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文字数 2,223文字

魔王ムッソ・ゴルドスキー!


何を企んでるのか知らないが、このルザリカ・バッカミールがその悪事を暴いてみせる!

村長の名にかけて!


だから今は利用されてるフリをしてあげてるだけなんだからねっ!?

アホの子は村周辺の案内も兼ねて、ムッソに同行することになった。


新しいスカートを用意したのでもう大丈夫。

荒ぶる熊さんパンツは冬眠した。

頭のネジをどこに置き去りにしたんだ、このアホは。
ところでそっちの魔物はおまえの使い魔か?
アホの子はトコトコと健気についてくる頭蓋骨の従者について尋ねた。

吾輩は秘書である。魔物ではない。


スカール・G・ゴメボロスと言うれっきとした元人間である。

愉快な見た目とは裏腹に、渋い声で自己紹介する眼帯の髑髏。

しかしアホの子でなくとも魔物にしか見えない。

そうか、世界は広いな……。

だがアホの子はその説明で納得してしまった。


一行は魔物との戦いで施工された仮設街道を進んでゆく。

ここがジャレミアさんのオレンジ畑、あそこがマンマミーアさんのトマト畑。


昔はよく近所の子と一緒に、頼まれもせず味見してあげたっけ。

どっちも世界一の味なんだから!

人、それを泥棒と言う。


そんな調子でアホの子は村自慢を続けた。

……でも全部枯れちゃった。


笑顔は崩さなかったが、微妙に寂しそうな顔をするルザリカ。


ムッソがまったく関心を示さなかったのもそのはず。

さっきから紹介している場所はただの荒れ地に過ぎなかったのだから。

ムッソが破壊したわけではない。

風水の乱れによって作物が育たなくなったのだ。


少しセンチメンタルな感慨にふけながら、トボトボと先行くムッソとスカールじーさんについていく。

行き先は知らない。

ねぇ~、ムッソ。

いったいどこに向かってるの?


――はっ、もしかして駆け落ちっ!?


それは困るっ!

おまえは魔王であたしは勇者。相容れぬ関係なのだ!


ちょっとお尻見たくらいでいい気にならないでよねっ!?

デレ始めたチョロいアホの子の一人漫才を無視し、森の奥へ奥へと突き進む。


そろそろ夕暮れ時だ。西の空が赤みを帯び始めている。

近くに滝があるのか、水が水面を叩きつけるような音が聞こえる。

立ち止まって静かに風向きや周りの地形を観察し始めるムッソ。

この辺でいいだろう。
ムッソは何やら短い呪文を唱え、杖の先端から照明弾のようなものを打ち上げた。
???

何をやってるのか理解できず、茫然と空を見上げるルザリカ。

花火にしては味気ない。

その間にムッソは杖から発生された光で、ペンを走らせるように大きな魔法陣を大地に描いていった。

何が始まるの?

召喚の儀式みたいなものですな。


あの魔術陣が餌になるのである。

ますます意味が分からない。


退屈し絵日記を書き始めると、空から大きなカバンが降って来た。

見上げるといつの間にやって来たのか、大きな飛行船が浮かんでいた。

照明弾は飛行船に合図を送るためのものだったのだ。

何あれ?
吾輩の私物である。
少し興味が沸き、カバンの中身を覗きに行くルザリカ。
骨ぇぇぇ!?

カバンの中には骨がギッシリ入っていた。

事件の予感にルザリカの七色の脳細胞が一つの結論を出す。

埋めるのか?


そして目撃者であるあたしも……。

身構えながらジリジリと一人と一匹から離れていく。

そろそろここは危ないのである。

もっと遠くへ離れた方がいいですぞ。

スカールじーさんの忠告直後、ムッソが施した術式を発動させた。


魔法陣が光り、渦巻くように大量の光る粒子が吸い込まれていく。

魔術で強制的に龍脈を再生し、龍穴を作る準備をしているのである。

魔物はマナに敏感であるからして――

周囲の森がざわめく。

魔物がおびき出され始めたのだ。

地鳴りまで聞こえ始める。

なんだか地面も揺れてるような……。

揺れはだんだん激しくなり、遂には大噴火した。


魔法陣を描いた大地から太くて長い、巨大な何かがうねり出てくる。

ぎゃあああああああああああああ!?

あまりの巨大さにガチで腰を抜かし、失禁するルザリカ。


現れたのは直径だけで30メートルはあろうかという超巨大なワーム(ミミズ)だった。

ミナギッテキタァァァァ!!!

スカールじーさんが金色の光を放ちながら吠えた。

飛行船から落とされたカバンが弾け、中身の骨や鎧がGさんの周囲を回り始める。


そのまま空中で結合していき、じーさんは巨漢の骸骨騎士に合体変形した

金骨合体! グレイト・ゴメボロス!!


ヌゥゥゥゥゥン!!

じーさんが両掌を合わせて引き離すと、その狭間から激しくスパークを放つ禍々しい巨大な剣が現れる。


力強く大剣を握ると、彼は遥か上空まで跳躍した。

人類撲滅週間(リトルジェノサイドウィーク)!!!

じーさんから放たれた衝撃波で巨大ワームが木っ端微塵に弾け飛び、キノコ雲が発生する。


ルザリカの意識はそこでいったん途切れた。












う~ん……ハッ!?
ルザリカが次に目覚めたのは、村長の家で借りている自室だった。


すぐさま彼女は自分の股間に異常がないか調べた。

ミミズにおしっこかけたら、ちんちん生えるんだっけ?


…………。


良かった、生えてなぁ~い♪


でもなんでパンツはいてないの?

すっぽんぽんの状態で布団に寝かされていたルザリカ。

その疑問の答えはすぐに村長と元に戻った(?)じーさんの口から明かされることになる。

おお、起きたか。


丸一日、包帯でグルグル巻きにされて寝てたんじゃぞ。

だから危ないと言ったのである。


バラバラ死体を拾い集めて蘇生するのに苦労したのである。

えええええええええええ!?


今度こそお嫁にいけないよぉぉぉぉぉ!!!

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登場人物紹介

ルザリカ・バッカミール


世間知らずな田舎出身の冒険者。

実力が伴わない自信家。要するにヘタレ。

気持ちが前過ぎて勘違いばかり。


ありとあらゆるトラップにかかる才能(バカ)があり、生成したダンジョンのベータテスター(奴隷)として雇われる。

ムッソ・ゴルドスキー


見た目は少年だが、世界一のギルド社『ダンジョン屋』の社長。

金こそが全てというマネッサンス社会に君臨する絶対的な支配者。


ダンジョンを中心とした冒険者ビジネスの火付け役であり、その影響力は国も動かすほど。

頭の悪い人間をすぐに小馬鹿にし利用する。性格が悪い。

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