一文小説集「後悔」等五篇

文字数 222文字

【後悔】

 蚊取り線香に火をつけようとした僕の耳元で「後悔しない?」と蚊が囁いた。

【息子】

 父親を殺したその息子は、父親の死体からはぎ取ったカツラをかぶって、じっと警察の到着を待っていた。

【人形】

 お前がうちに来てから、人形探知機が鳴り止まないんだが、お前は、人形なのかい?

【辞表】

 そして天使は辞表を付けた風船を空へ飛ばした。

【チェック】

 三人の母親が世間話をしながら、それぞれのベビーカーに集まってくる蝿の数をさりげなくチェックし合っている。
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