第3話 日常
文字数 1,140文字
皆で食卓を囲む朝の時間は、最も幸福な瞬間といっても過言ではない。
ムツキは今日も朝から元気だ。
「ノア兄ちゃん、週末はキャンプ行こうな!」
「いいよムツキ、前に買ったホットサンドメーカー試してみたかったんだ」
ノーヴェはいつも気品に満ちている。綺麗な指が俺の前に伸びる。そこには一枚のチケットがあった。
「ノアお兄様、来月演奏会があるんですが、聞きに来てくれますか?」
「もちろん、何の曲をやる予定なんだ?」
「『旧支配者のキャロル』という曲を。私のソロパートもあるんですよ」
「それは楽しみだ。ノーヴェ、本当に頑張ってるな」
「ありがとうございます! お兄様!」
サクヤは相変わらず俺に甘えて腕にしがみついている。
「おにい、あーんして!」
「まったく……しょうがないなぁ。サっちゃん、ほら
口開けて」
楽しく談笑しながら食べると料理の味は格段に上がる。こんな日々がずっと続けばいいとしみじみ感じる。
朝食の後は皆にお弁当を渡し、学校に出発だ。皆に「いってらっしゃい」を言って見送ってから、年長の俺とレジーナは最後に戸締まりをしてから家を出る。
「俺はキングワンを起こしてから行くよ」
「じゃあサクヤは私が連れていくね」
「助かるよ。いってらっしゃい、レジーナ」
「いってきます!」
サクヤの保育園への送迎はレジーナに任せて、俺は未だ寝ている彼を起こしに行った。
ノックしても反応がない。仕方がないので了承を得ずに扉を開けるのだが、彼は大いびきをかきながら眠って起きる気配がない。
「キングワンもう朝だぞ。早く起きろよ」
「うーん、あと5分だけ……むにゃむにゃ」
二度寝の打診をする彼から毛布を取り上げ、無理やり叩き起こす。これも毎朝の日課である。
「あー寒いー! 寒いよー!」
「ほら早く!」
寝室のカーテンを全開にして、全力で太陽光を取り入れる。追い討ちをかけなければこの男は絶対に二度寝するんだ。
「分かった、分かった。起きるって」
しぶしぶキングワンは起き上がったが、まだ眠そうな顔をして目を擦っていた。この調子では完全に目覚めるまでまだまだ時間がかかりそうだ。付き合っていたら遅刻が確定してしまう。
「じゃ、いってくるから。フタバのお世話は任せるぞ」
「りょーかーい。今日も自宅警備は任せなさい」
気の抜けた返事だった。髭は生えっぱなしで髪もボサボサ、服もヨレヨレでだらしない自宅警備員だ。
だが……本当は尊敬できる人だと俺は知っている。普段は本気を出さないが、土壇場では誰よりも頼りになる。キングワンはそういう男だ。俺たち家族は皆この人に助けられてきたのだ。
その話はまた今度……
キングワンを起こした俺は、自転車のペダルを漕ぎ、学校に向かう。
「こんな日々がずっと続けばいいのになぁ」
誰にも聞こえないぐらい小さな声で俺はつぶやいた。
ムツキは今日も朝から元気だ。
「ノア兄ちゃん、週末はキャンプ行こうな!」
「いいよムツキ、前に買ったホットサンドメーカー試してみたかったんだ」
ノーヴェはいつも気品に満ちている。綺麗な指が俺の前に伸びる。そこには一枚のチケットがあった。
「ノアお兄様、来月演奏会があるんですが、聞きに来てくれますか?」
「もちろん、何の曲をやる予定なんだ?」
「『旧支配者のキャロル』という曲を。私のソロパートもあるんですよ」
「それは楽しみだ。ノーヴェ、本当に頑張ってるな」
「ありがとうございます! お兄様!」
サクヤは相変わらず俺に甘えて腕にしがみついている。
「おにい、あーんして!」
「まったく……しょうがないなぁ。サっちゃん、ほら
口開けて」
楽しく談笑しながら食べると料理の味は格段に上がる。こんな日々がずっと続けばいいとしみじみ感じる。
朝食の後は皆にお弁当を渡し、学校に出発だ。皆に「いってらっしゃい」を言って見送ってから、年長の俺とレジーナは最後に戸締まりをしてから家を出る。
「俺はキングワンを起こしてから行くよ」
「じゃあサクヤは私が連れていくね」
「助かるよ。いってらっしゃい、レジーナ」
「いってきます!」
サクヤの保育園への送迎はレジーナに任せて、俺は未だ寝ている彼を起こしに行った。
ノックしても反応がない。仕方がないので了承を得ずに扉を開けるのだが、彼は大いびきをかきながら眠って起きる気配がない。
「キングワンもう朝だぞ。早く起きろよ」
「うーん、あと5分だけ……むにゃむにゃ」
二度寝の打診をする彼から毛布を取り上げ、無理やり叩き起こす。これも毎朝の日課である。
「あー寒いー! 寒いよー!」
「ほら早く!」
寝室のカーテンを全開にして、全力で太陽光を取り入れる。追い討ちをかけなければこの男は絶対に二度寝するんだ。
「分かった、分かった。起きるって」
しぶしぶキングワンは起き上がったが、まだ眠そうな顔をして目を擦っていた。この調子では完全に目覚めるまでまだまだ時間がかかりそうだ。付き合っていたら遅刻が確定してしまう。
「じゃ、いってくるから。フタバのお世話は任せるぞ」
「りょーかーい。今日も自宅警備は任せなさい」
気の抜けた返事だった。髭は生えっぱなしで髪もボサボサ、服もヨレヨレでだらしない自宅警備員だ。
だが……本当は尊敬できる人だと俺は知っている。普段は本気を出さないが、土壇場では誰よりも頼りになる。キングワンはそういう男だ。俺たち家族は皆この人に助けられてきたのだ。
その話はまた今度……
キングワンを起こした俺は、自転車のペダルを漕ぎ、学校に向かう。
「こんな日々がずっと続けばいいのになぁ」
誰にも聞こえないぐらい小さな声で俺はつぶやいた。