一文小説集「プール」等五篇

文字数 277文字

【プール】

 毛生え薬で満たされたプールで、床屋の店主の溺死体が発見された。



【くしゃみ】

 雨上がり、美しい水たまりを覗くと、死んだ姉が映っていて、その姉の鼻の辺りをアメンボがすーっと通り過ぎ、姉は音のないくしゃみをした。



【不足】

 止まない雨が降る中を、スピーカーから「てるてる坊主が不足しています」というアナウンスを流す軽トラが、ゆっくり走っている。



【酒】

 瓶に「四人」と書かれたラベルが貼られている酒に、一本の首吊り縄が漬かっている。



【石ころ】

 毎日石ころを蹴りながら一人で下校している小学生の、その石ころをよく見ると、あちこちがボンドで補修されている。
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