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文字数 3,056文字
村にたむろしていたモヒカン男達が各々の武器を振り回し、魔物に突撃していく。
彼らは魔物から村を守る傭兵だったのだ。
住人の裏切り(?)によって縛り上げられた少女が噛みつくように少年に言い放つ。
村長は無言で彼女の上半身を脇に抱え込んだ。眼帯を付けた頭蓋骨に手足がくっついただけの間抜けな姿の従者が、その見た目とは裏腹に渋い声で状況を説明する。
モヒカン達が戦ってる相手は成人サイズの鶏に蛇の尾が付いた魔物が数匹、そして3メートルは超そうかという土くれで出来た巨人。
いずれも魔物側が優勢だ。
突撃したと思ったら、出血大サービスで舞い戻って来るモヒカン達。
眼帯髑髏のマスコットがモヒカン男の容態を確認した。
ちーん。
アホの子は赤から青に顔色が急変した。
ちょっとちびったかもしれない。思わず内股になる。
アホの子の拘束を解き、機械仕掛けの剣を渡す村長。
セーフティーロックが壊れているので、難なく抜刀し鞘を投げ捨てるルザリカ。
コカトリスが振り向きもせず、尻尾を伸ばして少女に攻撃する。
尻尾が蛇になっているコカトリスは後ろにも目があるのだ。
少女は咄嗟に転がって避けたつもりだったが、お尻に噛みつかれてしまった。
刹那、蛇の首が飛んだ。
わんわん泣き叫ぶ少女の前に一人の男が現れる。
ヒーローの登場に思わずときめきの予感を感じる少女。
その男の頭にはコカトリスにも負けない、深紅の立派なトサカがそそり立っていた。
機敏で優雅な足運びは嘴による猛攻をかすりもせず、瞬時に懐に飛び込んでコカトリスの首を鎖鎌で斬り裂く。
その鮮やかな業前の持ち主は――
さっきまで死んでいたモヒカン男だった。
彼の額に貼られていた霊符が自然発火し燃え尽きる。
同じように次々に額に霊符を貼られたモヒカン男達が、機敏なゾンビとなって次々に魔物を仕留めていく。
後ろで少年が両手で印を結び、何らかの術式を発動させていた。
解説する骸骨。だが誰も聞いていない。
生き返れたものの、地獄の苦しみに痙攣を起こしながら地に伏していくモヒカン達。
殆どの魔物は倒され、残るはデカブツのゴーレムだけとなった。
図星だ。
村人達は事の成り行きを彼の後ろで、まるで見世物のように観客席を作って見学していた。
あんたは手足の前に胴体だろ、と突っ込みたかったが懸命に堪える村長。
彼が言いたかったのは彼の配下の屈強なSP達の存在である。
どこにも見当たらないが、きっと近くに居るはずなのだ。
あまりに一瞬の出来事で理解出来た者は少年とその従者のみ。
魔物や林を消し飛ばした大地を穿つ一撃は、隣の山の麓まで貫通する巨大な一本道を形成した。
遅れて磁気嵐に弾かれたモヒカン達が降って来る。
「ああ、あの入り口にあった出来損ないの案山子っぽい何か……」
多少は不憫に思ったが、ぶっちゃけ邪魔だったので清々した村民達。
村長はボケっとお尻を突き出したまま固まってるアホの子の子供パンツに、破れたスカートを覆ってやった。
よく分からないが、アホの子は言われた通り紙切れに自分の名前を署名した。
文字に淡い魔法光が灯る。
患部に呪文が刻まれた絆創膏を貼る少年。
さらに術式促進のための印を結ぶ。
乙女の柔尻をプニプニと突かれ、悲鳴をあげながら慌ててパンツをはくルザリカ。