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文字数 2,295文字
村役場の大広間。
ふんぞり返った少年の前に全村民が頭を垂れている。
その狭間にはご馳走が並んでいるものの、彼の舌には合わなかったようだ。
ぎゅるるるるるぅ
簀巻きからはみ出た熊さんパンツがうなだれる。
ちなみに今は3時のおやつの時間である。
人間の尊厳を捨て、文字通り犬のように貪り始める。
彼は村民に泣きつかれ、お願いされている立場だった。
慈善家でないことは、その横柄な態度から一目瞭然である。
ちなみにこの世界にはエルフ、ドワーフなど様々な人種が存在する。
パンピーとは繁殖力だけが取り柄の、ごく普通の一般人種のことである。
そう、この男は冒険者ビジネスの火付け役であり世界一の有名人。
ダンジョン経営で瞬く間に巨万の富を築いた世界一の大富豪。
少女が知らないのはアホだからであり、田舎者でさえもその名と功績は知れ渡っている。
魔術革命によって近代化した現代社会においては金こそが正義。
武力に代わって金がすべてを支配するようになったこの社会的変化をマネッサンスと言う。
それすなわち、経済を制す者は世界を制すこと。
いわばこの世界を牛耳る支配者と言っても過言ではない。
貧乏人は金持ちの横暴にただ涙するしかなかった。
確かにこの村の状態は酷いですなぁ。
風水は乱れ放題、悪性化した精霊のせいで災害続き。
作物は育たず、汚染されたマナによって魔物が生まれ続ける。
これといった特産品もなく、傭兵を雇い続ける余裕もない。
村の若者達は現実逃避し冒険者へ。
もう滅ぶのを待つだけですな。
眼帯髑髏のマスコットが渋い声で村の悲惨な現実を突きつけた。
専門家の評価によってさらに不安を煽られ、村人達の顔が青ざめていく。
村長はハムスターのように頬いっぱいご馳走を詰め込んだルザリカを差し出した。
ちょっと嫌そうな顔をするムッソ。
先ほどのように魔物が村までやって来るということは、龍脈が機能していないということですぞ。
しかしダンジョンが建設されれば風水が安定し、マナが正常に循環するようになる。
悪性精霊も生まれなくなり、豊作は約束され、魔物もダンジョンに封印される。
外から冒険者がやって来るようになり村の経済も潤う。
我が社の
何をためらう必要がありますかな?
村長、どうせ国はダンジョン屋に逆らえねぇ。
刃向かうもんなら滅亡あるのみ。
修羅の国、ジャポネなんて丸々ダンジョン屋の支配下だべ。
オラ、魂さ売って宿屋経営頑張るべよ。
きっと若ぇもんも戻って来る。
んだんだ。
年中お花畑のボンボン陛下よりムッソ様についてった方がええ。