第9話 ジンのバイクライダー
文字数 2,894文字
最近ジンは単車を買った。と言ってもジンの名義で買う訳には行かないので田所順平の名義にしておいた。
年齢的には矢崎俊の方がいいのかも知れないが、出来るだけ経理担当の矢崎は表に出したくなかったからだ。
探偵だからバイクの一台位は持っていてもおかしくはないだろう。
バイクは250ccにしておいた。年寄りが350ccや750ccではやはり違和感があるだろう。
暴走族とレースをするにはこれでは少しパワー不足かも知れないが、そこにジンが乗ればまた別物になる。
この250ccが化け物マシーンになると言う事だ。ジンが乗って気を解放すれば、体と同じ3倍の1,000ccクラスのパワーを叩き出す。
普通の人間がスロットルを開けたらそれこそ地獄にまっしぐらだ。普通の人間には乗りこなせないマシーンだった。
ジンは夜な夜なこのバイクに乗って豊中周辺の国道を流していた。そして族を見つけたらバイクでストリートバトルを吹っ掛けていた。
勿論それが本当のバトルに変わる事もあった。バイクではどうしても勝てないので、周囲を取り囲んで鉄パイプや金属バットで襲って来た事も何度もあった。
しかし相手がジンでは所詮勝負にはならなかった。全員が二度とバイクに乗れない位叩きのめされていた。
そしてこの頃ジンは自分の事をブラックライダーと名乗って周辺の族からは恐れられていた。
そしてジンは聞いていた。10年ほど前、この辺りでレイプを繰り返していた族を知らないかと。
実はジンが警察のコンピュータに侵入して調べてみた所、この辺りで多くの女性がレイプされている事が分かった。
それもみな未だに犯人の目星は付いていないが、やはりバイク痕があったので暴走族の犯行だろうと推測されていた。
しかし10年前と言えば、そいつらは今ではもう社会人となっている年齢だ。
今から見つけるのは少々難しいかも知れないが、一つ一つ潰して行けば何かにぶつかるかも知れないと思っていた。
この時のジンのスタイルは黒のライダースーツに黒のヘルメット。
当然ナンバーは偽造してある。それにバイクは何処にでもある普通の黒い色のタンクのバイクだ。
ナンバーさえ変えてしまえは何処の誰のバイクか分からなくなってしまう。
この頃から10年前のレイプライダー達を探しているブラックライダーがいると言う噂がネットで流れ始めた。
勿論これはジンが流した情報だった。もし心にやましい気持ちのある奴なら、今更昔の事を掘り返されては堪らないと思うものだろう。それも社会的地位があればあるほど。
そしてジンの族狩りは続いた。その頃からだろうか急に暴走族に対する取り締まりが厳しくなった。豊中市を始め北摂全域にだ。
これだけの広域に指令を出せるとなると一所轄では無理だ。恐らくは大阪府警が絡んでるとジンは睨んでいた。
その頃府警の刑事課の石渡の所では、
「石さん、なんや北摂の方でドタバタやってるようでっせ」
「なにをや」
「族狩りですがな。なんや交通課が特別警戒とか言うて暴走族の検挙を始めたらしいですわ」
「そんなん、いつものことやろう」
「ところが今回は何か妙に力が入っとるようで」
「誰が指揮しとるんや」
「それが新任のキャリアさんですわ」
「ああ、交通課に来た米村警部殿か」
「そうです」
「なんか暴走族に恨みでもあるんかの」
今回はちょっとでも蛇行運転でもしようものなら有無を言わさず検挙していた。普通はここまではしないんだが。
現役の族に対してはジンがストリートバトルで攻めていた。その間田所順平には引退した元暴走族に当時の様子を聞きに回らせていた。
これは一種の陽動作戦と言ってもいいだろう。表で派手に暴れて陰にいるやつを誘い出す。
流石は執念の田所順平だ。暴走族に関する資料は驚くほど集めていた。当時の族の名前、リーダーの名前に住所まで。
ただ全部が全部とは言えなかった。これに漏れた者もいた事は事実だ。
何人かは既に当たったが、まだ当たってない者もいたので今回はそれを中心に回ってみた。情報は必ずしもリーダーだけが持っているとは限らない。
そうすると面白い事が一つ分かった。何でも物凄く高い高級バイクを乗り回して族がいたとか。
殆どが普通の族達の倍はするバイクに乗っていたと言う話だった。しかも彼らは一度も検挙された事がないとも言っていた。
つまり余程の金持の息子達が暴走族をやっていたと言う事か。しかし普通はしないだろう。リスクが大き過ぎる。
もし捕まって金持ちの親に迷惑でもかかったら大変だろう。そんなリスクを冒してまでメリットになる事があるならまた別だが。
