第6話 一撃

文字数 839文字

諦めかけたその時、彼は現れた。

「チャウグナルッ……! 俺の家族に手ぇ出してるんじゃねえぞ」

血管の浮き出た左手が像の鼻を掴んで離さない。ガギュウッと鈍い音とともに像の鼻は握り潰された。

救王の暗命(ブラックアウト)ッッ!!」

人面像の顔面に男の右拳が炸裂する。破裂音と共に辺りが血の赤に染まる。鼻はもげ、目は飛び散り、脳が露出し、像人間はあっさりと動かなくなった。

「キングワン……どうして」

「無事か! ノア! レジーナ! しっかりしろ!」

「私は大丈夫、だからノアをお願い……」

キングワンが俺を呼ぶ声が聞こえる。なんでここにいるんだ? というか、あの神子は一撃で殺されたのか!?

「俺が来たからにはもう安心だ。ノア大丈夫か!?」

そうだ……彼は地上最強の自宅警備員だ。相手がどんなに強くても負けたことがない。とにかく彼が来たということは俺たちは助かったんだ。

「俺っ……なんとか立てるよ」

意識は朦朧とするが、立てない訳ではない。当たり所が良かったのか? さっきは腹が抉れたと思ったが、よく見るとたいした怪我じゃなさそうだ。

「馬鹿ッッ! 無茶してんじゃねえよ。とにかく病院いくぞ!」

「まだ瓦礫の下敷きになってる人がいるはずだ。助けてやってくれよキングワン」

「大丈夫、救助隊を呼んでおいた。こういうのはプロに任せた方が良いんだよ」

そう言うとキングワンは俺とレジーナを抱えて立ち上がった。

「でもキングワン何で学校に?」

「今朝、体操服忘れただろ。たまたま持ってきたらこの有り様だ。管理委員会の連中どんだけ杜撰(ずさん)な管理してんだか……マジで許せねぇ」

「そっか……」

「いいからもう喋んな。お前たちが無事で本当に良かった」

彼の言葉を聞いて緊張の糸がほぐれたせいか、俺の意識は落ちていった。



──学校の屋上、赤い瞳が彼らを見守っていた。三人が無事に帰っていくのを見ながら、日傘をさした少女は落胆した。

「さすがキングワン レベル4もワンパンですか。上手く死んでくれたら良かったんだけどね」

銀髪をなびかせながら、吸血妃は学校を去った。



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