1-5
文字数 2,024文字
よく分からないが、村民のためになることなのだろう。
ガラクタは村長の庭の女神像の前に集められた。
刃こぼれした年季の入った包丁、使わなくなった古い鍋の蓋、頭がもげてボロボロになった案山子、あちこちで使いまわされていたトイレ掃除用のスッポンなどなど。
じーさんの答えの意味が分かるはずもなく、ルザリカはムッソの行動をボケーっと見物した。
廃品ひとつひとつに札を貼り、それらを取り囲むように地面に魔法陣を描いていく。
最後に呪文を唱えるとガラクタの山が魔法陣に沈んでいった。
その一部始終をぽかーんと口を開けたまま、アホ丸出しの顔でルザリカは見送った。
涙を流せるのなら流してあげたいじーさんであった。
もちろん色んな意味で。
ムッソは回収した機械仕掛けの剣の柄で、持ち主の口に蓋をした。
催事に使われる広場に移動し、再び魔法陣を描き始めたムッソに質問するルザリカ。
促されるまま一同は魔法陣に乗った。
ムッソが魔術を発動し、視界が光に包まれる。
目が慣れるのに数分かかったが、どうやら別の場所へ転送されたようだ。
キョドっているルザリカの視界の片隅では、すでにムッソとGさんは次の作業に移っている。
二人がちゃっかり対ショック閃光防御用のサングラスを着用していたことに少女は気付くはずもなかった。
そこは巨大ワームと遭遇した森の広場。
爆発現場は巨大なクレーターになっていた。
ムッソは片手を地面につき、何やらブツブツ唱えながら穴の様子を見ている。
離れた木の影から足を震わせながら尋ねる。
よほど怖かったらしい。
冷めた目で言い放ちながら、ムッソは魔法陣を起動させた。
続けて呪文詠唱が始まり、周囲が暗くなっていく。
空に巨大な穴が開いていた。
大気を吸い込み、草花を吸い込み、光さえ吸い込む漆黒の渦。
ルザリカの髪が逆上がり、熊さんパンツもコンニチワ。
その渦の中心から何かが這い出ようとしている。
超巨大な岩石が大地に静かに降臨する。
しかしこの巨大質量である。
風圧でルザリカは軽く吹っ飛んで行った。
木の枝にひっかかり、逆さまになった熊さんパンツが呟く。
ムッソが空中にバラまいた陰陽式の札が、意思を持っているかのように飛び回って巨大岩石の周囲に結界を構築していく。
田舎者の上にバカなルザリカには理解できないが、これも高度な術式を幾重も重ねた凄い職人芸なのである。
ムッソの杖に仕込まれたインスタント魔術が巨大岩石を掘削する。
クレーター内部へと続くトンネルが生まれ、その内壁が仄かに光を帯び始めた。