第21話

文字数 1,276文字

東京都港区。
千代田区、中央区と並び都心3区と呼ばれておりその中でも港区は放送局、広告代理店、IT企業、店外資系企業の日本支社。
数多くの有力企業が集積しており、日本経済の一端を担っている。
お金と才能が集まる場所は、当然の如く土地価格も上昇、家賃は軒並みに上がり、年収1000万はないと住むことすら難しいと言われている。


この地域を寝床にする事項はまさに成功者といっていいだろう。

「豪華な景観ね。私のマンションとは桁違いだわ」
屋上を視界に入れるには首がつりそうになるほどな高層マンションを見上げ、みなみが驚愕の声を漏らした。


「ここが別格なだけ。あんたの城も十分立派よ。気に病む事はないわ」すかさず詩織がフォローする。


彼女たちはそんな成功者の集いである港区に足を踏み入れたのだ。
しかも一等地である麻布十番である。
さっきから通りすぎる車は国産の高級車や外車のスポーツカーだ。

もれなくピカピカに磨かれており、日差しが反射して光沢を撒き散らしている。
車にさほど見識のない二人でも、何千万もするんだろうなと漠然と感じた。

高級感に溢れている車が行き交うのを見ると、自分が個々にいていいのかと疎外感を募らせてしまう。



場違い感を感じながら富裕層の街にきた理由は、昨夕にみなみがクリームパスタを口に入れた直後に言われた一言から始まった。

「急に悪いんだけど」
対面でフォークをクルクル回す詩織が前置きしつつ「明日、ユーチューバーとコラボしに行くわよ」唐突に言い放った。

「いきなりなんなのよ。寝耳に水なんだけど」
不意の一言にみなみはむせ返しそうになったのを必死にこらえた。そんな事はつゆ知らずと詩織は平然と続ける。


「実わね色んな人気ユーチューバーの方々にコラボの打診をしておいたの。
まぁ大半は断られて撃沈したんだけど、でも今しがた1組だけokをもらってね。
その人達人気で忙しいから明日しかスケジュール取れないのよ」


現状を打破する為の最適の一手を彼女は熟考した。
そしてようやくたどり着いた答えが、まだまだこの世界では新参者のみなみをその道のプロと共同すれば何か得られるんじゃないか?という見解だ。


見聞を広げれば飛躍できる道もおのずと見つけられる。
そう予見し詩織はいても居られず、さっそく登録者が多いチャンネルを片っ端からDMを送りまくったのだ。


それに内弁慶の彼女にとっても刺激という新しいスパイスになるのでは無いかという思惑もあった。


勿論向こうにもみなみという新しい風を取り入れることで話題性を集めれるメリットも提示している。
だがなかなか色よい返事は来ず、断りの一報が相次ぐ。

腫れ物をふれないに越した事はない。
メリットはあるがそんなリスクを侵す必要がない。
人気になればなるほど、冒険よりも安定を望んでいる。
理由を聞けばそんな答えが返ってきた。

世知辛い世の中だ。どの世界も炎上した人とは距離は置きたいらしい。
そんな飯場諦めかけた時、興味を惹かれたと承諾の返信が来た。

スマホで確認した彼女の心臓は飛び上がりそうだった。
登録者が100万人以上いる界隈では知らぬ者はいない有名人だったからだ。

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