第５６話　ＴＯＫＹＯ　２０２０

無名の偉人たちの名言集５６
今までお世話になりました
元居酒屋店主　佐久間哲生


「直前のゴタゴタあったけども、よくやったな。開会式」

『このコロナの世の中でも、オリンピックできるのは世界中で日本しかないでしょ』

「そうだな。オリンピック反対のデモに参加した人たちはテレビ見てるのかな？」

『あの人たちはどうせ、誰かに雇われてんだろう。時給１０００円くらいで』

「TOYOTAはCM自粛だって。テレビ局大打撃だな」

『さんざんネガティブキャンペーンしてたからな』

「ブーメラン直撃だ」

『明日のサンモニで、柔道の金メダル取った高藤と銀メダルの渡名喜を紹介するんだろうか？』

「マスクしないで入場したり蜜な状態で、はしゃいで踊って入場した外国の選手とかを大々的に流すんでないか。あの番組の得意技だからな」

『目に見えてるな』

「まあ、本当であれば俺たちもスポーツバーで取材っていうパターンだったのにな」

『そうだな。一緒に大声で応援してただろうな。こういう時でも地方の新聞社として様々伝えることが大事だからな。これから幅跳びにハードルに野球にと楽しみだな、道南出身のオリンピック選手が３人もいるなんて』

「おっと、男子バレー勝ったぞ」

『２９年ぶりってか』

「あっ池江さん、リレー決勝逃したか」

『残念、でもよくこの舞台まできたよ。選手は俺らみたいな凡人よりも遥かに努力してきたのさ。あるのかないのかわからない、この大会のためにずっと』

「なんだLINEか。誰だ」

・・・・・・

「駅前の居酒屋魚清の大将からだ」

『なんて』

「自主廃業します。今までお世話になりました、と」

『大将、今まで頑張ってきたのに。本当に残念だな。数えきれないくらい、広告も協力してくれて。こちらこそ申し訳ないな。これで何件目だよ。頼むからもう勘弁してくれ』

「言葉がないな。ごめん、ちょっとテレビ消してくれ。LINEの返事、なんて返せばいいんだよ」