第5話 ジンの分体スザク
文字数 3,711文字
あの事件以降周囲が少し五月蠅くなって来たなとジンは感じていた。
『あまり無闇に事件を起こすのも考え物だな』
そしてジンは事件を起こしても、もっと言えば殺人をしても捕まらない方法はないかと考えていた。
それは言ってしまえば完全犯罪と言う事になるのだが、そんな都合の良いものはないと言うのが世間の常識だ。
しかしとジンは考えていた。俺は仮に死刑になっても死なないがそれでは面白くない。
殺人が立証出来ない条件は一つに証拠がない事、二つに凶器が見つからない事、三つに死体がな事、四つに犯人が確定出来ない事だ。
例え動機が分からなくても証拠があれば検挙立件は出来る。
だから上記のどれからわからなければ殺人の立件は出来ないと言う事になる。
一から三は余りにも在り来たりだ。なら四はどうだ。今まで四で逃げ切った奴はいるだろうか。まずいない。
それは面白い。なら四を試してみるか。
ジンは考えていた。俺は精神生命体だ。体はあってない様な物。
外見は器に過ぎない。ならその器の形状を変えられないだろうかと。
実際問題、精神操作で服も作れる。なら外見の形状も変えられるんじゃないかと思った。
ジンは気を流し自分のイメージした形状に成形してみた。
身長を伸ばしたり縮めたり、または体重を増やしたり減らしたり。
しかしこの程度の変化なら普通の人間でも出来るだろう。俺でないと出来ない事はないのか。
『そうか、あれか』
そしてジンは究極の変化に挑戦してみた。それは性転換だ。男が女に、女が男に。
最近ならそれも可能だろう。しかしそれは一回限り。そう簡単に取り換えは出来ない。しかしジンならどうだ。
男から女に、女から男に。簡単に交換も出来るんではないか。
ジンは女の体をイメージして形状の変化を試みた。細かい所には若干問題があったが、全体的には女になった。
ジンは何も女の体が欲しい訳ではない。女と言う形状があればいい。しかし同じ女の体を使うならより美形の方が良いに決まっている。
そこでジンはコンピューターで造形のシュミレーションをしてみた。より完璧な女性像を描いて。
そして出来上がった像を自分の意識の中にインプットして記憶層に残した。そうすればいつでも引き出して使えるからだ。
ジンが作り出したのは175センチの女性でスレンダー、面長でやや切れ目でメリハリのはっきりしたハーフに近い美形の顔立ちだった。
まさにスーパーモデルの様な女を作り出していた。これなら一目見たら誰でも振り返るだろう。
こんな目立つ女を作り出してどうしようと言うのか。普通の犯罪者は出来るだけ目立たない様にしようとするものだろう。
だがジンはその逆を狙っていた。目立つからこそそこに目が行く、注意が向く。ならそれ以外の注意は散漫になると言う事だ。
ジンは何度もこの姿に変化する練習をした。いつでも即座に変化出来るようになった時点で、この女は刺客、または大量殺人もこなせる戦士となった。
そしてジンはこの女にスザクと言う名を付けた。この女もまたジンそのものに違いはない。
同じ精神を持った二卵性双生児みたいなものかも知れない。そして最後の試みは精神を分離させる事だった。
一つの体ではアリバイの証明にはならない。しかし二つ別々の体なら、片方が何かをやっている時に、もう一方は違う所でアリバイが作れる。
しかしこの分離は少し難しかった。双方に同じ能力を持たせるなら均等分離しかないが、それでは双方の力が半分になってしまう。
もしジンに人の3倍の力が出せるなら、半分にしたら1.5倍に落ちてしまう。これでは危ない場面も出て来るだろう。
出来ればやはりフル稼働の能力は維持したい。そう考えた時、例の亜空間のエネルギーは使えないだろうかと思った。あれもまた自分の力の一部だ。
分離して減った分だけ亜空間からエネルギーを補充して使う。これでいいんではないかと思った。
ただあの力はまだ使た事がない。どれくらいの容量が入ってるのかもわからない。
下手に引き出して暴発でもしたら大変な事になる。周りだけならいいが自分まで吹っ飛んでは堪らないと思った。
そこでジンは人のいない南海の孤島に飛んだ。ここで実験をしてみようと思った。
気のエネルギーと精神のエネルギーを融和させて心の亜空間の扉を開いた。それはほんの一瞬だった。
すると途方もないエネルギーが飛び出して数キロ先にあった孤島が一つ消滅してしまった。
『な、なんだこのエネルギーは。こんな危ない物使えるか』
