一文小説集「温」等五篇

文字数 269文字

【温】

 温かい人形が好きなので、何度も電子レンジで温めるが、だんだん溶けて人形は醜くなってしまう。



【お腹】

 霊柩車見たらお腹空いちゃった、と笑って彼女は僕の手を取り、墓場の方へ駆けていった。



【自販機】

 刑務所の入り口にある囚人の涙の自販機が売り切れたので、再び囚人たちは各々の寝床で、昔のことや今のことを考え始めた。



【瞳】

「見てください、この瞳」と通販番組の司会者が言うと、カメラは商品である瓶の中の小人たちをアップで映し始めた。



【くすぐったさ】

 夜中、くすぐったさで目を覚ますと、母が、私の尻尾に、油性マジックで切り取り線を書いている。
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