五、

文字数 7,517文字

 無事に清里での合宿、夏のレッスンを終え、九月中旬。十二月の発表会を三ヵ月後に控え、彩は今日、舞台の下見に出かけている。そのためにレッスンもいつもより一時間遅く始まることになっていた。
 響は久しぶりに若葉に勉強を見てもらっていた。彼女への思いは恋じゃない。もしかすると、最初から母の刷り込みだったのかもしれない。「一目ぼれ」と言われたから、そうだと勘違いした。でも、実際は母が忘れた母性への憧れだった。
 それでも一緒にいる時間は心地よかった。優しい若葉は、母の代わりにしては若すぎるが、本当の母が側にいるような感覚だった。彩がよりいっそう遠い存在になっていく。生みの親との繋がりが、どんどん薄くなっていく気がした。
 計算ドリルの宿題を終えたとき、インターフォンが鳴った。出ると、壮次と学ラン姿の光太郎が前に立っていた。壮次はともかく、光太郎が自宅に来るのは初めてだ。また、若葉と顔を合わせるのもそうだ。
 響は鍵を開けると、二人を招き入れた。
「どうしたんだ、二人揃って」
「俺はついで。光太郎が見せたいものがあるんだって」
 光太郎は奥にいた若葉の存在に気がつき、会釈をする。響は急いでお互いを紹介した。
「若葉さん、壮次は知ってるよね? こっちは壮次の兄貴で俺と同じダンス教室に通ってる光太郎。光太郎、こっちは俺の面倒を見てくれてる若葉さん」
「よろしくね、光太郎くん」
 若葉が笑顔を見せると、光太郎は照れたらしく顔を赤らめた。
「よろしくっす」
 挨拶すると、二人は玄関に腰を下ろして靴を脱ぎ始めた。
「あれ、光太郎、背中どうしたの」
 光太郎の紺色の学ランの背には、茶色く大きな靴跡がついていた。誰かに蹴られた跡のように見える。光太郎は平然と言ってのけた。
「前に言っただろ。俺、学校じゃいじめられてる方だって」
「だから、光太郎も合気道続けてればよかったのに」
 壮次が腰に手を当てて、やれやれと首を振る。しかし、問題はそれで解決するようなものではないと響は思った。
 若葉がアイスティーを二人に出すと、さっそく光太郎は響に見せたいという雑誌を取り出した。
「『月刊ダンシング・マニア』?」
 表紙はどこかのダンス大会の様子を撮ったものらしい。どうやらダンスの専門雑誌のようだ。響はもの珍しさから、ぺらぺらとページをめくった。
「あ」
 あるページで手が止まった。見出しには大きく『ロイ・ウィルソン来日公演決定』と書かれている。
「見せたかったのは、それ。お前、ロイの顔、見たことなかっただろ」
 意外だった。ロイ・ウィルソンは、母が熱中するほどの人間だ。きっと若く、才能溢れるいい男だと思っていた。金髪で少し長めの髪を後ろで括り、青い目はガラス玉のようにきらきらときれいに輝く。骨格もしゅっとしていて、目鼻立ちも整っている。それは想像通りだった。だが、写真のロイは、確かに見た目は若いが、記事には六十歳と書かれていた。
「六十! って、還暦過ぎてるのかよ」
「彩先生が、彼に本当に恋をしてるのか、謎だよ。それより驚くべきところは、その下だ」
 光太郎に促されるまま、下の文字に目を移した。「来日特別インタビュー」が載っている。その中身に目を疑った。
 インタビュアーが「そろそろ後継者をお探しだと聞きますが」とたずねると、ロイは驚くべき答えを口にしていた。
「『きっと日本には才能あるダンサーが多くいるはずだ。僕は日本のダンサー、特に伸び盛りの小さい子供からから後継者を選ぶつもりだよ』って……どういうこと?」
 響が首をかしげると、光太郎は「よく考えろ!」と同じ文章を指さした。