ジンはそのエネルギー量を1/100、1/1,000、1/10,000、1/100,000、1/1,000,000と縮小して行った。それでもまだ大き過ぎた。
何と言うエネルギー量なんだ。一体ジンはあの時どれ位のエネルギーを取り込んだのか。
ジンは更にエネルギーの縮小を図った。1億分の1になった時初めてこのエネルギーを扱う事が出来た。
もはやこれは化け物としか言い様がなかった。正に巨大な龍のうねりだった。
しかしこの量を持ってしてもあのゾーンから見れば微々たるものでしかない。
では一体あのい存在はどれだけのエネルギーを持っていると言うのか。宇宙そのものか。
ともかくコントロール出来たエネルギーを分割して双方の精神体に分けた。
するとフル稼働の精神体が二つ出来た。ジンとスザクだ。そしてスザクはいつでも回収出来る。
そこに分離したスザクが立っていた。
「あのさ、これって私よね」
「そうだが。いや、お前は誰だ」
「お前は誰って、私は私に決まってるじゃない」
「いや、そう言う意味ではなくてお前は俺だよな」
「どうなのかしらね、私は私で、あんたでもある。そんな感じ?」
「なんだ、それは」
どうやら分離した途端にスザクに仮の自我が芽生えたようだ。これは一つにして二つ。そんな存在だった。
そしてこれはまた、ジンの心の中の願望の現れの一つだったのかも知れない。
ともかく精神体の分離には成功した。後は本当にその能力が継承されているかどうかだ。
ジンはここでスザクと模擬戦をやってみた。ここは南海の孤島だ。周りには誰もいないし何もない。
被害を受ける者も動物もいない。これなら思いっきりらやれると思った。
そして二人は戦った。それはもう人を超えた人外の戦いだった。
双方の最大値、人としてのリミッターは完全に外れていた。しかも双方ともに痛みは感じない。
そうなれば何が起こるか。双方ともに更にギアを上げた。すると破裂音が聞こえ出した。
まるで空気が炸裂する様な音だ。そしてそこに衝撃波が発生した。
双方の打撃は空気を裂き衝撃波を発生させていた。こんな物を生身の人間が喰らったら、それこそ体は木っ端みじんになってしまうだろう。それ程のパワーだった。
ジンは満足した。そしてまたスザクも。
「あのさー一つ聞きたいんだけど、私のスザクって名前誰が付けたの」
「それは俺だ」
「あんたさ。ネーミングセンスが全然だめね」
「何言ってる、スザクは四聖獣の一体だぞ。感謝しろ」
「そんなダサい鳥の名前なんかいらないわよ」
「まぁ、そう言うな。お前には似合ってると思うぞ」
「私はフェニックスの方が良いんだけどさ」
「贅沢言うな」
ともかく分離精神体は完成した。ジンは早速このスザクの力を試してみようと思った。
適当なやくざの組事所を見つけてスザクに襲撃させた。事務所の中には15人程いたが一瞬にして全員が殴殺された。
それはこの前の飯島組の時と状況は全く同じだった。その為また捜査陣達は色目気立った。今度こそと。
そしてまた樫野組でも組長以下全員を殴殺された樫野組の幹部達もその犯人への返しを考えていた。
そしてこれは跡目相続にも関係する事だった。組長と若頭亡き後、組長の椅子に座るのはこの件を収めて仇を取った者と言う事になるのだろう。
6人いる若頭補佐達は各自の情報をかき集めて犯人探しに必死だった。
ただ一つ気になる事は前回も今回も大量殺人をやった訳だが、ジンやスザクに良心の呵責はないのかと言う事だ。
普通殺人は許される事ではない。特に日本では人命、人命と叫ばれ、人の命は地球よりも重いなどと言う者まで出る始末だ。
また普通の者にしても人を殺す事には禁忌があるはずだ。
それをこの二人は、いや、一人と言うべきか、この精神体はその禁忌をいとも簡単に取っ払ってしまった。
肉体を失くし脳細胞を失くした時点で、全ての人の規制から解き放されてしまったのかも知れない。
この時のスザクの状況はジンの意識の中にも共有されていた。そしてこのスザクと合体してしまえば何処を探してもスザクを見つける事は出来ない。これを完全犯罪と言わずして何と言えばいいのか。
これが第四の殺人が立件出来ない条件だ。
スザクに関しては別にIDはいらないが、これから先ジンがこの国で生活し、活動して行くならそれなりのID,身分の証明がいるだろう。
死んだアメリカ国籍の元日本人では話にならない。
『では誰か適当な人間を探しに行くか』
