第26話 バーのみかじめ料拒否
文字数 2,814文字
今回の木野目組の唐木を始め計3名が殺された件は不本意ながらなかった事にする事になった。
本来なら自分の身内が殺されたんだ敵討ちをするのが当然。それでなければ極道として意地が立たないと言う所なんだが、なにしろ相手は「闇の仕置人」だ。
何処の誰かも何処にいるのかすら分からない。これでは仇の打ちようがなかった。仮に相手がわかったとしても勝てるのかと言う事だ。
この前戦って親の八十島組の半数600人近くがあっさりと倒されてしまった。そんな化け物みたいな相手と戦って本当に勝てるのか。無理だろうと誰もが思った。
だがここで泣き寝入りしたのでは腹の虫が治まらないと誰もが思っていた。だから誰もがイライラして普段よりも暴力的になっていた。
そんな時にまた一つの問題が起こった。
あの「ナイトシェイド」と言うバーがみかじめ料を収めないと言い出したのだ。
信二がその日みかじめ料の徴収に行くと、
「こんな小さな店、誰かから守ってもらう必要もないので、これからは自分達で面倒を見ますので、みかじめ料は今月からはお払いしません」と言われてしまった。
そんな馬鹿な話が。今までやくざに面と向かってみかじめを払わないと言った奴を信二は知らなかった。
「おい、お前そんな事を言って、ただで」とそこまで言って後は言葉を詰まらせた。
ここのマスターの気迫に押されてそれ以上言う事が出来なかった。
組に帰ってその事を報告した信二は兄貴分に散々殴られた。
「お前はわかっとんのか、わしらやくざは怖がられてなぼじゃ。舐められたら終わりなんじゃい。おい、行くぞ」
そう言ってその兄貴分の川辺は4人を連れてバー「ナイトシェイド」に向かった。
あそこのマスターを足腰立たなくなるまで痛めつけてやれば言う事を聞くだろうと思っていた。
あの重いドアをけ破る様な勢いで中に入ってみると、マスターと例の女ともう一人、やはりバーテンダーの格好をした男がいた。
一見優男の様に見るが、何処となく油断の出来ない男の様にも思えた。
「やっぱり来ましたね。そうそう、紹介しておきましょう。今日からうちで働いてくれる事になった芦村君。うちのバーテンダー兼用心棒ですので宜しく」
とジンはあっさりとまた堂々と言ったのだ。この用心棒の芦村もまたジンの精神分体だった。そして芦村には主に裏社会の情報取集を任せていた。
「何、用心棒やと。用心棒がなんぼのもんじゃい」
そう言ってみんなで芦村にかかって行ったが、1分も経たないうちに全員が床を舐めさせられていた。
「一応うちにはこうい言うしっかりした者がいますので、今後の面倒見は必要ありませんので、そう組長さんに言っておいてください」
組長の名前までだされて馬鹿にされたんでは面子が立たない。
川辺達は組に帰って、バー「ナイトシェイド」の従業員の襲撃計画を立てた。
しかし相手は堅気の人間だ。やくざが堅気の人間を襲ったと知れたら同じ業界内での評判が落ちる。
それだけではない。もしその事が警察にでも知れたら組を潰されかねない。だから誰にも分からない様にやらなければならなかった。
この時川辺は組員20人程を集めて一気にけりを付けてしまう事にしていた。
その話を聞いた金子は、
「おい、川辺。そこまではちょっとやり過ぎやろう。相手は堅気なんやぞ」
「わかってます兄貴、そやけど相手が堅気やからそこ示しつけとかんと、こんな事を他の店でも同じような事やられたらわしらの飯の食い上げになってしまいますよって」
そう言われると金子も組長の木野目も頭の末次もダメだとは言えなかった。
「ええか、分かってるとは思うなが殺すなよ」
「へい、わかってます」
そう言って川辺達は出かけて行った。残った木野目達は自事務所で考えていた。
「金子、どう思う」
「そうですね、確かに川辺の言う事も一理あるんですけど」
「一理あるけど、なんや」
「何か嫌な予感がするんですわ、今回の事は」
「嫌な予感か、お前の勘はよう当たるからな」
結局川辺達はバー「ナイトシェイド」の従業員全員を銃で脅して倉庫の様な所に連れて来た。
しかしこの動きを始めから察知していたジン達は、ジンとスザクと芦村の分体を店に残してアリバイを作っておいた。
用心棒の芦村にもちゃんと戸籍は用意してあるので、アリバイさえ作って置けば問題ない。
倉庫ではジンとスザクはヤッパを突き付けられて人質になっていた。
その上で20体1の喧嘩を芦村にさせようと言う腹だった。しかもやくざ達は皆それぞれに道具を持っていた。
