第12話 毒

文字数 7,703文字


気付けば夏も終わろうとしていた。アオスジアゲハをモデルとしたこの蝶たちもそろそろ命の終わりを迎えるのだろうか。それとも終わりを知らない人工物であるのだろうか。
「あれ、なんかいい匂いが…」
「帰ってたのか。暇だから超久しぶりに料理をしてみようかと思ってな」
「超久しぶりって…大丈夫なんですか…?」
「まあ見てろって。カレーを作れないやつなんていないさ」
やや不安であったが鞄を置き、手を洗って完成を待った。
「さあ、出来たぞ。隠し味も効いているから美味いはずだ」
見た目は普通のカレーである。
「普通においしそうですね。早速いただきます」
スプーンを運んだ。口に入れる直前に少し危険な匂いがしたが時すでに遅し。これは絶対に辛いやつだと思った時にはもう口の中は灼熱地獄であった。視界がぼやけ、汗が止まらない。なんとか1口目を飲み込むと舌が痺れるように痛かった。
「な、なんでひゅか、これ…。めちゃくちゃ辛ひじゃなひれすか…!」
しかし対座しているバケモノは平然とした顔で箸を(いや、スプーンを)進めている。
「なんだ、隠し味の香辛料各種と唐辛子を少し入れすぎたか?」
「少しって…相当入れたでしょう!?」
「そこそこ入れたなぁ」
「隠し味なんてほんのひとつまみとかでいいんですよ!」
「隠せてないくらい入れてたわ。そら“ 隠し味”じゃなくなっちまうな。まあ美味いから良しとするか」
そう言いながらもテンポ良く激辛カレーを食している。なんとなく悔しいし、何より残すのも勿体ないので(仮に俺が食べられなくてもこの人が俺の分も食べそうだが)、久々に大量の汗を流すことにした。
「先輩…」
「ん、なんだ?」
「どんなに美味いものでも配分が大事なんですよ…。特に刺激の強いものは…」
「あー…、そのようだな…。俺的には丁度良い辛さだったのだけれど…」
その後3日ほど俺は常温の柔らかいものしか食べられなくなった。

御門さんからおかしな助言を聞いた日から長崎の姿を見ていない。あの日から数日は“ 一文路恢復の会”に誰一人いない日が続いたが今は他の会員たちは何人かいる。だが会長である長崎の姿だけは一度も見ていないのだ。
「あれだけ張り切っていたのに長崎は一体どうしたんだ。」
周りの会員たちに聞こえるようにそう呟いてみたことがある。しかし何故か彼らは黙ったまま目を逸らすだけだった。まるで俺が禁句を口にしたかのように。
「長崎はもうここには戻らないだろうよ」
1人がようやく口を開いてこう言った。しかし理由を問い詰めても皆黙ったままであった。これは一文路直也が見つかったに違いない。だが誰もその事を口にしないあたり会長の親友という立ち位置にいたとしても俺は格下であると判断されていたのだろう。もしくはスパイであるということがバレていたのか。
とにかくこの組織にはもはや用はない。長崎の動向を見張ることも出来なくなったのだから。しかし最後に知りたかったのは長崎と一文路の居場所である。それが分からぬままではまんまと彼らに逃げられたようなものである。長崎が一文路の復活を掲げていたということはまたあの寄生虫が飛び交うおぞましい社会に逆戻りかもしれない。いや、さらに恐ろしいことが起こる可能性だって十分にある。とにかく彼らを野放しにしていては遅かれ早かれ大惨事となるのは明らかだ。
「一滴の毒薬は既に垂らされたのかな」
「麝香…!?いつから後ろに…!」
「長崎司を自由にしたことこそが悪夢の始まりだと俺は思うな。青条は一文路先輩と混ぜたら危険、と思ってるだろうね。そうじゃあない。彼単体で猛毒さ」
「…どういうこと?長崎が一文路の後押しをするのが問題なんじゃないの?」
「きっと彼にとって一文路先輩の存在と先輩の発明品は“ 手段”でしかないよ」
「何言ってんだよ、よりによってあの人をめちゃくちゃ尊敬していた長崎がそんなことを考えるなんて…!」
「案外わからないものだよ?青条の話を聞いていると何か妙だもん」
「妙?」
「本当に一文路先輩を尊敬しているなら長崎の行動はまちがっているはずだよ」
そういえば長崎はいくらか利己的過ぎるとは思っていた。
「だとすれば長崎はあの事件で既に精神がボロボロであろう一文路直也をさらに利用しようと考えているのか」
「さすがに一文路先輩が可哀想になってきたね」
「…いや、それくらいは当然の報いさ。でも長崎を止めなきゃ。あんなに正義感が強かったあいつに何があったのか知らなきゃ」
「その正義感すら偽物だったとしても彼のことを親友だと言い続けるの?」
「…どんな奴であれ、あいつが長崎司であることには変わりないさ。俺の親友なんだよ」
「…揺らがないなぁ」
麝香は長崎が元々邪悪で利己的な人間だと決めつけているようだけれど長崎の性格が変わってしまったのは一文路の寄生虫のせいに違いない。そういえば麝香も少し考え方が攻撃的になってしまったような気がする。まさか麝香も寄生虫の影響を受けているのだろうか。
―サア、クルッテイルノハ、ダレ?―
麝香の声ではない、謎の声が何処かから聞こえてきた。ここは地上であるはずなのにその声は水の中で発したような響きであった。

