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文字数 2,223文字
アホの子は村周辺の案内も兼ねて、ムッソに同行することになった。
新しいスカートを用意したのでもう大丈夫。
荒ぶる熊さんパンツは冬眠した。
愉快な見た目とは裏腹に、渋い声で自己紹介する眼帯の髑髏。
しかしアホの子でなくとも魔物にしか見えない。
だがアホの子はその説明で納得してしまった。
一行は魔物との戦いで施工された仮設街道を進んでゆく。
人、それを泥棒と言う。
そんな調子でアホの子は村自慢を続けた。
笑顔は崩さなかったが、微妙に寂しそうな顔をするルザリカ。
ムッソがまったく関心を示さなかったのもそのはず。
さっきから紹介している場所はただの荒れ地に過ぎなかったのだから。
ムッソが破壊したわけではない。
風水の乱れによって作物が育たなくなったのだ。
少しセンチメンタルな感慨にふけながら、トボトボと先行くムッソとスカールじーさんについていく。
行き先は知らない。
デレ始めたチョロいアホの子の一人漫才を無視し、森の奥へ奥へと突き進む。
そろそろ夕暮れ時だ。西の空が赤みを帯び始めている。
近くに滝があるのか、水が水面を叩きつけるような音が聞こえる。
立ち止まって静かに風向きや周りの地形を観察し始めるムッソ。
何をやってるのか理解できず、茫然と空を見上げるルザリカ。
花火にしては味気ない。
その間にムッソは杖から発生された光で、ペンを走らせるように大きな魔法陣を大地に描いていった。
ますます意味が分からない。
退屈し絵日記を書き始めると、空から大きなカバンが降って来た。
見上げるといつの間にやって来たのか、大きな飛行船が浮かんでいた。
照明弾は飛行船に合図を送るためのものだったのだ。
カバンの中には骨がギッシリ入っていた。
事件の予感にルザリカの七色の脳細胞が一つの結論を出す。
スカールじーさんの忠告直後、ムッソが施した術式を発動させた。
魔法陣が光り、渦巻くように大量の光る粒子が吸い込まれていく。
周囲の森がざわめく。
魔物がおびき出され始めたのだ。
地鳴りまで聞こえ始める。
揺れはだんだん激しくなり、遂には大噴火した。
魔法陣を描いた大地から太くて長い、巨大な何かがうねり出てくる。
あまりの巨大さにガチで腰を抜かし、失禁するルザリカ。
現れたのは直径だけで30メートルはあろうかという超巨大なワーム(ミミズ)だった。
スカールじーさんが金色の光を放ちながら吠えた。
飛行船から落とされたカバンが弾け、中身の骨や鎧がGさんの周囲を回り始める。
そのまま空中で結合していき、じーさんは巨漢の骸骨騎士に合体変形した。
じーさんが両掌を合わせて引き離すと、その狭間から激しくスパークを放つ禍々しい巨大な剣が現れる。
力強く大剣を握ると、彼は遥か上空まで跳躍した。
じーさんから放たれた衝撃波で巨大ワームが木っ端微塵に弾け飛び、キノコ雲が発生する。
ルザリカの意識はそこでいったん途切れた。
すぐさま彼女は自分の股間に異常がないか調べた。
すっぽんぽんの状態で布団に寝かされていたルザリカ。
その疑問の答えはすぐに村長と元に戻った(?)じーさんの口から明かされることになる。