第7話 告白
文字数 1,462文字
──「個」の強さにおいて神子は人間に勝る。圧倒的な火力、耐久力、自給力、再生能力、繁殖能力などを持ち、レベル2以上の神子に単体で勝てる生物は存在しないと考えられている。
しかし「群」としての強さにおいて人間に勝る生物は未だにおらず、それは神子とて例外ではない。神子の「個」としての強さを警戒した人類は「群」の強さをもって、それを討伐・収容・管理した。
現在神子は『禁足地管理委員会・アーカム』により管理され、ヤマト皇國を中心に広がる半径2500kmの地帯『禁足地』に収容されている。
禁足地は五枚の壁により隔てられ、五つの地区が存在する。それぞれの地区は最強の『裁器』を装備した守護者『五芒』により守られている。
第一防壁 愛の創造主・ワイズマン
第二防壁 水神・エンキ
第三防壁 剣聖・メテオラ
第四防壁 獄牢の長・ニョグタ
第五防壁 死角なき視覚者・アイホート
上記五人の守護者が神子の脱走を防止しているため、今回のように市街地に神子が出現することは異例の事態であった……
ノアとレジーナはすぐに病院に運ばれ、検査を受けることになった。
レジーナは足を軽く打撲した程度、神子の攻撃を受けたノアにも何一つ異常が見つからず、結局二人はその日の内に帰れることになった。
夕暮れ時の朱色に染められながら、二人は手を繋いで帰路についていた。
「明日管理委員会の人が来て、色々説明してくれるみたいだよ……」
「どんな説明をされても納得できない。俺たちは死にかけたんだ」
「そうだね。しばらくは学校も休もうか」
「アーカムにはがっかりだよ。ずっと憧れだったのに……」
平然を装っていたが、レジーナの体は震えていた。その恐怖心は繋いだ手を通して、ノアにも伝わっていた。
「怖かったよな……」
「ノアが助けに来てくれて、凄く嬉しかった。でもそれと同時に凄く不安だった。私は自分が死ぬことよりも貴方がいなくなることの方がずっと怖い」
「俺はどこにも行かない。俺たち家族はずっと一緒だ」
ノアの家族への思いは山より高く、海より深かった。だからこそレジーナはエベレストよりも高く、マリアナ海溝よりも深く絶望していた。
彼の気持ちを一身に受けたい。誰よりも優しい彼のことを支配したい、独占したい。そんな思いが募る。もう我慢できない。駄目だと分かっていても、それでも気持ちを伝えたい。
今日の出来事を受け、そんな彼女の恋慕が爆発した。彼女は立ち止まり、真っ直ぐにノアの目を見つめる。
「聞いて。私ノアのことが大好き。地獄のような毎日から私を救い出してくれた時から、ずっとずっとあなたのことを想ってる」
「俺も大好きだよレジーナ」
「違う! 家族としてじゃなく……恋人として好きになって欲しい。私だけのノアでいて欲しい」
彼ら以外誰もいない帰り道が静けさに包まれる。数秒の沈黙の後、ノアは口火を切った。
「お前の気持ちにずっと気づけなかった」
彼にとって、この告白は衝撃的なものであった。十年以上共に過ごした妹がまさか自分に恋愛感情を抱いていたとは……だが答えは既に決まっていた。
「やっぱり俺たちは付き合えないよ。家族だから」
「そっか……きっと何度聞いたってノアはそう答えるよね」
「ごめん」
「謝らないで! 今日のことは全部忘れてさ! 明日からいつも通りで行きましょう!」
もとから玉砕を覚悟していた彼女だったが、やはり面と向かって振られるのは悲しかった。
それにもかかわらず、昨日までの関係が崩れないように、彼女は精一杯明るく振る舞っている。
その後二人の間に会話はなく、重い空気が流れる中、二人は家に帰った。
しかし「群」としての強さにおいて人間に勝る生物は未だにおらず、それは神子とて例外ではない。神子の「個」としての強さを警戒した人類は「群」の強さをもって、それを討伐・収容・管理した。
現在神子は『禁足地管理委員会・アーカム』により管理され、ヤマト皇國を中心に広がる半径2500kmの地帯『禁足地』に収容されている。
禁足地は五枚の壁により隔てられ、五つの地区が存在する。それぞれの地区は最強の『裁器』を装備した守護者『五芒』により守られている。
第一防壁 愛の創造主・ワイズマン
第二防壁 水神・エンキ
第三防壁 剣聖・メテオラ
第四防壁 獄牢の長・ニョグタ
第五防壁 死角なき視覚者・アイホート
上記五人の守護者が神子の脱走を防止しているため、今回のように市街地に神子が出現することは異例の事態であった……
ノアとレジーナはすぐに病院に運ばれ、検査を受けることになった。
レジーナは足を軽く打撲した程度、神子の攻撃を受けたノアにも何一つ異常が見つからず、結局二人はその日の内に帰れることになった。
夕暮れ時の朱色に染められながら、二人は手を繋いで帰路についていた。
「明日管理委員会の人が来て、色々説明してくれるみたいだよ……」
「どんな説明をされても納得できない。俺たちは死にかけたんだ」
「そうだね。しばらくは学校も休もうか」
「アーカムにはがっかりだよ。ずっと憧れだったのに……」
平然を装っていたが、レジーナの体は震えていた。その恐怖心は繋いだ手を通して、ノアにも伝わっていた。
「怖かったよな……」
「ノアが助けに来てくれて、凄く嬉しかった。でもそれと同時に凄く不安だった。私は自分が死ぬことよりも貴方がいなくなることの方がずっと怖い」
「俺はどこにも行かない。俺たち家族はずっと一緒だ」
ノアの家族への思いは山より高く、海より深かった。だからこそレジーナはエベレストよりも高く、マリアナ海溝よりも深く絶望していた。
彼の気持ちを一身に受けたい。誰よりも優しい彼のことを支配したい、独占したい。そんな思いが募る。もう我慢できない。駄目だと分かっていても、それでも気持ちを伝えたい。
今日の出来事を受け、そんな彼女の恋慕が爆発した。彼女は立ち止まり、真っ直ぐにノアの目を見つめる。
「聞いて。私ノアのことが大好き。地獄のような毎日から私を救い出してくれた時から、ずっとずっとあなたのことを想ってる」
「俺も大好きだよレジーナ」
「違う! 家族としてじゃなく……恋人として好きになって欲しい。私だけのノアでいて欲しい」
彼ら以外誰もいない帰り道が静けさに包まれる。数秒の沈黙の後、ノアは口火を切った。
「お前の気持ちにずっと気づけなかった」
彼にとって、この告白は衝撃的なものであった。十年以上共に過ごした妹がまさか自分に恋愛感情を抱いていたとは……だが答えは既に決まっていた。
「やっぱり俺たちは付き合えないよ。家族だから」
「そっか……きっと何度聞いたってノアはそう答えるよね」
「ごめん」
「謝らないで! 今日のことは全部忘れてさ! 明日からいつも通りで行きましょう!」
もとから玉砕を覚悟していた彼女だったが、やはり面と向かって振られるのは悲しかった。
それにもかかわらず、昨日までの関係が崩れないように、彼女は精一杯明るく振る舞っている。
その後二人の間に会話はなく、重い空気が流れる中、二人は家に帰った。