第26話 代理挨拶

文字数 880文字

無名の偉人たちの名言26
微力かもしれませんが、父はこの国の発展に貢献した一人でした
地方公務員 中岡謙太郎

「喪主の母に成り代わりまして皆様にご挨拶を申し上げますことを、お赦し願います。本日はお忙しい中、ご会葬賜り誠にありがとうございました。皆様のご支援により、無事滞りなく昨日の通夜と本日の葬儀告別式が終了致しましたことを感謝いたします。
また、新型コロナウイルス感染防止にご協力いただきありがとうございました。
7日前まで愛知県のトンネル工事現場で元気に働いていた父でしたが、宿舎において急に胸の痛みを訴え救急搬送され、病院での懸命の治療もむなしく10月5日15時43分、私たち家族に見守られながら永眠されました。何よりも本人が一番悔しい思いをしているかと思いますが、このように多くの皆様が父のお参りにお越しいただいていることを、この会場のどこかでよろこんでいることと思います。昭和28年に北海道に生まれ、地元の小学校中学校と卒業し、上の学校にも行けるほどの学力がありながらも、大家族を養うために、ただただ全国の道路建設やトンネル工事で働き続けてきました。私の子供の頃から出稼ぎで、お盆とお正月以外家にいることはほとんどなく、今よりも豊かな生活ではなく、旅行に連れてくれた思い出や、豪華なおもちゃなどもありませんでしたが、酒が好きで明るい性格の父のおかげで、心だけはいつも満たされておりました。微力だったかもしれませんが、父はこの国の発展に貢献したうちの一人だったことを息子として誇りに思い、残された母を支え、父の供養をして参りたいと思いますが、何分まだまだ未熟者でございますので、今後とも皆様のより一層のご指導の程、よろしくお願い申し上げます。本日は長時間にわたり、誠にありがとうございました」

『以上をもちまして、故中岡昌弘様の葬儀、並びに告別式を終了いたします。本日はお忙しいところ、ご臨席いただきまして誠にありがとうございました。お帰りの際にはお引き物のお引き換え忘れの無いよう、ご案内申し上げます。尚、会場を出られる際までマスクの着用をお願い申し上げます』
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