「ロイは俺たちの発表会を観に来るだろ? 他はどうかしれないけど。ということは、お前が選ばれる可能性だって、すごく少ないけどあるってことだ!」
「ええっ! まさか!」
 本当にまさか、だ。自分のダンス歴はまだ浅い。それに、踊りも決してうまいとは言えない。それなのに、いきなり後継者に誘われるかもしれないなんて、急すぎる。
「俺より、光太郎の方が可能性はあるだろ」
 雑誌から顔を上げると、彼が複雑な表情をしていた。悔しそうだが、それをぶつける場所もなく、ぐっと我慢している。唇は歯で噛んでいるせいで、血が出そうなくらい赤くなっている。
「発表会では、お前が彩先生への気持ちを踊る、ソロだ。彩先生の振付では俺も踊ったけど、お前のソロに俺は必要ない。俺は舞台に出ない」
「いいのかよ、光太郎」
 壮次がすっとんきょうな声を出す。
「毎晩ずっと練習してたじゃん。それに、プロのダンサーになるのが夢だって、いつも言っていたじゃないか!」
「チャンスはまだある。踊っていれば、いずれ声はかかるよ」
光太郎は悔しさを我慢して、クールに振舞おうとする。しかし、顔は真っ赤になっており、目潤んでいるせいでバレバレだ。
「だけど……いいのか? 俺はわざわざソロの踊りをやらなくてもいいぞ。予定通り、二人の踊りをやろう」
「俺も同じだったんだよ」
 壮次が、何かに気がついたように光太郎の方を向いた。響は何を言われているのかわからない。
「彩先生は厳しいけど、俺はあの人に母性を感じていた。お前と同じように、勘違いしていたんだ」
 寂しそうにうつむく。壮次は兄の気持ちを察したらしく、肩を叩いてから静かに響に告げた。
「言ってなかったけどさ、気づいてるかなとも思ってた。俺たちん家は、お前と反対。父子家庭なんだ。俺を生んだせいで、母さんは死んだ」
 そういえば、学校にいるときも外で遊んでいるときも、今から思えば不自然なほど、壮次や光太郎からは母親の話題は出なかった。大体、二人とも家の話をめったにすること自体なかった。それを気づいてやれなかった自分の傲慢さに、響は胸を締めつけられた。
「二人とも、ごめん。俺、鈍感で、自分のことで手一杯だった。二人のこと、察することもできなかった」
「俺は別にいいんだけどな。光太郎はダンスを習いだしてから、『彩先生、彩先生』って結構言ってたからなあ」
 壮次がからかうように笑うと、光太郎はそんな弟を本気で殴った。
「うるせえ! 余計なこと言うな!」
 壮次は石頭だった。殴った本人の拳が痛いだけだ。光太郎は顔を真っ赤にして、なみだ目になりながらも、しっかりとした口調で響に言った。
「ともかく俺もわかったんだ。彩先生は、俺の母親じゃない。それに、彩先生は作品を愛する前に、自分の息子にきちんと向き合うべきだ。だから、響はソロを踊れよ。ロイは関係ない」
 真剣な顔で見つめられ、響は光太郎の思いの強さを知った。自分にはもう、本当の母親はいない。だけど、その寂しさを他人の親で紛らわせるのは間違っている。それに気づいた光太郎は、強い眼差しを響にくれた。自分のチャンスを潰して、響と彩の親子関係正そうとしてくれている。母親がいないからこそ、母親との関係を大切にして欲しいと、思ってくれている。
 自室からゼリーを持ってきてくれた若葉が、偶然雑誌に目をやった。
「あれ、この人。どことなく響くんに似てるね」
「え?」
 言われて、光太郎と壮次は響の顔をまじまじと見た。茶色い髪に、茶色い目。金髪碧眼のロイとは大違いだが、白い肌だけはハーフと聞かれても完全に否定できなかった。それに、目や鼻の置かれた位置。なんとなく写真の彼と似ている気もしてくる。
 また新たな問題の勃発だ。


