第7話 サツキちゃんとメイちゃん

文字数 1,129文字

 コンパニオン仲間のサツキちゃんは、高校を卒業したばかりの十九歳だった。
 工業高校出身で、電気工学科か何かをやっていたらしい。就職せず、幾つかのバイトを掛け持ちしていた。
 わたしが通っていた大学がある市の隣町に自宅があって、一つ年下で結婚の約束をした幼馴染の彼氏がいた。
 親と喧嘩したかなんかで、家出して、友だちの家を泊まり歩いていた。
 コンパニオン仲間には、ちょっと素行が悪くて、危なっかしい子もたくさんいたので、暫くわたしのアパートで保護していた。

 几帳面な性格で、こまめに部屋の中を整理整頓してくれるし、夜遅くなっても入り浸ってなかなか帰らないバンド仲間の野郎たちの重い腰を上げさせるのにも一役買ってくれて、重宝していた。
 昼間の仕事を見つけて、自分でアパートを借りれるようになるまで、二ヶ月ほど居候していた。

 本人には、内緒だったけど、サツキちゃんのお母さんにはこっそりと電話して、ウチで寝泊まりしていることや、仕事先のことを連絡していた。

 大学生の味方を標榜しているT義不動産でアパートを見つけて、引越し用の2トン車を借りて、わたしのバンド仲間に手伝ってもらって、サツキちゃんの実家から、家財道具を運んだ。
 わたしは、サツキちゃんのお母さんに引越し先の住所を書いたメモをそっと渡した。

 社会に出て働くようになったら、落ち着いてきっとお母さんとも和解できる日が来るに違いないと、当時は思っていた。


 数ヶ月経って遊びに来たサツキちゃんは、就職先が変わっていて、健康食品の訪問販売をしていた。本当に身体に良いので、飲んでくださいと、一つ置いて行った。あれ以来、会っていないが、親とは和解できたかなぁ?



 メイちゃんは、レンタルレコード店のバイトOBであるY田さんの高専の後輩だった。高専中退後にブラブラしてたが、S本さんがロードサイド店をオープンするタイミングで、Y田さんが頼み込んで、スタッフとして採用して貰った。
 メイちゃんは学生アルバイトが少ない午前中のシフト担当だったので、お客さまが少ない時に、事務処理や清掃をしながら、いろいろおしゃべりした。
 日に日にお腹が大きくなる十九歳のメイちゃんは出産前には退職して結婚することが決まっていた。

「結婚したくない。相手の人が好きじゃない。」
「じゃあ、どうして子供作ったの?」
「だって出来ないと思ってたんだよね。相手の人は前の奥さんとの間には子供いなかったから、子種がないと思ってたんだよね。子供を堕すのは絶対嫌だから、我慢するしかないと思って。」

 この県の女の子たちはみんな、子供を堕すのは絶対に嫌だと言う。コンパニオン仲間にもシングルマザーが、少なからずいて、同じようなことを言っていた。

 県民性なのか?

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