第3話 キモオタの絶望

文字数 1,316文字

次の日は休日である。こういう日は一日中家で過ごすのが今までの僕である。
しかし、今、僕は外にいる。そして、ドラッグストアにて買い物をしている。
目的は、
頭がかゆくなくなるシャンプー
ニキビが消えるような洗顔のやつ
新しい髭剃り。
そう、ぼくは身だしなみを整えるのだ。やはり見苦しい姿をしているのは恥ずかしいからだ。決して他意はない。
目の前に大量にある商品。どれがいいのか、全くわからない。こういうふうに自分で買うのは初めてだ。高い奴はとてつもなく高い。こんなものを買う奴いるのか。いや、待てよ。安い奴かって効果がないのと比べれば高い方がいいのではないか。しばらく考えたが、これが最初の買い物であることを考慮してやはり最初は3つとも一番安いものを選ぶことにした。
レジへ。
僕は(他の陰キャ連中も同じだと思うが)この瞬間が大嫌いだ。お金を瞬時に出し入れしないといけない。小銭なんてだせっこない。レジの人の顔なんて見れないし。うつむいて赤面するだけだ。そんな自分も嫌いになる。
でも、僕は生まれ変わるんだ。そんな期待感もすこしはある。このアイテムを使えばきっと。
帰り道。僕はまたあの子のことを考えてしまった。願わくば顔をみてお話を、なんて恥ずかしいことを考える。ゆっくり歩いているとまたおかしくなりそうだった。自分のうちに秘めたるものが外に出るかもしれない。だから僕は走って帰った。
家に帰ると急いで自分の部屋へ行く。そしてその勢いのまま三つの商品を開封した。
髭剃りは、明日の朝使うことにした。夜剃ると朝にはそうとう伸びているからだ。
シャンプーと洗顔料は今夜、風呂で早速使うことにした。シャンプーは一番安いとは言え、薬用、すなわちあたまがかゆいということを解決するためのものなのでそこそこ高かった。だからその分、期待している。逆にニキビを消すというのは昔使っていたものがあったのだがそれで無理だったので大して期待はしていない。もしこれがダメだったらすぐに値段のレベルが一つ高いものにする予定だ。とはいえ、これでニキビが全部消えたら、なんていう淡い期待もなくもない。
風呂入るまでの時間はうきうきしていたので、いつものゲームやら勉強に身が入らなかった。
日が沈む。そろそろ入ろうか。さらば、かゆい頭。

うきうきで風呂に入り、ついにシャンプーである。泡立ちは思ったより良くない。香りは、うん。なるほど、確かに薬っぽい。薬と言っても化学物質というより薬草というほうが近い。そして頭皮につけると、すーっとする。ミントみたいな感じだ。たしかにこれはさっぱりするな。洗い流してもそれが続くのでこれは期待できそうだと思った。洗顔のほうはごく普通である。

ドライヤーは低温でじっくりとやった。これもどうやら頭のかゆみ防止になるらしい。

さて、内気なマインドは悪影響だろう。僕はとあるSNSを始めた。これによってキモオタ成分が内側から浄化されるに違いない。そう考えたのだ。
自分の学校を検索する。

は?
声にならない声が出る。僕は動けなくなった。

「俺ら、付き合いました!!!」
僕の隣の女の子は、僕の名前を呼んでくれたあの女の子は、男子と頬を合わせて照れたような笑顔でこちらを見つめていた。
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