一文小説集「閉鎖」等五篇

文字数 281文字

【閉鎖】

 もうすぐ閉鎖する雲工場の壁に、黒枠で囲まれた入道雲の写真が一枚、飾られている。



【強風】

 ものすごい強風が吹き続けているのに、祖母を焼いている火葬場から立ち昇る煙が、一切揺れていない。



【理解】

 私と話をしながら、脳味噌の形のタブレット菓子を食べ続けている友人の話の内容が、だんだん理解できなくなってくる。



【看板】

 看板に「レギュラー」「ハイオク」「軽油」「赤ちゃん」と書かれたガソリンスタンドに、空のベビーカーを押した女が入っていく。



【社会科見学】

 社会科見学で訪れた墓地で、自分の家族の墓石が無い子が、手持ち無沙汰に、墓前の花の匂いを嗅いだりしている。
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