第15話
文字数 1,713文字
5回目にしていくつか気付いたことがある。まず今の僕の力ではどうあがいてもドラゴンを倒すどころか食い止めることすらできないこと。標準が定めやすい矢などはそもそも通らないし、かと言って水流などはタイキを巻き込んでしまうため使えない。これは実際に試してわかったことだがタイキたちの姿が見えなくても何故か彼らに被害が及ぶのだ。だが失敗してもこうしてまた少し前の時間に戻ることができる。戻ることができるというより戻されると言った方が適切かもしれない。そしてこれが一番意外だったけど、ドラゴンが現れる場所は一定ではないことだ。そう、3回目だったと思うが白城さんたちの後を追ってみた時は本来現れる場所とは反対の位置、つまり僕が向かった方面にドラゴンは現れた。…それでも上手くいかなかったわけだが。
僕は自分自身にタイムリープの魔法をかけてしまったようである。それもドラゴンを倒すまで現実に戻れないという条件付きの。そして僕以外の人物はその時と同じ動きを繰り返しているため、例えばドラゴンが現れた時白城さんたちの力を借りることはできない。何故なら彼らは実際にはドラゴンと戦っていないから。あくまで僕自身の実力でなんとかしなければならないということだ。ただドラゴンだけは僕が召喚したものだからだろうか、現れる場所が変わるようだ。
「…なるほど、これは永遠に繰り返す悪夢ってわけか」
だが無意識のうちに親友や街を破壊してしまった僕にはちょうどいい罰だろう。
華那千代は小国と聞いていたがそれでもやはり歩き回るのはしんどいものだ。宮間を運んだ病院があるエリアにいなかったということはあいつはこっちの、ドラゴンによって好き勝手荒らされたエリアにいるということだろう。
「おお…街はボロボロだったのに学校だけは綺麗に残ってるな…。やっぱ魔法学園ってやつはこういう事態に備えて頑丈に造られてんのかな」
「…む、君も避難者か?」
「避難者っていうか、人探しっす」
「そうか…ってお前は!」
「えっ、なに!?おっさん俺のこと知ってんの!?なんで!?」
「待て、俺の記憶が正しければお前も俺と同じくらいの歳じゃなかったか…!?」
「あー、俺は白城の力で成長が止まってるから」
「どういうことだ?まさか白城は他人を不老不死にすることもできるのか!?」
「なんか、そうらしいよ。で、結局あんた誰だ?なーんかそのしかめっ面どこかで見た気はするけどな…」
「まああれから15年も経っていればわからないだろう。俺は倉持だ。理研特区で会っただろう」
「えっ、倉持さん生きてたんすか!」
「ああ、この通り」
「えー…まじか…。白城のやつ倉持さんが死んだと思って慰霊碑に名前を刻んでたけど」
「慰霊碑?」
「うん。簡素なやつだけどあの後作ったんだ」
「そうなのか。機会があれば見に行きたいな」
「そうしなよ!須藤さんなんかは花を供えるより最新端末を持って行った方が喜ぶと思うけど」
「そうか…須藤は…」
「あっ、これ言ったらまずかった…」
「いやどうせ知ることになる。…岩村が生きているという話を聞いたから、他の皆ももしかしたらと思ったが…」
あの厳格そうな倉持さんが動揺するなんて余程須藤さんと仲が良かったんだな。それとも歳を取れば人はこうなるものなのだろうか。そういえば心なしか倉持さんの雰囲気が当時より穏やかになった気がする…。
「そうだ、人を探しているのだったな。華那千代に知り合いがいるのか?」
「いや、白城を探してる」
「白城もここに来ているのか」
「うん、実際会ってるから間違いないよ。たぶんまだいると思うけどなぁ…」
「俺は見かけていないが…。まあここなら情報を集めやすいだろう」
「そうだね。倉持さんはずっとここにいるの?」
「ああ、俺はこの学校の教員だからな」
「えっ、倉持さん先生やってんの!?まあらしいっちゃらしいかー…」
「ほら茶化してないで行った行った。俺だって暇じゃないんだ」
「へいへい。じゃ、またね~!」
倉持さんが教員かぁ…。俺は不老不死だからずっとこのまま旅をしつつふらふらと過ごすんだろうけど、周りのみんなは成長して仕事もするのか…。なんだか高みの見物って感じで面白いかもしれない。