「ちょっと! 二人ともこの間と全然踊りが違うじゃない! どういうことよ!」
 彩の罵声が響く。若葉への気持ちが恋じゃないことに気づいてから、響は『不完全な少女』の踊りができなくなっていた。光太郎も同じだ。『完璧な男』は舞台に出ない。練習するだけ無駄な踊りをやっても、むなしいだけだ。
それに二人の思考を蝕む、大きな疑問。ロイと彩、そして響の関係だ。仮に。あくまで仮にだ。もし響がロイと彩の息子だとしたら。彩が無理やり発表会に出そうとする理由がはっきりわかる。後継者として推すためだ。しかし、だとしたら問題が残る。彩は響を「息子」としてではなく「娘」として舞台に立たせようとしていることだ。「月刊ダンシング・マニア」では、後継者は女の子ではなく、自分と同じ男性を選ぶつもりだと書かれていた。もし、後継者として響を推すなら、最初から「息子」として出すはずだ。それが理解不能だった。
「もう発表会まで三ヶ月なのよ! せっかくロイが観に来てくださるっていうのに!」
「なあ、母さん。なんでそこまでロイって人に固執するんだ?」
 響が、取り乱す彩に単刀直入に訊いた。すると、大声で怒鳴りちらしていた彩が、ぴたりと叫ぶのを止め、静かになった。今の質問を無視して、また最初から曲をかける。
「なあ! なんでだよ! なんで教えてくれないんだよ!」
 悲しい旋律に、響の心が同調する。母は自分と光太郎を最高の作品にしようと、今日も指導を惜しまない。だけど、自分は舞台で母を裏切る。光太郎も、自分のチャンスをふいにして、響の背中を押してくれる。それでも彩は、曲が終わるまで頑なに口を閉ざしたままだった。
 停止ボタンが押された。踊らなかった二人を、彩は怒らなかった。
「そんなことを知って、どうするの?」
「最初からおかしかったからだよ。ダンス素人の俺を巻き込んだこと自体、変だったんだ」
 しばらく考えてから、彩はゆっくりと口を開いた。
「言ったでしょ? あんたの体のパーツや初恋の女の子みたいな表情が作品にぴったりだって」
「体のことは知らないけど、俺は恋なんてしてない。恋をしてるって母さんに刷り込まれたからそう思っていただけで、若葉さんのことはどうも思っていないんだ。だから、もうあの表現はできないよ。そもそもあれは、恋が実らない人間の感情を意識したものだろ? 若葉さんへの思いが恋じゃなければ、誰の感情を表現すればいい?」
 彩は黙った。彼女は無意識に刷り込んだのかもしれない。それでも、インプリンティングには成功した。響は若葉を好きだと勘違いした。だが、その間違いにもう気づいている。彩は息子を一瞥し、吐き捨てるように言った。
「そうね。できないのなら、私の感情だと思って表現しなさい」
 顔は無表情だったが、目は悲しみを湛えていた。――やっぱり、そうなのか。響と光太郎は顔を見合わせた。ロイと彩は二十九離れている。それでも彩は、ロイのことを師匠としてではなく、異性として好きだったのだ。
「光太郎」
 突然名前を呼ばれ、背筋を伸ばす。先ほどよりも勢いをなくした彩は、力なく言った。
「あんたは完璧な演技を目指しなさい。鉛筆をどんどん削って、先を鋭くしていくように。そうすれば、本当の意味での『完璧』がわかるわ」
 抽象的な表現は難解だった。鉛筆を削って細くすれば、いずれ折れてしまう。そんな演技を彼女は求めているのだろうか。


