第2話 リョウキテキナジケン

文字数 995文字

「それでは次のニュースです。昨日午後四時過ぎ頃、近隣の住人による通報を受けて警察が急行したところ、〇〇市〇〇町の廃工場の中で変死体が発見されました。警察は事件と事故の両方面から捜査を開始し……」

(さかのぼ)ること一昨日の夜、なんの気なく観ていたニュースの中で最近世間を騒がせている猟奇的な事件がわりと身近で起こっている事を知った。

ニュースでは誤魔化していたが、もう何人も変死体が出ているとネットでは囁かれていた。

犠牲者は若い学生が多く、男女問わず殺されていたが捜査は遅々として進んでない様だ。

犯人の絞込みに難航している一因として、殺し方が一定してないことが挙げられた。

ある時は首を絞められ、ある時はナイフで刺され、ある時は水に顔を押し付けられてなど多岐にわたるのだが……一向に証拠を残さない。

しかし、最近になって分かってきた事がある。

なんでも犯行現場の使われていないはずの廃工場から男の高笑いが聴こえてきたという証言が聞き取れた。

するとそれに似た目撃証言ならぬ、聴き取り証言がネットを中心として浮かび上がってきた。

曰く高笑いの聴こえた夜に必ず殺人が起きるらしい。

ネット内でついた呼び名が

笑う万事屋(よろずや)

敢えて殺人鬼と付けないのは、削除されたり、殺人鬼本人に検索されるのを防ぐ為らしい。

しかし、その後の殺人鬼の情報を見て俺は言い知れぬ不安を感じた。

身長175くらい髪は黒で癖毛、細身らしい。

なぜか俺と似ている……。

ただの偶然だと笑い飛ばしたいが、笑い飛ばせない自分がいた。

なぜなら、殺人鬼は殺した相手の額に十字の傷を残していたからだ。

そして、俺の額にも子供の頃の事故でついた額の傷がある。

せめて頬だったら好きなアニメの主人公と同じだったのにと嘆いた時期もあったが大人になってからはコンプレックスでしかない。

しかももし間違っても容疑者として捕まった場合、一連の犯行との符号を関連付けて考えるのはとても自然だ。

つまり……間違っても捕まる訳にはいかないのだ。

そんな事をぐるぐると考えながら頭を使いすぎているせいかやたらと眠気が襲ってくる。

「疲れてるのかな?……」

一人暮らしの独り言が虚しく響くなかで煩雑な部屋の一点に目がいった。

見覚えのない段ボールが置いてある。

いや、忘れてるだけなのかも知れないが……。

眠気がどんどん増してくる。

視界が暗転する直前に段ボールからホースの様なものが出ているのがチラリと見えた……。
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