そしてその族達は1年ほどで姿を消したとも言っていた。それなら田所順平の資料にも入ってないはずだ。
更に情報を集めて行くと、その中の一人の親は警察の偉いさんらしいと言っていた。
まさかな、それで検挙されなかったなんて事はないだろうと順平は思った。
その情報を聞いたジンは叩きのめした族達に、
「お前らバイクをまとめて買う時はどうするんだ。別々に買うのかそれとも一か所で買うのか」と。
まとめて買った方が値段の交渉も出来るしその方が良いと言っていた。ただしどうしても欲しい特別なバイクがあれば別だがと。
「それとこの辺りで高級バイクを扱ってる店は知ってるか」
それなら豊中駅前と池田駅前にあると言っていた。
それを聞いたジンはその店を調べて店のコンピューターに侵入して顧客リストと売却台帳を調べた。
すると池田にあるバイクシップで、10台の高級バイクを一括して売却している資料が出て来た。
購入者は高垣純也。さらに調べて行くと高垣は阪大卒で当時ツーリング部のキャプテンをやってた。
その部員は全員で10名。みな金持ちの息子達だった。バイクを買ったのは彼らが3年生の時、つまりツーリング部設立の時になる。
後輩は誰も入って来なかった様だ。その部は彼らの卒業と同時に廃部になっていた。
どうやら話が見えて来たなとジンは思った。ジンは更にその後の経歴などを辿ってみた。
今日日はコンピューターが発達したお陰で便利になった。ただしジンの様な超天才ハッキング能力を持っていればの話だが。
高垣純也は現在大阪府警の交通課の警部で課長をやっている。しかしキャリアなので1,2年もすればまた何処かに行って直ぐに警視になるだろう。あくまで腰掛だ。
バイクが好きだからと言う事で交通課に来たらしいが本当にそれだけなんだろうか。普通はキャリアの来ない部署だ。
ちなみに父親は大阪府警の警備部長らしい。なるほど力があると言う事か。
その他にもこのツーリング部のメンバーは大阪府警や警視庁勤めや弁護士になっていたり会社の幹部候補生達も多かった。
因みに高垣純也は当時車も持っていた。
さて今回の「闇の仕置人」はどうするか。誰に依頼してもらうかだが田所順平は論外だ。
かと言って当時被害に合った女性達の家族と言っても10年も経てば諦め切っているかもしれないし、こちらからそれを持ちかける訳にもいなかい。
「いいだろう。今回は俺の独断でやろう。悪即斬だ』
年齢的には矢崎俊の方がいいのかも知れないが、出来るだけ経理担当の矢崎は表に出したくなかったからだ。
探偵だからバイクの一台位は持っていてもおかしくはないだろう。
バイクは250ccにしておいた。年寄りが350ccや750ccではやはり違和感があるだろう。
暴走族とレースをするにはこれでは少しパワー不足かも知れないが、そこにジンが乗ればまた別物になる。
この250ccが化け物マシーンになると言う事だ。ジンが乗って気を解放すれば、体と同じ3倍の1,000ccクラスのパワーを叩き出す。
普通の人間がスロットルを開けたらそれこそ地獄にまっしぐらだ。普通の人間には乗りこなせないマシーンだった。
ジンは夜な夜なこのバイクに乗って豊中周辺の国道を流していた。そして族を見つけたらバイクでストリートバトルを吹っ掛けていた。
勿論それが本当のバトルに変わる事もあった。バイクではどうしても勝てないので、周囲を取り囲んで鉄パイプや金属バットで襲って来た事も何度もあった。
しかし相手がジンでは所詮勝負にはならなかった。全員が二度とバイクに乗れない位叩きのめされていた。
そしてこの頃ジンは自分の事をブラックライダーと名乗って周辺の族からは恐れられていた。
そしてジンは聞いていた。10年ほど前、この辺りでレイプを繰り返していた族を知らないかと。
実はジンが警察のコンピュータに侵入して調べてみた所、この辺りで多くの女性がレイプされている事が分かった。
それもみな未だに犯人の目星は付いていないが、やはりバイク痕があったので暴走族の犯行だろうと推測されていた。
しかし10年前と言えば、そいつらは今ではもう社会人となっている年齢だ。
今から見つけるのは少々難しいかも知れないが、一つ一つ潰して行けば何かにぶつかるかも知れないと思っていた。
この時のジンのスタイルは黒のライダースーツに黒のヘルメット。
当然ナンバーは偽造してある。それにバイクは何処にでもある普通の黒い色のタンクのバイクだ。
ナンバーさえ変えてしまえは何処の誰のバイクか分からなくなってしまう。
この頃から10年前のレイプライダー達を探しているブラックライダーがいると言う噂がネットで流れ始めた。
