第3話 コンニチハミナサン
文字数 1,615文字
気がつくと俺は冷たいコンクリートの上に寝かされていた。
頭が朦朧としているが、コンクリートの冷たさと硬さで徐々に目が覚めて来る。
どこだここは?
『コンニチハミナサン』
突然思考を遮る様に不気味な声が部屋中に響いた。
まるでボイスチェンジャーで無理やり低くした様な声だ。
『おや、まだ意識が朦朧とされてる方がいらっしゃる様ですねぇ、ではサービスで少しだけ意識を回復させて差し上げましょう』
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
天の声が終わるとほぼ同時にいきなり電流が俺の上半身に走り堪らず声を上げた。
通電は一瞬だったらしいが、目を覚ますには十分だった。
「はぁ…はぁ……なんだってんだ!」
俺は息を整えると電流を走らせたであろう両手首に掛けられた手錠を睨みつけ悪態をついた。
『お目覚めになりましたか?』
「だ……誰だお前は?」
およそまともな返答があるとは思えない台詞がいざとなるとテンプレの様に口をついて出た。
すると、突然真後ろから声がした。
「大丈夫ですか?」
「ひぃ!」
俺は恐怖で反射的に驚いてしまったがよく聞くと労いの言葉だったことに気づいた。
振り向くとそこには透明な板に遮られてはいたが、俺と同じように囚われたであろう男がいた。
なぜそう思うのかというと男の手首にも俺と同じように手錠が嵌っていたからだ。
「……だ、大丈夫だ、あんたは?」
「私も大丈夫……と言いたい所ですが、これじゃ説得力ないですね」
そういうと男は力なく腕を上げて両手首の手錠を俺に見せた。
俺はその男を観察した、髪は俺のような癖毛ではなく直毛でまるで女の子のショートカットの様である……しかも顔もそこそこ整っているので女装したらかなりの人間が騙されるような気がする。
しかし、もし女装したとしたら随分と背の高い女性にみえるだろう……ガラス越しなのでハッキリとは言えないが、たぶん俺と同じくらいはあるように見える。
そんな事を考えていたら、またドアが開いて今度は太った中年の男と女子高生らしき女の子が入ってきた。
中年の男性はすこし肥満気味で背は低い……推定だが160くらい、ハゲている。服装は白のワイシャツに紺のスラックスで我々と一緒だ。
女子高生の方は茶髪のセミロングにいかにも今時の学生っぽい服だ。身長は隣の男と同じくらい、顔もどこかのアイドルに似ている様な気がしたが状況が状況だけに思い出す気にもなれない。
二人は部屋の角に付いている別々のドアから入ってきたのだが、こちらに気がつくと、なぜか怯える様な視線を返してきた。
まあ、こんな所に手錠で連れてこられたら誰彼構わず怖く見えても仕方ない。
改めてよく観察すると我々は正方形の部屋を上から見ると田の字の様に4つの透明な壁に仕切られた所に閉じ込められているらしい。
窓はない。
壁はコンクリートの打ちっぱなしのようだ。
四隅にドアがあり監視用らしきカメラが天井の中央にある。
「……なにここ?」
女子高生らしき女の子が極めて真っ当な質問を誰にするともなく呟 いた。
「お、おまえら……だれや?」
太った中年の男は恐怖と虚勢を半々に混ざった様な声で質問してきた。
「おれは……」
「ちょっとまってくれないか?」
俺が自己紹介しようとすると隣の男が止めた。
「……なぜだ?」
俺はわけが分からずにそう返した。
「いや……迂闊に答えていいものかな、と」
「迂闊?……どういう意味だ?」
「僕達は今どういう状況に置かれているかわからない……ちがうか?」
「確かに、そうだ」
「そして、これから何が起こるかもわからない……そうだろ?」
「…まぁ……そうだな」
俺は頷くしかなかった。
「だとしたら…だ。そんなに簡単に自分の素性を話してよいものだろうか……とね。ごめん、考えすぎかもしれないし話すかどうかは個人の自由だよね」
そういってショートカットの男はすこしばかり肩を竦める仕草をした。
俺は確かに彼の言う通りだと思った。
これから何が起こるかもしれないし彼らが敵になるかもしれない以上、迂闊な事は言えない。
頭が朦朧としているが、コンクリートの冷たさと硬さで徐々に目が覚めて来る。
どこだここは?
