第6話 O沢さん

文字数 605文字

 ドラムス担当のO沢さんは、わたしと同じ歳だが、現役合格で、一学年先輩だった。
 大学の隣の県(最近、映画で話題になった「翔んで」る県)にある自宅から、大学まで電車とバスを乗り継いで通っていた。
 身長百八十五センチ超で、体重百キロ超の巨漢。好きな音楽はヘビーメタル。
 O沢さんは、面倒見が良くてヘビメタ野郎たちの兄貴分だった。

 小柄な女の子が好きで、細かいことは気にしない大らかな性格で、いつも場を和ませてくれた。気前が良くて、太っ腹。O沢さんの『割り勘』は、千円未満は切捨てで集めて、残りを全て自分が払うという方式だった、いつも。普通に頭割りすると一人当たり千九百円だったとしても、集めるのは千円で、残りを全て払ってくれた。
「いいの、いいの。細かいこと気にしないの。」と豪快に笑いながら。

 O沢さんと、一緒に演奏した「ワイルドで行こう」は、楽しかったなぁ。

 卒業後は、大手スーパーチェーンに就職して、売り場に立った時のことを話してくれた。
「タイムセールとかあるでしょ。マイク持って、アナウンスするんだけど、やる前は絶対恥ずかしくて、無理って想ってたんだけど、マイクで話し始めたら、乗ってきてさ、めちゃくちゃ楽しかったんだよね。あれ、クセになるわぁ」


 O沢さんとは五年ほど前にFacebookで繋がって、メッセージのやり取りをするようになった。
 今も、同じところにお住まいらしいので、会いに行きたいと想っている。



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