どんな人探しになるのかはわからないが、ジンは人探しの計画を立てていた。
『あまり無闇に事件を起こすのも考え物だな』
そしてジンは事件を起こしても、もっと言えば殺人をしても捕まらない方法はないかと考えていた。
それは言ってしまえば完全犯罪と言う事になるのだが、そんな都合の良いものはないと言うのが世間の常識だ。
しかしとジンは考えていた。俺は仮に死刑になっても死なないがそれでは面白くない。
殺人が立証出来ない条件は一つに証拠がない事、二つに凶器が見つからない事、三つに死体がな事、四つに犯人が確定出来ない事だ。
例え動機が分からなくても証拠があれば検挙立件は出来る。
だから上記のどれからわからなければ殺人の立件は出来ないと言う事になる。
一から三は余りにも在り来たりだ。なら四はどうだ。今まで四で逃げ切った奴はいるだろうか。まずいない。
それは面白い。なら四を試してみるか。
ジンは考えていた。俺は精神生命体だ。体はあってない様な物。
外見は器に過ぎない。ならその器の形状を変えられないだろうかと。
実際問題、精神操作で服も作れる。なら外見の形状も変えられるんじゃないかと思った。
ジンは気を流し自分のイメージした形状に成形してみた。
身長を伸ばしたり縮めたり、または体重を増やしたり減らしたり。
しかしこの程度の変化なら普通の人間でも出来るだろう。俺でないと出来ない事はないのか。
『そうか、あれか』
そしてジンは究極の変化に挑戦してみた。それは性転換だ。男が女に、女が男に。
最近ならそれも可能だろう。しかしそれは一回限り。そう簡単に取り換えは出来ない。しかしジンならどうだ。
男から女に、女から男に。簡単に交換も出来るんではないか。
ジンは女の体をイメージして形状の変化を試みた。細かい所には若干問題があったが、全体的には女になった。
ジンは何も女の体が欲しい訳ではない。女と言う形状があればいい。しかし同じ女の体を使うならより美形の方が良いに決まっている。
そこでジンはコンピューターで造形のシュミレーションをしてみた。より完璧な女性像を描いて。
そして出来上がった像を自分の意識の中にインプットして記憶層に残した。そうすればいつでも引き出して使えるからだ。
ジンが作り出したのは175センチの女性でスレンダー、面長でやや切れ目でメリハリのはっきりしたハーフに近い美形の顔立ちだった。
まさにスーパーモデルの様な女を作り出していた。これなら一目見たら誰でも振り返るだろう。
こんな目立つ女を作り出してどうしようと言うのか。普通の犯罪者は出来るだけ目立たない様にしようとするものだろう。
だがジンはその逆を狙っていた。目立つからこそそこに目が行く、注意が向く。ならそれ以外の注意は散漫になると言う事だ。
ジンは何度もこの姿に変化する練習をした。いつでも即座に変化出来るようになった時点で、この女は刺客、または大量殺人もこなせる戦士となった。
そしてジンはこの女にスザクと言う名を付けた。この女もまたジンそのものに違いはない。
同じ精神を持った二卵性双生児みたいなものかも知れない。そして最後の試みは精神を分離させる事だった。
一つの体ではアリバイの証明にはならない。しかし二つ別々の体なら、片方が何かをやっている時に、もう一方は違う所でアリバイが作れる。
しかしこの分離は少し難しかった。双方に同じ能力を持たせるなら均等分離しかないが、それでは双方の力が半分になってしまう。
もしジンに人の3倍の力が出せるなら、半分にしたら1.5倍に落ちてしまう。これでは危ない場面も出て来るだろう。
出来ればやはりフル稼働の能力は維持したい。そう考えた時、例の亜空間のエネルギーは使えないだろうかと思った。あれもまた自分の力の一部だ。
分離して減った分だけ亜空間からエネルギーを補充して使う。これでいいんではないかと思った。
ただあの力はまだ使た事がない。どれくらいの容量が入ってるのかもわからない。
下手に引き出して暴発でもしたら大変な事になる。周りだけならいいが自分まで吹っ飛んでは堪らないと思った。
そこでジンは人のいない南海の孤島に飛んだ。ここで実験をしてみようと思った。
気のエネルギーと精神のエネルギーを融和させて心の亜空間の扉を開いた。それはほんの一瞬だった。
すると途方もないエネルギーが飛び出して数キロ先にあった孤島が一つ消滅してしまった。
『な、なんだこのエネルギーは。こんな危ない物使えるか』
