第7話 END

文字数 816文字

End
 剣崎との久しぶりの再会は最悪な形だった。
「なんで反対側にいるんだよ!お前がいればあいつは…!」
「…」
瓦礫の山となった万葉の街でかれこれ1時間くらい罵声、文句、怒号の類を聞いている。まさか突然あの竜が街を襲うなんて誰が想像できただろうか。いや、長畑はなんとなくこの展開を読めていたのではないか。
「ねえ、君もいい加減にしなよ。白城くんは別にこの街を守るヒーローでもないんだしさ、彼にばかり責任を押し付けるのは違うでしょ」
「聖、やめてくれ」
「でも…」
不老不死になってから剣崎は今まで以上に他人を見下しているようだと聞いていたが、どうやらここで心を許せる友人ができたらしい。普通ならそれは良いことだと思うが、“俺たち”にとっては違う。“俺たち”は人間と深く関わるべきではない。
「そういえば彼はどこにいるんだろう」
「長畑のことか?確かに姿が見えないな。…無事だといいが」
「…なんだ、お前もここで人と関わってるじゃないか。誰も守れなくて残念だったな!」
「おい、剣崎!待てっ…」
それにしても剣崎が言っていた“あいつ”とは一体どんなやつだったのだろうか。1人で戦ったということは余程の大馬鹿野郎か、実力者か…
「ふん、自分が戦えないくせに。白城くん、あんなやつの言うこと気にしなくていいんだからね」
「ああ…。…ん?あいつは…」
騒ぎ立てる剣崎に気を取られて全く気付かなかったが、おどおどとこちらの様子をうかがう中峰と目が合った。
「中峰。長畑とは一緒じゃないのか」
「無事でよかった。でもごめんね、宮間くんもドラゴンも見つけられなかったよ」
「…いえ、謝るのは僕の方です。街がこんなことになったのも全部僕のせいなんです」
「どういうことだ?」
「一目見てわかりました。あれは以前僕の魔法が暴走した時に召喚されたものです。だから全部僕のせいなんです…」
「なっ…!」
「そんなことって…!」


蒼緋の焔~The Eraser of Constellationに続く
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登場人物紹介

白城千

『千年放浪記』シリーズの主人公である不老不死の旅人。人間嫌いの皮肉屋だがなんだかんだで旅先で出会った人に手を貸している。

三又聖

白城と旅する幽霊。生前は鉄道会社の社長だった。ふわふわとした不思議系だが切れ者で何を考えているかわからない。

剣崎雄

世界の全てを記録するという野望を持つ少年。ひょんなことから半不老不死の身体を得、元気に冒険中。わがままでナルシストだが認めた相手には素直。

宮間タイキ

別世界の「アメリカ」という場所から来た少年。持ち前の明るさと才能で言語や文化の壁を越え魔法国家華那千代でもトップレベルの実力を持つ蒼炎使いになる。

長畑友樹

魔法国家華那千代に住む少年。町探偵という名のなんでも屋を営んでおり、強い魔法は使えないがトーク力と情報収集力はピカイチ。

中峰祐典

宮間や長畑の友人。魔法学校に在籍するも、極度に臆病な性格で外に出ず引きこもっている。星座のモチーフを召喚する魔法が使えるが力が制御出来ず失敗することも多い。

新井和彦

宮間や中峰の面倒を見ていた半人半妖の男性。妖怪としては珍しく科学技術や新しいものが好き。明るく面倒見がよい兄貴分だが、伝説の剣豪と呼ばれるほどの実力を持ち白城の師匠でもある。

日向洋介

華那千代の学校に務める理科教師。怠け者でだらしがない人物。魔法より科学に興味を持つ変わり者。

岩村海翔

華那千代の学校に務める理数科目担当の教師。戦争で廃れた理研特区を離れ華那千代に来た。真面目で生徒からは恐れられる厳しい教師。

倉持健二

漂流していたところを日向に救われた理研特区の人物。ストイックで厳格な軍人のような人物だが最近歳のせいか涙脆くなってきた。

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