計画は順調に進んでいる。この密林の中の廃屋なら何をしても誰かに嗅ぎつけられることはない。四六時中賞賛の言葉をかけ続けたおかげで一文路直也の自信も相当回復してきた。彼は日々寄生虫の改良を行っている。従来の高度な情報伝達能力を活かし全ての個体、更にはそれに寄生された人間さえも1人の主に従うシステムを作り出すのだ。
「直也さん!調子はどうですか?」
「なかなか難しいね。それにしても君は随分野心家だね」
「理研特区を支配するなんてロマンじゃないですか!?何もかも俺たちの思いのままなんですよ!?」
「はは、これを作った時の俺はそんなこと考えもしなかったなぁ」
「それにしてもここには何もないですね。あなたにお茶を汲むことすら出来ないじゃないですか」
「必要最低限、食糧生産機と研究用の機材しか持ってこなかったからね」
「やはり研究用の機材を持ってきたということはあれで終わるつもりはなかったということじゃないですか」
「そうだね。あんなことにはなってしまったが俺の大事な作品だ。メンテナンスはしてあげないと、と思ってね」
「気に病む必要はありません。醜い心を持つ大衆が悪いのです。だからこそ世の秩序のためにも彼らを支配する必要があるのです」
「それがこの作品の欠点を埋める手段だというのかい」
「ええ。あなたの作品にケチをつけるなど烏滸がましいですが…。でもむしろその欠点があったからこそそれを改良した先により素晴らしい世界が待っているのです!」
「そ、そうだね…。随分スケールが大きくなってしまったなぁ」
「そりゃあこれくらいのスケールが直也さんには相応しいですから!」
「そ、そうかなぁ…?あ、そうそう、実はポットはそこの奥にあるんだ」
「本当ですか!?じゃあお茶を汲んできますね!」
「待って、こぼれるとまずいから俺は後で飲むよ」
「そうですか、わかりました!じゃあ場所だけ確認しておきますね」
確かに目立たないところに全自動ポットがあった。水を入れてスイッチをオンにするとあっという間に湯が沸いた。茶葉を入れて少し待つ。猫舌なので濃いめに作り、水を入れて冷ます。ああ、ずっと喉がカラカラだったのだ。声を張って滑舌よく話すのは疲れる。だが俺は完璧だ。事は順調に進んでいる。“ 俺の”時代はもうすぐだ。