 発表会まで三ヶ月なのに、響のソロはまったく練習できていなかった。振付はもう決まっている。牧場で踊ったものを少しアレンジしたものだ。ほぼ即興だったが、光太郎が紙に書き起こしてくれた。ダンスのレッスンは、相変わらず学校が終わってからすぐ移動し、夜遅くまで続く。彩のレッスンも、本番ではやらないというのに手を抜けない状態だった。そこで光太郎は妙案を思いついた。
「彩先生、俺たちの練習なんですが、しばらく自分たちで模索させてもらえませんか? 九時まで先生に見てもらって、そのあと自由に個人練習をしたいんです」
 彩は最初渋ったが、光太郎が熱心に頼むと仕方なく了承した。自分も発表会前の金銭管理や舞台衣装、舞台演出や撮影の手配の仕事が溜まっていたのだ。
 無事に自由にレッスンできる環境を手に入れた二人は、さっそく曲決めから始めることにした。
「響はどんなイメージして、この間踊ったんだ? それを元に曲を探してみよう」
 うーんと唸ったあと、響は親指の爪を噛んで困った顔をした。
「特にないんだよな。強いて言えば、風、かな」
「風?」
「結構強かっただろ? さわさわって感じじゃなくて、ゴーッって聞こえるくらいの風」
 光太郎はメモ帳に「風の音」と書いて、腕を組んだ。
「リラクゼーションCDとかにありそうだけど、そういうのってカウント取るの難しくないか? お前、リズム感あまりないっていうか、苦手だろ?」
 ちょっとむっとした響は、「苦手でもなんとかする!」と勢いをつけて言った。売り言葉に買い言葉というやつだ。
「あと、衣装だな。発表会用の衣装は、全部彩先生がオーダーしたりしてるみたいだけど、こればっかりは自分たちで用意しないと」
「それなんだけど」
 響はひとさし指を前に出した。
「俺、ショートパンツとTシャツで出るよ。これなら自然だろ?」
「冴えないな」
 納得できない顔をする光太郎に、響は付け足した。
「普段着っぽいなら、『まだ衣装に着替えてないんだな』って思われるだけじゃん? 衣装を用意する予算も手段もないなら、私服しかないだろ」
 ペンで耳の裏側をかいて、仕方なくメモする。衣装はこれで決定だ。
「ところでさ、もうひとつ手伝ってもらいたいことがあるんだけど、いいか?」
 響が光太郎に耳打ちすると、打ちあけられた本人は複雑な顔をした。
「いい考えだ、って言いたいけど、あいつに頼むのは嫌だな」


 午後十一時。帰宅すると、すでに母はテーブルに突っ伏して眠っていた。パソコンには、予算表が作成されている。一言ずつ書かれたメモも散乱している。よっぽど疲れていたのだろう。響がブランケットをかけてやっても、起きることはなかった。相変わらず仕事第一。風呂の用意も、洗濯物の取り込みも、一切家事はやっていなかった。
 母の寝顔を正面の席でじっと見つめる。今年の春が来るまでは、少し仕事熱心な母親というだけだった。それが今は、仕事を家庭に持ち込むどころか、自分の子供を巻き込んで大騒動だ。ダンスから離れていた自分に、再びダンスを始めさせた。しかも女装をさせて。一体何のメリットがあるのだ。大事な発表会にダンス素人を出して、何になる。
それにロイという人間。来日公演の合間に彩の発表会を観に来るという。それだけならいいが、引っかかるのは「後継者を選びに来ているかもしれない」ということだ。無理にダンスに復帰させた理由が、ロイの後継者として響を推すためならわかるが、響は「ひびき」として発表会に出る。後継者にはなりえない。
考えていると、頭がパンクしそうになってきた。自分ももう休もう。明日も学校だ。寝床を用意するのが面倒くさくて、ソファーに敷いた毛布にくるまって眠りについた。


