第6話 アウトオアセーフ?

文字数 851文字

「プッ……」

女子高生は笑ってしまったがすぐに口をおさえた。

時間にして1秒もない。

ルールは単純と言ったがよく考えればそう単純でもない事に俺はようやく気がついた。

一口に笑うといっても、どこまでを笑ったと判断するかを詳細(しょうさい)に聞いておくべきだった。

声は出してないが口を歪ませただけで笑ったと判断されたら今の俺もアウトである。

厳密に言うと、自分のオナラを恥しそうに笑顔で誤魔化しているおじさんもどうなんだろう?

笑顔がアウトならアウトと言えなくも無い。

全く無表情なのは隣の彼ぐらいである。

声に出したら笑った事になるとしたら女子高生だけがアウトとなる。

しかし、大声で笑わなければアウトにならないとしたら……女子高生もセーフかもしれない。


どうなんだ?

アウトなのか?

セーフなのか?

女子高生は口を手で抑えながら首を横に振って笑ってない事をアピールしている。

するとまた映画の上映前のようなブザー音が鳴り響き、同時に部屋の照明が落ちて代わりに天井の中央に位置する監視カメラからパトランプのような赤い光がグルグルと部屋を不穏に照らしだした。

『アウトです』

「ギャ!」

そう機械音声が流れると同時に女子高生が短く叫ぶと、ものすごい踊りを踊っている様に痙攣して倒れた。

照明は元通りに戻った。

倒れた後もしばらくヒクヒクと動いていた。

口からは泡を吹いて髪の毛は全部が逆立っている。

死んだのかどうかまでは確認できないが生きている様な気がしなかった。

横の男も小刻みに震えている。

冷静沈着だと思っていたがさすがに人の死を目の当たりにしては冷静ではいられないのだろう。

どうしよう……本当にここまでやるとは。

誰かは知らないが尋常じゃない奴に囚われているのだと思い知った。

その時俺は例の事件を思い出した。

誰かが笑うと誰かが死ぬ。

連続殺人鬼の笑う万事屋。

もしかして?

いままでの殺人では飽き足らずこんな部屋まで用意してゲーム感覚で殺人を楽しむって事か?

俺も隣の男と同じように震えた。

しかしそれが怒りから来るものなのか恐れから来るものなのか分からなかった……。



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