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文字数 2,649文字
寂れていた村は一転、ダンジョンオープン初日から大盛況で村は冒険者で溢れかえっていた。
あらかじめ広報担当の
より早く攻略マップを作成し情報を売る者、どんな装備対策が売れるか検証し商売の手配を始める者、蘇生代行で儲ける者など、ダンジョンビジネスに乗っかる商人があちこちで見られる。
早速ダンジョンで手に入れたお宝を鑑定屋に持ち込む冒険者カップルも居た。
どうする、タッくん?
いい武器があれば龍穴温泉まで辿り着けるんじゃない?
早く背中流しっこしたいなぁ♪
尻尾をフリフリ、営業スマイルで手続き契約を取り付ける可愛らしい猫耳店主。
カップルが帰った後、キュピーンと目を光らせほくそ笑む。
お祭りのような村の変わりように、ウキウキしながら村を見て回るルザリカ。
あ、村長が預かってた鼻垂れ女……。
こいつとは何も……。
いつの話だっ!?
トーテムポールもなくなったんだし無効だ!
お前のお守りをしてたら命がいくつあっても足りねぇ!
勘弁してくれぇぇぇぇぇぇ!!!
部屋に置いてあったルザリカの絵日記をそっ閉じする村長。
そこに泣きつかれたのか、ションボリしたルザリカが帰って来た。
翌日、村を立つダンジョン屋の見送りに、村人達が停泊した飛行船の前に集まっていた。
その中にひと際狂った格好の人物が一人。
契約通り、この村はダンジョン屋の支配下に置かれ、上納金も毎年払ってもらう。
キサマらは借金が返済されるまで全員、我が社の
そしてそこのアホは治療費の支払いもあることを忘れるな。
まぁお前の能力では一生
そう言い残し、ルザリカを置いて飛行船に向かうムッソ。
ダンジョン屋の幹部達が頭を下げ主を迎える。
「話が違うべ、村長?」
予定と違う展開に戸惑う村人達。
涙ぐみながら、静かに呟くルザリカ。
いつもと違うヒロイン臭に面食らう村人達。
しかし最後のセリフは意味不明だった。
ムッソの後ろ姿が立ち止まる。
だが恐れ多くも偉大な俺様が、おまえにピッタリな仕事を斡旋してやろう。
そうでもしない限り、一生かけても借金払い切れないだろうからな。
有難く思え。
今日からおまえはダンジョン屋の専属ベータテスターだ。
こき使ってやるから覚悟しろ。
言っとくがおまえはすでに俺の所有物だからな、契約が完了するまで拒否権はない。
アホの子の表情がパっとお花畑のように明るくなる。
切り替えが早いのがルザリカ・バッカミールの取り柄なのだ。
離陸し始めた飛行船にジャイアントスイングでルザリカを投げ入れる村長。
――かくして、アホの子は世界に羽ばたいたのだった。
「玉の輿……っ!!」
村人達は心の底から笑顔で見送った。
第一話『ダンジョンエンジニアのおしごと』 完