ただし殺すなと言われていたのでドスは使わなかった。しかしこれで十分半殺しに出来ると思っていた。
ただ戦いが始まってみると、予想外に相手は強かった。いや、強いなんてものではなかった。何をしても勝てない、いや、かすりもしないのだ。
そうこうしている内に半数が倒されてしまった。これでは危ないと思った川辺は、芦村に、
「それ以上歯向かうな、歯向かえばこいつらを殺すぞ」と脅しを掛けた。
それを見た芦村は何故か笑っていた。
「いいぜ、好きな様にするんだな。お前らにそれが出来るんならな」
そう言った時には、ジン達はいつの間にか縄を解いて立っていた。そして首筋にあてがわれていた刃物を指先で掴んでいた。
たった3本の指で挟まれているだけなのに、押せど引けどびくともしなかった。
「な、なんやこれは、一体どうなとるんじゃい」
「つまりな、ここがお前らの死に場所だと言う意味だよ」
そしてジンは威圧を放った。それだけで残った者達は震えてその場で動けなくなってしまった。
俺達は飛んでもないものに手を出してしまったんだろうかと思ったがもう遅かった。
そして全員の首が刎ね飛ばされていた。後の事はスザクに任せて二人は消えた。
スザクは久し振りに本来の仕置人の姿に戻って木野目組の事務所に殴り込みを掛けていた。
「な、んじゃおんどれは。ここを木野目組と知ってかちこみ掛けとんのか」
そんなこ声が聞こえていたが、その間にも多くの者が斬殺されていた。そして組長のいる部屋にスザクが現れた。
「お前はなんじゃ。何でわしらにかちこみ掛けとるんや」
「あんたら堅気の人間を殺そうとしたよね」
「いや、わしは殺せとは言うとらん」
「あんたはそうでも現場の人間は違うんだよ」
「ま、まさか川辺の奴が」
「だからこれはその仕置きなんだよ」
「ま、まさかあんたが「闇の仕置人」やと言うんか。ま、待ってくれ。誤解や」
この時金子は、やっぱり俺の勘が当たってしまったかと思った。嫌な感じは本物だったんだなと。
その夜猪木野目組は全員死亡で壊滅した。
そしてまた八十島組の頭の携帯から、八十島組組長の携帯に、「これ以上組を潰されなかったら何もするな。そして木野目組のシマには今後誰も入れるな」と言うメッセージが届いた。
つまり今後この地域は、やくざの組のない空白の地帯になると言う事だった。
本来なら自分の身内が殺されたんだ敵討ちをするのが当然。それでなければ極道として意地が立たないと言う所なんだが、なにしろ相手は「闇の仕置人」だ。
何処の誰かも何処にいるのかすら分からない。これでは仇の打ちようがなかった。仮に相手がわかったとしても勝てるのかと言う事だ。
この前戦って親の八十島組の半数600人近くがあっさりと倒されてしまった。そんな化け物みたいな相手と戦って本当に勝てるのか。無理だろうと誰もが思った。
だがここで泣き寝入りしたのでは腹の虫が治まらないと誰もが思っていた。だから誰もがイライラして普段よりも暴力的になっていた。
そんな時にまた一つの問題が起こった。
あの「ナイトシェイド」と言うバーがみかじめ料を収めないと言い出したのだ。
信二がその日みかじめ料の徴収に行くと、
「こんな小さな店、誰かから守ってもらう必要もないので、これからは自分達で面倒を見ますので、みかじめ料は今月からはお払いしません」と言われてしまった。
そんな馬鹿な話が。今までやくざに面と向かってみかじめを払わないと言った奴を信二は知らなかった。
「おい、お前そんな事を言って、ただで」とそこまで言って後は言葉を詰まらせた。
ここのマスターの気迫に押されてそれ以上言う事が出来なかった。
組に帰ってその事を報告した信二は兄貴分に散々殴られた。
「お前はわかっとんのか、わしらやくざは怖がられてなぼじゃ。舐められたら終わりなんじゃい。おい、行くぞ」
そう言ってその兄貴分の川辺は4人を連れてバー「ナイトシェイド」に向かった。
あそこのマスターを足腰立たなくなるまで痛めつけてやれば言う事を聞くだろうと思っていた。
あの重いドアをけ破る様な勢いで中に入ってみると、マスターと例の女ともう一人、やはりバーテンダーの格好をした男がいた。
一見優男の様に見るが、何処となく油断の出来ない男の様にも思えた。
「やっぱり来ましたね。そうそう、紹介しておきましょう。今日からうちで働いてくれる事になった芦村君。うちのバーテンダー兼用心棒ですので宜しく」
とジンはあっさりとまた堂々と言ったのだ。この用心棒の芦村もまたジンの精神分体だった。そして芦村には主に裏社会の情報取集を任せていた。