ジンはそのエネルギー量を1/100、1/1,000、1/10,000、1/100,000、1/1,000,000と縮小して行った。それでもまだ大き過ぎた。
何と言うエネルギー量なんだ。一体ジンはあの時どれ位のエネルギーを取り込んだのか。
ジンは更にエネルギーの縮小を図った。1億分の1になった時初めてこのエネルギーを扱う事が出来た。
もはやこれは化け物としか言い様がなかった。正に巨大な龍のうねりだった。
しかしこの量を持ってしてもあのゾーンから見れば微々たるものでしかない。
では一体あのい存在はどれだけのエネルギーを持っていると言うのか。宇宙そのものか。
ともかくコントロール出来たエネルギーを分割して双方の精神体に分けた。
するとフル稼働の精神体が二つ出来た。ジンとスザクだ。そしてスザクはいつでも回収出来る。
そこに分離したスザクが立っていた。
「あのさ、これって私よね」
「そうだが。いや、お前は誰だ」
「お前は誰って、私は私に決まってるじゃない」
「いや、そう言う意味ではなくてお前は俺だよな」
「どうなのかしらね、私は私で、あんたでもある。そんな感じ?」
「なんだ、それは」
どうやら分離した途端にスザクに仮の自我が芽生えたようだ。これは一つにして二つ。そんな存在だった。
そしてこれはまた、ジンの心の中の願望の現れの一つだったのかも知れない。
ともかく精神体の分離には成功した。後は本当にその能力が継承されているかどうかだ。
ジンはここでスザクと模擬戦をやってみた。ここは南海の孤島だ。周りには誰もいないし何もない。
被害を受ける者も動物もいない。これなら思いっきりらやれると思った。
そして二人は戦った。それはもう人を超えた人外の戦いだった。
双方の最大値、人としてのリミッターは完全に外れていた。しかも双方ともに痛みは感じない。
そうなれば何が起こるか。双方ともに更にギアを上げた。すると破裂音が聞こえ出した。
まるで空気が炸裂する様な音だ。そしてそこに衝撃波が発生した。
双方の打撃は空気を裂き衝撃波を発生させていた。こんな物を生身の人間が喰らったら、それこそ体は木っ端みじんになってしまうだろう。それ程のパワーだった。
ジンは満足した。そしてまたスザクも。
「あのさー一つ聞きたいんだけど、私のスザクって名前誰が付けたの」
「それは俺だ」
「あんたさ。ネーミングセンスが全然だめね」
「何言ってる、スザクは四聖獣の一体だぞ。感謝しろ」
「そんなダサい鳥の名前なんかいらないわよ」
「まぁ、そう言うな。お前には似合ってると思うぞ」
「私はフェニックスの方が良いんだけどさ」
「贅沢言うな」
ともかく分離精神体は完成した。ジンは早速このスザクの力を試してみようと思った。
適当なやくざの組事所を見つけてスザクに襲撃させた。事務所の中には15人程いたが一瞬にして全員が殴殺された。
それはこの前の飯島組の時と状況は全く同じだった。その為また捜査陣達は色目気立った。今度こそと。
そしてまた樫野組でも組長以下全員を殴殺された樫野組の幹部達もその犯人への返しを考えていた。
そしてこれは跡目相続にも関係する事だった。組長と若頭亡き後、組長の椅子に座るのはこの件を収めて仇を取った者と言う事になるのだろう。
6人いる若頭補佐達は各自の情報をかき集めて犯人探しに必死だった。
ただ一つ気になる事は前回も今回も大量殺人をやった訳だが、ジンやスザクに良心の呵責はないのかと言う事だ。
普通殺人は許される事ではない。特に日本では人命、人命と叫ばれ、人の命は地球よりも重いなどと言う者まで出る始末だ。
また普通の者にしても人を殺す事には禁忌があるはずだ。
それをこの二人は、いや、一人と言うべきか、この精神体はその禁忌をいとも簡単に取っ払ってしまった。
肉体を失くし脳細胞を失くした時点で、全ての人の規制から解き放されてしまったのかも知れない。
この時のスザクの状況はジンの意識の中にも共有されていた。そしてこのスザクと合体してしまえば何処を探してもスザクを見つける事は出来ない。これを完全犯罪と言わずして何と言えばいいのか。
これが第四の殺人が立件出来ない条件だ。
スザクに関しては別にIDはいらないが、これから先ジンがこの国で生活し、活動して行くならそれなりのID,身分の証明がいるだろう。
死んだアメリカ国籍の元日本人では話にならない。
『では誰か適当な人間を探しに行くか』
どんな人探しになるのかはわからないが、ジンは人探しの計画を立てていた。