第1話  結婚

文字数 1,140文字

1部 1話  結婚
 私と妻は吉祥寺駅から有名居酒屋を通り過ぎてすぐの異国風レストランに入った。店内はおしゃれな感じで空いている席はほぼなく、満席に近かった。すると、店長らしき方の配慮で奥の個室のような席に案内された。この店は初めてなのだが店員さんも感じ良さそうだ。

 通された一番奥は半個室だった。頑張れば4人くらい座れそうな、居心地の良いソファ席に座った。お店側とは布製の仕切りが下がり、個室感を演出させていた。
その仕切りが開くと、若い女性の店員さんが料理や飲み物について丁寧に説明をしてくれた。とても親切で感じの良い方だった。それに美人だった。
私は食事や飲み物を頼み終わると、後で通りかかった先程の店長にお礼を言った。その後店長が通りかかる度に声をかけて、やがてこの近くの飲食店についての雑談になった。
店長「ワインは料理に合わせて仕入れているんです」
店長「どこかお勧めのスパイスの効いたところご存知ないですか?」
私は西荻窪のモロッコレストランを紹介した。
店長「私もよく西荻窪とか行くんですよ」
店長「今度飲みに連れて行って下さいよ」
私「良いよ」なんて話をしていた。

 自分達の半個室の隣も別の半個室で、その間に天井から下がるカ−テンがあるのだが、この時は開かれていたので隣席の様子は見ようとすれば見えた。お隣さんは若い女性2人で、楽しそうによく通る声で話をしていた。ちょうどその時、お隣さんとお店側の仕切りが開かれ、先程の感じの良い女性の店員さんが現れた。パチパチ小さな花火が弾けるケ−キが乗った皿を持っており、それを隣のテ−ブルに置いた。
店員さんは、にこにこして明瞭な発音で言った。

「ご結婚おめでとうございます!」
僕は飛び上がった。二人の女性の顔を思わず見てしまった。
二人は凄く嬉しそうに
「ありがとうございます!」
と別々のタイミングではっきりと言った。
一人は凄いお嬢様、すっごくかわいい。白くハ−フを感じさせる顔、茶目っ気たっぷりな表情、肩の見えるドレス風の白いワンピースを着ていた。
もう一人は4〜5歳年上と思われるやはりかわいい人。カーディガンの下に胸の谷間の見える服を着ている。
傍には楽器ケースが2つあって、サックスなのではないかと思った。大きさが違うので、アルトとテナーかもしれない。2つとも擦り傷やシ−ルを剥がした跡があった。
「女性同士で結婚て。そんな事ある?」
しかも半個室とはいえ、こんなオ−プンな場所でパチパチサ−ビスするなんて。
「聞き間違えだったのかな」。
しかし2人の話が時々聞こえて来て、マジと分かった。「なんか、みんな泣いてくれて」、とか「プランナ−の人が」とか言ってた。またモンテカルロで何とかとも言ってたが、あまり聞くのも失礼なので妻との話に戻った。
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