもそう思ってる人たちが、たくさんいるはずだよ。
それでも、憧れの先生の新作を筆記出来る素敵な時間。
「フランスへ行く」に活かさなきゃ。
わたしが先生のいちばんのファンになれるチャンス。
まみちゃんさんを、出し抜く。
それには、筆しかない。
だって、まみちゃんさんは珍保先生との情事にだけ頗る付きに感度が良くて、わたしは不感症。
先生となら、とも思うけど、怖いんだ。
だから、「フランスへ行く」は先生にだけ読んでいただいて、きっと「悪くないね」と言わせるんだ。
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