『コンニチハミナサン』
突然思考を遮る様に不気味な声が部屋中に響いた。
まるでボイスチェンジャーで無理やり低くした様な声だ。
『おや、まだ意識が朦朧とされてる方がいらっしゃる様ですねぇ、ではサービスで少しだけ意識を回復させて差し上げましょう』
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
天の声が終わるとほぼ同時にいきなり電流が俺の上半身に走り堪らず声を上げた。
通電は一瞬だったらしいが、目を覚ますには十分だった。
「はぁ…はぁ……なんだってんだ!」
俺は息を整えると電流を走らせたであろう両手首に掛けられた手錠を睨みつけ悪態をついた。
『お目覚めになりましたか?』
「だ……誰だお前は?」
およそまともな返答があるとは思えない台詞がいざとなるとテンプレの様に口をついて出た。
すると、突然真後ろから声がした。
「大丈夫ですか?」
「ひぃ!」
俺は恐怖で反射的に驚いてしまったがよく聞くと労いの言葉だったことに気づいた。
振り向くとそこには透明な板に遮られてはいたが、俺と同じように囚われたであろう男がいた。
なぜそう思うのかというと男の手首にも俺と同じように手錠が嵌っていたからだ。
「……だ、大丈夫だ、あんたは?」
「私も大丈夫……と言いたい所ですが、これじゃ説得力ないですね」
そういうと男は力なく腕を上げて両手首の手錠を俺に見せた。
俺はその男を観察した、髪は俺のような癖毛ではなく直毛でまるで女の子のショートカットの様である……しかも顔もそこそこ整っているので女装したらかなりの人間が騙されるような気がする。
しかし、もし女装したとしたら随分と背の高い女性にみえるだろう……ガラス越しなのでハッキリとは言えないが、たぶん俺と同じくらいはあるように見える。
そんな事を考えていたら、またドアが開いて今度は太った中年の男と女子高生らしき女の子が入ってきた。
中年の男性はすこし肥満気味で背は低い……推定だが160くらい、ハゲている。服装は白のワイシャツに紺のスラックスで我々と一緒だ。
女子高生の方は茶髪のセミロングにいかにも今時の学生っぽい服だ。身長は隣の男と同じくらい、顔もどこかのアイドルに似ている様な気がしたが状況が状況だけに思い出す気にもなれない。
二人は部屋の角に付いている別々のドアから入ってきたのだが、こちらに気がつくと、なぜか怯える様な視線を返してきた。
まあ、こんな所に手錠で連れてこられたら誰彼構わず怖く見えても仕方ない。
改めてよく観察すると我々は正方形の部屋を上から見ると田の字の様に4つの透明な壁に仕切られた所に閉じ込められているらしい。
窓はない。
壁はコンクリートの打ちっぱなしのようだ。
四隅にドアがあり監視用らしきカメラが天井の中央にある。
「……なにここ?」
女子高生らしき女の子が極めて真っ当な質問を誰にするともなく
「お、おまえら……だれや?」
太った中年の男は恐怖と虚勢を半々に混ざった様な声で質問してきた。
「おれは……」
「ちょっとまってくれないか?」
俺が自己紹介しようとすると隣の男が止めた。
「……なぜだ?」
俺はわけが分からずにそう返した。
「いや……迂闊に答えていいものかな、と」
「迂闊?……どういう意味だ?」
「僕達は今どういう状況に置かれているかわからない……ちがうか?」
「確かに、そうだ」
「そして、これから何が起こるかもわからない……そうだろ?」
「…まぁ……そうだな」
俺は頷くしかなかった。
「だとしたら…だ。そんなに簡単に自分の素性を話してよいものだろうか……とね。ごめん、考えすぎかもしれないし話すかどうかは個人の自由だよね」
そういってショートカットの男はすこしばかり肩を竦める仕草をした。
俺は確かに彼の言う通りだと思った。
これから何が起こるかもしれないし彼らが敵になるかもしれない以上、迂闊な事は言えない。