 丸一日ぼーっとしていた。練習疲れと考え疲れで、学校の勉強はさっぱりだ。ランドセルを置いたら、すぐにダンス教室に向わなければならない。それでも睡魔には勝てず、ちょっとだけと床に寝そべると、そのまま眠ってしまった。
 起きたのは玄関のチャイムの音でだった。時計を見る。大遅刻だ。ドアを開けると若葉がいた。
「彩さんから電話があって。響くんの携帯にも何度も電話したけど出なかったから。大丈夫? 調子でも悪いの?」
「ちょっと眠くて。ごめんね、心配かけて。今からすぐダンス教室行くから」
 荷物を準備して素早くスニーカーを履く。すると、若葉は意外なことを口走った。
「電車じゃ遅くなるから、今日は車で行こう」
 下には銀色のミニバンが止まっていた。わけもわからず、若葉に言われたとおり、助手席に座り、シートベルトをつける。
「よおし、じゃあ出発!」
 運転席に座った若葉は、思いっきりアクセルを踏んだ。
 自分を元気づけるかのように、はしゃぐ若葉。すべてを告白して、相談に乗ってもらえたらどんなに楽になれるだろう。でも、彼女に全部話したら、母との溝ができてしまう気がした。


「若葉さん……本当に免許持ってるの?」
 ダンス教室の前に着いたときには、響きはすでにグロッキー状態だった。若葉の運転は荒く、普通の道でも気持ち悪くなるほどだった。
「高校卒業のときに取ったの。来週大学の研修で車使うんだけど、預かっててよかったよ。それよりほら、行っておいで!」
 ふらふらな足取りのまま、背中を押される。ドアを開けようとして、ウィッグをかぶっていないことに気がついた。カバンから茶色い毛の塊を出して、頭に装着する。ガラスに映った姿で頭を確認すると、ドアを勢いよく開ける。同時に彩の罵声が飛ぶ。予想通りだ。
「響くん?」
 背後で若葉の声がしたとき、響は自分の大きなミスに気がついた。振り向いたときには、驚いて口をあんぐりとあけた若葉の顔が見えた。


 レッスン中、ずっと若葉の車は教室の前にいた。若い女性なのでかろうじて不審者だとは思われなかったが、外を見るたび彼女の目があり、恐かった。
 いつものように女装して、バーレッスンをしている自分を、彼女はどうみているのだろう。若葉はタイミングをうかがっているようだった。レッスンが終わり、生徒が外へ出て行く。迎えの保護者と落ち合うと、帰路に着く。その様子を一通り見て、教室に光太郎と響、彩だけになったのを見計らって、若葉はドアを開けた。
「彩さん」
「弓削さん? どうしてここに」
 驚いた彩は、手にしていたMDを落とした。拾うために腰をかがめると、若葉は響の腕を取った。
「響くん、なんでこんな格好をしているんですか? ずっとおかしいと思ってたんです。彩さん、ダンスのことになると、響くんのことなんてお構いなしじゃないですか。熱中症になったときも、心配なし。挙句にこんな女装までさせて。どうかしてます!」
「部外者には関係ないわ」
 冷たく突き放しても、若葉は食い下がらない。
「私は響くんのお世話を頼まれてます。自分の息子に女装させて、どんな気持ちですか? それで満足なんですか?」
 光太郎が、若葉の必死な訴えを聞いて目を見開く。響は、掴まれた左腕に熱さを感じた。他人の子供なのに、自分の血縁のように怒ってくれる若葉。彼女の性格的なものなのかどうかは知らないが、今まで誰も彩を直接叱ってくれる人はいなかった。中村先生でさえもだ。思っていたことを代弁してくれる若葉は、頼もしかった。
「響くんが男の子なのが不満なんですか? どんな子供でも、あなたのお子さんじゃないですか!」
 核心を突かれて、彩は若葉をキッとにらんだ。
「私の生んだ子は私の『作品』よ。若葉さん、あなたにはもう、うちに関わらないでもらいます。今日までのお世話代はちゃんと振り込ませてもらうから」
 若葉はゆっくりと響の腕を放すと、悲しそうな目を向けた。しばらく見つめ合うと、ふっと視線をドアに移し、彼女は車に乗り込んだ。

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