「ただいま。今日は作ってないですよね、劇物」
「俺的には美味いと思ったんだって!その、お前の舌を犠牲にしたのは悪かったから!」
そういえばここには全自動の食糧生産機や調理機があるにも関わらず何故この人は自分で料理なんてしていたのだろう。
「まあそんなことはどうだっていいんですよ。それより最近気になることがあって」
「気になること?…まさかアレがバレたか…!?いや、そんなはずは…」
「えっ、一体何を隠しているんですか!?…いや、問い詰めたいところだけどおそらくあなたは一切関係ないです」
「なんだ、俺は関係ないのか」
「あなたの話は後で聞かせてもらいますがとりあえずは話を進めますね。俺が気になるのは最近長崎の姿を全く見かけない、ということです」
「あの怪しげな集いにいないのか?」
「ええ。他の会員たちに聞いても皆黙りで…。何があったのでしょう」
「他の奴らは知っていてお前には教えてくれないのか」
「ええ。スパイだってバレたんでしょうかね…」
「単に信頼されてないってだけかもしれないけどな。どうせ一文路直也が見つかったんだろ」
「長崎はもう戻らないだろう、って誰かが言ってました。つまりはそういうことでいいと俺も思います。ただその後麝香が言っていたのは長崎は一文路直也を利用しようとしているということです」
「その長崎は一文路のことを崇拝に近いほど尊敬していたんじゃないのか」
「ええ。ちょっと行き過ぎたところもありましたが。まさかあいつが一文路を利用することだけを考えているとは思えませんね」
「こりゃ剣崎みたいなやつかもしれないな」
「けんざき…さん?誰ですかそれ」
「昔の知り合いさ。自らの欲望のためなら王族の暗殺も企てる男だぜ」
「そんな人と長崎が似ていると言うのですか?」
「人あたりが良い奴ほど怪しいってもんだぜ」
「疑い過ぎじゃないですか…?それとも旅人のカンってやつ?」
「どーだか。だって一文路のことを尊敬している割にあいつのこと人として扱ってないようじゃないか。あれだけボロボロの一文路のことをまだこき使うつもりなのかとしか言えない」
そういえば麝香もそんなようなことを言っていた。
「一文路はほっといて欲しいと思っているのでしょうか」
「まああんなことがあれば誰だってそうなるだろう。威信の回復なんて余計なお世話ってところだ。長崎と一文路が裏で通じていたなら話は別だが」
「それはないでしょう。あれほど一文路の居場所を探していたのですから。それも演技だと言うならむしろ面白いですが」
「さすがにそれはないだろう。黒幕は長崎で決まりだ」
「いや、長崎が寄生虫の影響を受けている可能性も…」
「無くはないが…。そもそも寄生された人間ってそこまで理性を保てるのか?長崎は冷静ではあるだろう」
言われてみれば一文路を尊敬しているそうなふりをする、といった打算的なことができるようであるので長崎は至って正気なのかもしれない(彼の考え自体はイカれているが)。確かに寄生された人間は理性を保ててはいなかった。長崎よりずっと頭が馬鹿になっていた。

「ただいま。最近物騒でさ。今日も帰りに暴れ出す人を見かけて…」
「…兄さん?」
「兄さんなのね!今までどこへ行っていたの!?勝手に出ていくなんてひどい!ひどいわ!!」
甲高い声を上げていきなり俺を抱きしめたのは妹ではない。こんな大きな妹がいた覚えはないし、そもそも俺は一人っ子である。
「母さん…?何を言っているの?伯父さんは俺が生まれる前に亡くなったはずだよね」
「もうどこにも行かないのよね!?ずっとここにいてちょうだい!」
「いや、だから…」
よく見ると母さんの目は焦点が合っていなかった。俺が困惑していると母さんは不気味な微笑みを浮かべた。
「ああ、息子と夫が邪魔だって?…そうねぇ。確かに兄さんの言う通りだわ。息子はまだ学校に行っているけど…夫なら2階にいるわ。黙らせに行きましょうか」
大変なことになっている。この女より先に2階へ急がねば。俺は女の腕を振り払って階段を駆け上った。
2階へ上がると廊下にまで強いアルコールの臭いが広がっていた。臭いの元を辿ると父親の部屋に行き着いた。嫌な予感がしたが恐る恐る部屋の中を覗くとそこには大量の酒瓶が転がり、酔い潰れた男が眠っていた。父親は普段家では酒を飲まない人間だ。外で飲んでも酷く酔って帰ってくるようなことは無い。何が起きているか理解できなかった。
俺は荷物をまとめて家を出た。宛はないが明日がないよりはマシだった。