「何、用心棒やと。用心棒がなんぼのもんじゃい」
そう言ってみんなで芦村にかかって行ったが、1分も経たないうちに全員が床を舐めさせられていた。
「一応うちにはこうい言うしっかりした者がいますので、今後の面倒見は必要ありませんので、そう組長さんに言っておいてください」
組長の名前までだされて馬鹿にされたんでは面子が立たない。
川辺達は組に帰って、バー「ナイトシェイド」の従業員の襲撃計画を立てた。
しかし相手は堅気の人間だ。やくざが堅気の人間を襲ったと知れたら同じ業界内での評判が落ちる。
それだけではない。もしその事が警察にでも知れたら組を潰されかねない。だから誰にも分からない様にやらなければならなかった。
この時川辺は組員20人程を集めて一気にけりを付けてしまう事にしていた。
その話を聞いた金子は、
「おい、川辺。そこまではちょっとやり過ぎやろう。相手は堅気なんやぞ」
「わかってます兄貴、そやけど相手が堅気やからそこ示しつけとかんと、こんな事を他の店でも同じような事やられたらわしらの飯の食い上げになってしまいますよって」
そう言われると金子も組長の木野目も頭の末次もダメだとは言えなかった。
「ええか、分かってるとは思うなが殺すなよ」
「へい、わかってます」
そう言って川辺達は出かけて行った。残った木野目達は自事務所で考えていた。
「金子、どう思う」
「そうですね、確かに川辺の言う事も一理あるんですけど」
「一理あるけど、なんや」
「何か嫌な予感がするんですわ、今回の事は」
「嫌な予感か、お前の勘はよう当たるからな」
結局川辺達はバー「ナイトシェイド」の従業員全員を銃で脅して倉庫の様な所に連れて来た。
しかしこの動きを始めから察知していたジン達は、ジンとスザクと芦村の分体を店に残してアリバイを作っておいた。
用心棒の芦村にもちゃんと戸籍は用意してあるので、アリバイさえ作って置けば問題ない。
倉庫ではジンとスザクはヤッパを突き付けられて人質になっていた。
その上で20体1の喧嘩を芦村にさせようと言う腹だった。しかもやくざ達は皆それぞれに道具を持っていた。
ただし殺すなと言われていたのでドスは使わなかった。しかしこれで十分半殺しに出来ると思っていた。
ただ戦いが始まってみると、予想外に相手は強かった。いや、強いなんてものではなかった。何をしても勝てない、いや、かすりもしないのだ。
そうこうしている内に半数が倒されてしまった。これでは危ないと思った川辺は、芦村に、
「それ以上歯向かうな、歯向かえばこいつらを殺すぞ」と脅しを掛けた。
それを見た芦村は何故か笑っていた。
「いいぜ、好きな様にするんだな。お前らにそれが出来るんならな」
そう言った時には、ジン達はいつの間にか縄を解いて立っていた。そして首筋にあてがわれていた刃物を指先で掴んでいた。
たった3本の指で挟まれているだけなのに、押せど引けどびくともしなかった。
「な、なんやこれは、一体どうなとるんじゃい」
「つまりな、ここがお前らの死に場所だと言う意味だよ」
そしてジンは威圧を放った。それだけで残った者達は震えてその場で動けなくなってしまった。
俺達は飛んでもないものに手を出してしまったんだろうかと思ったがもう遅かった。
そして全員の首が刎ね飛ばされていた。後の事はスザクに任せて二人は消えた。
スザクは久し振りに本来の仕置人の姿に戻って木野目組の事務所に殴り込みを掛けていた。
「な、んじゃおんどれは。ここを木野目組と知ってかちこみ掛けとんのか」
そんなこ声が聞こえていたが、その間にも多くの者が斬殺されていた。そして組長のいる部屋にスザクが現れた。
「お前はなんじゃ。何でわしらにかちこみ掛けとるんや」
「あんたら堅気の人間を殺そうとしたよね」
「いや、わしは殺せとは言うとらん」
「あんたはそうでも現場の人間は違うんだよ」
「ま、まさか川辺の奴が」
「だからこれはその仕置きなんだよ」
「ま、まさかあんたが「闇の仕置人」やと言うんか。ま、待ってくれ。誤解や」
この時金子は、やっぱり俺の勘が当たってしまったかと思った。嫌な感じは本物だったんだなと。
その夜猪木野目組は全員死亡で壊滅した。
そしてまた八十島組の頭の携帯から、八十島組組長の携帯に、「これ以上組を潰されなかったら何もするな。そして木野目組のシマには今後誰も入れるな」と言うメッセージが届いた。
つまり今後この地域は、やくざの組のない空白の地帯になると言う事だった。