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文字数 3,125文字
クレーターの蓋になった巨大岩石、その隙間にぽっかり出来た入り口は坂道になっており、クレーター中心部に向かっているようだ。
初めてのダンジョンチャレンジの前に、ルザリカは冒険日記(絵日記)を付けようとポシェットをまさぐった。
掘削して出来た坂道の終着点はクレーターの中心部――地下へ続く巨大な縦穴に繋がっており、ルザリカはそのまま落ちて行ったようだ。
ムッソは縦穴の周囲に魔術と錬金術を組み合わせた術式で螺旋階段を作りながら、じーさんと共にゆっくり底へと降りてゆく。
縦穴の底ではパンツ丸出しで頭から地面に突き刺さったルザリカが死んでいた。
風水を読むと壁に魔術で空洞を生成し、同時に収納魔術陣からトイレセットを召喚する。
じーさん曰く錬金術で元素変換しながら魔術で施工し、精霊術で全自動の風水式便器を設置したとか。
だが漏れそうになってたルザリカは聞く耳持たずトイレに駆け込んだ。
魔物であるが社長が精霊術と魔術で作った魔法生物である。
機械人形と同じように人工精霊に従って動くだけで、害はないですぞ。
むしろ紙要らずで清潔に、便秘に悩む女性にも人気なのである。
毒素も分解、体内マナも整ってスッキリしたはず。
トイレは冒険者を助ける貴重な回復ポイントである。
他にも落とし物を回収して宝箱に入れてくれたりと、スライムはダンジョン機能を支える労働力と言えますな。
真っ赤になって慌てて離れるルザリカ。
白けた目で凝視するムッソ。
しかも1匹ではない。
先頭に続いて十数匹の群れが襲いかかってきた。
魔術機関とはルザリカが振り回している剣にくっついた機械部品を指す。
それは冒険者の間で流行中のインスタント魔術が組み込まれた武器である。
勘違いした冒険者も強くなった気になれる優れ物なのだ。
言われた通りに操作するルザリカ。
剣から突き出たパイプ(?)から蒸気のようなものが吹き出す。
しかし同時にふたつの事が出来ない子なので、その間にコウモリにたかられ噛みつかれる。
刀身に魔法の光が灯る。
ムッソが杖で魔法陣を描く時と同じものだ。
ギリギリ三角形と判定された魔法陣が光り、それぞれから真空刃が発生する。
かまいたちに切り刻まれたコウモリが次々に落下していく。
無駄撃ちしたせいでオーバーヒートし、剣から大量の蒸気が吹き出される。
ポロポロと泣きながら下手糞な絵日記をつけ始めるルザリカ。
おっぱいには霊符が貼られている。
しかしアホの子は魔物を倒して手に入れた宝石類を見てすぐに立ち直った。
ダンジョンの中だけである。
精霊術で風水をコントロール、陰陽術と錬金術を利用し、体内に蓄積したマナで宝石を生成する呪いを掛けているのである。
時間が経つほど熟成されて報酬も大きくなる半面、魔物も強力になっていく仕組みである。
真珠の養殖に近いですな。