勿論これはジンが流した情報だった。もし心にやましい気持ちのある奴なら、今更昔の事を掘り返されては堪らないと思うものだろう。それも社会的地位があればあるほど。
そしてジンの族狩りは続いた。その頃からだろうか急に暴走族に対する取り締まりが厳しくなった。豊中市を始め北摂全域にだ。
これだけの広域に指令を出せるとなると一所轄では無理だ。恐らくは大阪府警が絡んでるとジンは睨んでいた。
その頃府警の刑事課の石渡の所では、
「石さん、なんや北摂の方でドタバタやってるようでっせ」
「なにをや」
「族狩りですがな。なんや交通課が特別警戒とか言うて暴走族の検挙を始めたらしいですわ」
「そんなん、いつものことやろう」
「ところが今回は何か妙に力が入っとるようで」
「誰が指揮しとるんや」
「それが新任のキャリアさんですわ」
「ああ、交通課に来た米村警部殿か」
「そうです」
「なんか暴走族に恨みでもあるんかの」
今回はちょっとでも蛇行運転でもしようものなら有無を言わさず検挙していた。普通はここまではしないんだが。
現役の族に対してはジンがストリートバトルで攻めていた。その間田所順平には引退した元暴走族に当時の様子を聞きに回らせていた。
これは一種の陽動作戦と言ってもいいだろう。表で派手に暴れて陰にいるやつを誘い出す。
流石は執念の田所順平だ。暴走族に関する資料は驚くほど集めていた。当時の族の名前、リーダーの名前に住所まで。
ただ全部が全部とは言えなかった。これに漏れた者もいた事は事実だ。
何人かは既に当たったが、まだ当たってない者もいたので今回はそれを中心に回ってみた。情報は必ずしもリーダーだけが持っているとは限らない。
そうすると面白い事が一つ分かった。何でも物凄く高い高級バイクを乗り回して族がいたとか。
殆どが普通の族達の倍はするバイクに乗っていたと言う話だった。しかも彼らは一度も検挙された事がないとも言っていた。
つまり余程の金持の息子達が暴走族をやっていたと言う事か。しかし普通はしないだろう。リスクが大き過ぎる。
もし捕まって金持ちの親に迷惑でもかかったら大変だろう。そんなリスクを冒してまでメリットになる事があるならまた別だが。
そしてその族達は1年ほどで姿を消したとも言っていた。それなら田所順平の資料にも入ってないはずだ。
更に情報を集めて行くと、その中の一人の親は警察の偉いさんらしいと言っていた。
まさかな、それで検挙されなかったなんて事はないだろうと順平は思った。
その情報を聞いたジンは叩きのめした族達に、
「お前らバイクをまとめて買う時はどうするんだ。別々に買うのかそれとも一か所で買うのか」と。
まとめて買った方が値段の交渉も出来るしその方が良いと言っていた。ただしどうしても欲しい特別なバイクがあれば別だがと。
「それとこの辺りで高級バイクを扱ってる店は知ってるか」
それなら豊中駅前と池田駅前にあると言っていた。
それを聞いたジンはその店を調べて店のコンピューターに侵入して顧客リストと売却台帳を調べた。
すると池田にあるバイクシップで、10台の高級バイクを一括して売却している資料が出て来た。
購入者は高垣純也。さらに調べて行くと高垣は阪大卒で当時ツーリング部のキャプテンをやってた。
その部員は全員で10名。みな金持ちの息子達だった。バイクを買ったのは彼らが3年生の時、つまりツーリング部設立の時になる。
後輩は誰も入って来なかった様だ。その部は彼らの卒業と同時に廃部になっていた。
どうやら話が見えて来たなとジンは思った。ジンは更にその後の経歴などを辿ってみた。
今日日はコンピューターが発達したお陰で便利になった。ただしジンの様な超天才ハッキング能力を持っていればの話だが。
高垣純也は現在大阪府警の交通課の警部で課長をやっている。しかしキャリアなので1,2年もすればまた何処かに行って直ぐに警視になるだろう。あくまで腰掛だ。
バイクが好きだからと言う事で交通課に来たらしいが本当にそれだけなんだろうか。普通はキャリアの来ない部署だ。
ちなみに父親は大阪府警の警備部長らしい。なるほど力があると言う事か。
その他にもこのツーリング部のメンバーは大阪府警や警視庁勤めや弁護士になっていたり会社の幹部候補生達も多かった。
因みに高垣純也は当時車も持っていた。
さて今回の「闇の仕置人」はどうするか。誰に依頼してもらうかだが田所順平は論外だ。
かと言って当時被害に合った女性達の家族と言っても10年も経てば諦め切っているかもしれないし、こちらからそれを持ちかける訳にもいなかい。
「いいだろう。今回は俺の独断でやろう。悪即斬だ』