「どうした?」
「あ、いえ…。やはり長崎は自分の意思で、とても冷静に行動しているな、と」
「やっぱりな。お前は長崎が正義感のある人物だと思っていたようだったが奴の本性はそれだ。…災難だったな」
「ああ、麝香も同じことを言ってましたよ…。信じたくはなかったけど…」
だがかつて俺が見てきた長崎は確かに良い奴だったはずなのだ。研究に熱中する姿はかっこいいし、友達の少ない俺にも親しくしてくれた。リーダーシップもあり、真っ直ぐで…。直接彼を知らない白城先輩はまだしも、いつも一緒にいた麝香まで長崎を疑っていたとは思えなかった。俺は人付き合いを知らないせいでそういうことに鈍感なのかもしれない。俺は人を疑うのが苦手なのか。いや、1度信じた人を疑うのが苦手なのかもしれない。
―…ソウ、ナラ、メノマエニイルカレノコトモ、ウタガウベキジャナイ?―
また水の音がした。一体誰の声なのだ。俺の思考に合わせて話しかけるんじゃない。
―ハクジョウ、ハ、シンヨウデキルノ?キミハダレヲ、シンジルノ?―
今日はよく喋る。
―タダシイノハ、ジブンダケダ―
水の音が止んだ。寒気がする。これは俺自身の声なのか…?
「俺は…あなたを信用してもいいのか…?」
先輩はキョトンとしている。
「何もかも裏返っていく。何もかも俺が知らないものになっていく。日常が、常識が、離れていく。俺は…どうすれば…!?」
先輩は俺の腕を掴み、真っ直ぐこちらを見てきた。
「俺がお前の絶対的な味方であるとは言わない。だが俺は決して変わらない。俺は何も変わらない。変われない。…変わるのは俺に対するお前の認識、といったところだろうな」
俺を掴んだ手は体温がないのではないかと思うほど冷たく、決して心地よいものではなかった。俺を見つめた赤い瞳も作り物のように澄んでいた。だがむしろ、それらから感じられる不変さは俺を安心させた。
「ああ、そういえばさっきの、俺に隠していることってなんだったんですか?」
「やっぱりそこ突っ込んじゃう?」
「気になりますから」
「あえて派手にしただけで大したことじゃあない。偶然御門に会ったんだ」
「御門さんに?…切り刻まれませんでしたか!?」
「この通り無事だよ」
先輩は手をヒラヒラさせる。さすがに御門さんも初対面の、寄生虫の影響を受けていない人間に対しては普通に対応するようだ。
「一体何の話をしていたんですか?」
「なんだよ、俺が女子高生と何を話したか気になるのかよ。羨ましいのか?クラスメイトだろ?」
「なんでそんなおじさんみたいな言い方するんですか…。というかそもそも俺は女子が苦手だし興味もないですよ。いや、正直御門さんはそのへんの女子とはなんか違うけど…」
「なんだ奇遇だな。俺も人生の中で女と関わることが少なすぎて扱いが分からんし興味も湧かなくなった」
「旅人なのに?」
「旅は関係ないぞ」
「でも確かに先輩、恋愛とか縁がなさそう。あ、馬鹿にしているわけじゃなくて…!」
「別に笑っていただいても構わんが。で、どういうわけか何を話したか気になるんだったな。と言っても大したことは話していないぞ」
「はあ」
「最初声掛けた時はめちゃくちゃ警戒されたなあ。お前の知り合いとわかった途端何故かお前に偵察を頼まれたのか、と聞かれた。セキュリティが過ぎるぜ」
「様子が容易に想像出来る…」
「あと切るなら八つ裂きじゃなくて三枚おろしがいいって言っておいた」
「えっ、どういうこと?」
「文字通りのことだよ」
「いや、確かに御門さんは八つ裂きにするとか脅し文句で使いそうだけど…。というよりなんでそれに対して三枚おろしを希望してるんですか!?」
「だってその方が美しいだろ」
「あなたの美的感覚は知りませんよ!」
「ふふ、ふはははは…!」
「え、何笑ってるんですか…」
「いや真面目にツッコミを入れる様が面白くて…」
「そんなに面白いもんですかね…」
「ああ、ここに来てからあまり人と関わってないからなぁ。ホルニはつまらないやつだし」
「そっか…あなたも…」
「ん?俺がどうした」
「いえ…」
忘れてはいけない、彼は旅人である。きっと孤独には慣れているのだろう。と言っても俺自身も何も兎のように誰かがいないと死ぬほどの寂しがり屋ではない。どちらかと言うと人とは群れないタイプだ。家と友を奪われるまではそうだった。その反動は自分に似た者を強く求める。この人がそうであって欲しいと望む。だがそれは“ この人だから”そうであって欲しいのではなく、そうである者がすぐ目の前に既に存在しているという安心感が欲しいだけなのだろう。ああ、自分の気持ちさえわからない。

