第2話 朝食

文字数 1,022文字

──俺の名前は天神ノア、どこにでもいる普通の高校生。

朝日が昇って、すぐに俺の1日が始まる。崖下からの波音に起こされて、俺はぐっと伸びをした。テラスからの景色はいつ見ても綺麗だ。きっと今日も良い日になる。だって世界はこんなにも美しいんだから。
 
もう6時か。そろそろ朝食を作る時間だ。我が家は13人と一匹の大家族、食事の用意にはかなりの時間がかかる。今日は何を作ろうか。メニューを考えながら冷蔵庫を開いたが、残念ながら中身は寂しいものだった。

「久しぶりにあれ作るか」

俺がフライパンを握ると、愛犬のミゼーアが足元にすり寄ってくる。彼は物欲しげに舌を出しながら、こちらを見つめている。

犬と一緒に魔法の歌を小気味よく歌いながら、俺はフライパンを振るう。

「ベーコンのパンケーキ作る!」

「パンケーキにベーコンのせる!!」

「ベーコンのパンケェーキになる!!!」

「ベーコンパンケェェェェェキィ!!!!」

「なんちゃって……」

つい一人で歌ってしまった。だが『ベーコンパンケーキ』を作る上で、歌は欠かせないスパイスなのだ。

朝食の仕度を終えたら紅茶を楽しむのが俺の日課だ。

スマホから流れ出るニュースに耳を傾けながら、その芳香を堪能する。セイロン茶は紅茶の王道、爽やかで飲みやすいので朝におすすめ。

「ノア、おはよーう」

時刻は7時、いつも彼女はこの時間に起きてくる。眠そうにあくびをする彼女の名前はレジーナ。俺の最愛の妹の一人だ。

「おはよう。今日も眠そうだな」

「うーん、宿題終わんなくてね。なんと三時間しか寝てません」

ぐいーっと伸びをしながら、彼女は俺の横に座る。寝癖がついた金色の髪は収穫期の麦のようだ。

「課題多いよな」

「正直ヤバいね。やっぱりうちの学校、いわゆる自称進学校ってやつだよ。そうだ……ノア、今日の放課後時間ある? 勉強教えてよ」

「良いけど、科目は?」

「神学だよ。性質分類の範囲なんだけど覚えること多すぎるんだー」

「神子分類は暗記だろ。ちょっとは自分で頑張れよ」

「いいじゃーん、どうせ放課後、暇なんでしょ」

暇人扱いされるのは不服だが、教えるのは復習になるから歓迎だ。それに予定がないのも事実だった。

「いいよ、じゃあいつものカフェで待ち合わせで」

「うん!」


彼女と喋る内に時間は過ぎた。7時半にもなると皆が起きてくるはずだ。13人と一匹の俺の大切な家族、血は繋がっていないがそれは重要なことじゃない。

そうこうしている内に皆は続々と起きてきた。そろそろ朝食の時間だ!



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