 「蝉の声がやかましいですね」
俺は意味不明な発言をした。だって季節はもう秋である。
「今年は随分と夏が長いんだね。いや、俺の時間感覚が狂っているのかな」
「少しお休みになれば良いものを…」
「いいや、早く完成させたいんだ。これは君の望みでもあり俺の望みでもある」
「ああ、あなたはなんて真面目な人なんだ…!本当はお体に気をつけて欲しいとも思うがあなたの意志を邪魔するなどあってはならない…。俺はどうすればいいのでしょうか…!」
「その気持ちだけで嬉しいよ。ほら、君の応援のおかげでもうじき完成だよ」
「すごいです…!」
ああ、すごいすごい。すごく都合が良い。俺にとって大事なのは完成であってこいつの体調ではないからだ。
「少し集中したいから席を外してくれないかい。外でも散歩してくれれば戻ってくる頃には完成しているかも」
「ああ、これはこれはお邪魔して申し訳ありません!ここは涼しいので夏でも散歩がしやすいですし、蝉でも観察して来ますね!」
というわけで、外を散歩してみる。確かにもう蝉はいなかった。まだまだ暑さは残るが涼しい風が吹くようになった。あの小屋の中にいれば変化から絶たれる。だが一歩外に出ればこんなにも季節の移り変わりが感じられる。一文路直也と会った時と比べると見かける昆虫や植物の種類にも変化があった。アオスジアゲハが横切った。だがこの蝶だってあと1ヶ月もすれば姿を消すだろう。

さて、それなりに散歩を楽しんでいたようだ。長崎はようやく帰ってきた。ちょうど例のものが完成したところだ。
「随分歩いてたね。そうそう、なんと完成したよ!」
「本当ですか!?ああ、さすが直也さん…!早速その力を見てみたいのですが、どうすれば…?」
俺は奥の棚からごつい機械を取り出した。これが重要な機械である。長崎は目を輝かせながらも不思議そうな目でこの機械を見つめている。
「これを頭にセットしてエンターキーを押す。すると同期が始まるんだ。これを装着している間はコンピューターが脳波を読み取って寄生虫たちに指示が出せる仕組みだ」
「なるほど…!さすが直也さん!ささ、運命の瞬間ですよ…!」
長崎の声は興奮で震えているようだった。せかせかと俺の後ろに回り込みパソコンの画面が見えるような位置に移動しているようだ。俺が機械に手を伸ばした瞬間、後頭部に強烈な痛みを感じ俺はそのまま意識を失った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

青条真琴

科学者の国理研特区に住む少年。平凡でコミュ障、気が弱い。突如現れた人間の理性を奪う人工寄生虫に生活をめちゃくちゃにされ1年間引きこもっていたが、外に出て戦う決意をする。

御門智華

青条とは別行動で寄生虫と戦う少女。冷徹で感情がなく機械のような人物だが幼馴染の杉谷瑞希のことを崇拝しており彼を死に追いやった全てに復讐するために動く。

白城千

『千年放浪記』シリーズの主人公である不老不死の旅人。人間嫌いの皮肉屋だがなんだかんだで旅先の人に手を貸している。

杉谷瑞希

科学者の国理研特区の高校生。学生ながら本部の研究者たちと研究をするエリートだったが突如自殺した。

一文路直也

瑞希の唯一の親友。大財閥の御曹司だが自身はむしろ普通の人として生きたいと思っている。寄生虫を作り出した張本人だが罪悪感と責任から逃れるため失踪した。

長崎司

青条の友人。社交的で正義感溢れる人物だと言われており、尊敬する一文路直也を復活させるために動いている。組織や革命が好きな厨二病。

麝香憲嗣

青条の友人。不気味で掴みどころのない人物。かつて水難事故で最愛の妹を亡くしてからキメラを生み出すマッドマックスになった。情報通で表に出ていない研究にも詳しい。

Hornisse=Zacharias

ヴァッフェル王国から留学してきた王子。振る舞いは紳士的だが、どうやらただの留学目的で訪れたわけではないようで…?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み