第7話 子供だまし
文字数 1,369文字
子供だまし
情報を得るため俺は本心を隠しつつ“一文路恢復の会”に通いつめていた。会員にはならないまでも校内ではすっかり一文路直也や長崎を支持する生徒が増えた。一方で俺のように反対派も少数いるようだ。麝香もそのうちの1人らしい。
「青条!俺の見間違いならいいんだけど、昨日長崎が立ち上げた組織に出入りしてなかった…?」
「え…、麝香見てたの?確かに昨日もあそこに行ったけど…」
「嘘…嘘だよね…?そんなこと…」
麝香は目を見開き俺の肩に手を伸ばした。
「触るなっ!」
白城先輩との話を思い出し俺は咄嗟にそれを躱した。だが俺の言動は予想外の展開を招いた。
「青条…?どうして…?俺のこと嫌いになったの…?」
「あ、いや、その…そうじゃなくて…」
麝香は恐ろしく、そして寂しそうな顔で俺をましまじと見つめ俺の肩を強く掴んだ。
「長崎に何か言われたんだね!?俺は一文路先輩を支持しないから敵なんでしょ!?やはり3人揃って親友なんて間違ってた!あいつは…!」
俺は麝香の言葉に圧倒されたがすぐある異変に気付いた。
「麝香っ、お前なんで俺に触れても平気なんだ…!?」
「え、どういうこと?」
おかしい。麝香は何ともなさそうだ。麝香が特殊なのかそれとも…。
「…青条までおかしくなっちゃったんだね。いいよ、俺のことは気にしないで…」
「えっ、ちょっ、おい待てよ麝香!」
だが麝香は逃げるように俺のもとを去ってしまった。麝香のことも気がかりだったが何よりも俺は…
「…嘘だったんですね」
学校から帰ってきた青条は俺にとてつもない怒りがこもった目を向けてきた。どうやらボロが出たようだった。
「なんだ、帰るなり“ただいま”も言わずに」
「はぐらかさないで下さい。先輩が魔術を使えるなんてのも全部嘘なんでしょう。確かに書物などでは魔術や妖術が存在しているなんて情報もありましたが若市なんて辺境の地、確かな情報を持つ人なんているはずも無かったんだ…」
「俺は若市に関して確かな情報を持ってるぜ?」
「その若市人が嘘をついたら意味無いでしょう」
青条は疑いの目を向けてきたが俺はニセ魔法使いではないことを示すため小さい炎を出して見せた。
「ほら、ちょっとした魔術ができるのは嘘じゃないぜ?」
「そういう問題じゃないでしょう。なら麝香の方がおかしいとでも言うのですか。彼は普通に俺の肩に触れることができた」
「あっちゃー。やっぱそういう事態は避けられないか」
「ちゃんと説明して下さい」
「お前の言う通り俺はお前に嘘をついていた。見ての通り俺が炎を操れるのは本当だがバリアなんて最初から無かったんだよ。いやぁ、もう少し騙せると思ったんだけどなぁ」
「何故そんなことをしたんですか!?」
「おお、こわいこわい。そんなに怒るなよ。現にお前は寄生虫の被害に遭っていないじゃないか」
「…確かに」
「言っただろう、ホルニッセみたいに自身の精神力でなんとかできちゃうやつもいるって。バリアがあるという安心感だけでお前は寄生虫に勝っていたんだよ」
「そんな…」
「まあでも蝶がいればもう大丈夫だろ。寄生虫が近付けば美味しくいただいてくれる」
「確かにそうですけど」
…これでまず早々に一つ目の嘘を暴かれてしまったわけだ。だが二つ目はそう簡単にいかないだろうしそれこそ知られてはまずいことだ。互いのためにも何としてでもこの秘密だけは守らねばならない。
情報を得るため俺は本心を隠しつつ“一文路恢復の会”に通いつめていた。会員にはならないまでも校内ではすっかり一文路直也や長崎を支持する生徒が増えた。一方で俺のように反対派も少数いるようだ。麝香もそのうちの1人らしい。
「青条!俺の見間違いならいいんだけど、昨日長崎が立ち上げた組織に出入りしてなかった…?」
「え…、麝香見てたの?確かに昨日もあそこに行ったけど…」
「嘘…嘘だよね…?そんなこと…」
麝香は目を見開き俺の肩に手を伸ばした。
「触るなっ!」
白城先輩との話を思い出し俺は咄嗟にそれを躱した。だが俺の言動は予想外の展開を招いた。
「青条…?どうして…?俺のこと嫌いになったの…?」
「あ、いや、その…そうじゃなくて…」
麝香は恐ろしく、そして寂しそうな顔で俺をましまじと見つめ俺の肩を強く掴んだ。
「長崎に何か言われたんだね!?俺は一文路先輩を支持しないから敵なんでしょ!?やはり3人揃って親友なんて間違ってた!あいつは…!」
俺は麝香の言葉に圧倒されたがすぐある異変に気付いた。
「麝香っ、お前なんで俺に触れても平気なんだ…!?」
「え、どういうこと?」
おかしい。麝香は何ともなさそうだ。麝香が特殊なのかそれとも…。
「…青条までおかしくなっちゃったんだね。いいよ、俺のことは気にしないで…」
「えっ、ちょっ、おい待てよ麝香!」
だが麝香は逃げるように俺のもとを去ってしまった。麝香のことも気がかりだったが何よりも俺は…
「…嘘だったんですね」
学校から帰ってきた青条は俺にとてつもない怒りがこもった目を向けてきた。どうやらボロが出たようだった。
「なんだ、帰るなり“ただいま”も言わずに」
「はぐらかさないで下さい。先輩が魔術を使えるなんてのも全部嘘なんでしょう。確かに書物などでは魔術や妖術が存在しているなんて情報もありましたが若市なんて辺境の地、確かな情報を持つ人なんているはずも無かったんだ…」
「俺は若市に関して確かな情報を持ってるぜ?」
「その若市人が嘘をついたら意味無いでしょう」
青条は疑いの目を向けてきたが俺はニセ魔法使いではないことを示すため小さい炎を出して見せた。
「ほら、ちょっとした魔術ができるのは嘘じゃないぜ?」
「そういう問題じゃないでしょう。なら麝香の方がおかしいとでも言うのですか。彼は普通に俺の肩に触れることができた」
「あっちゃー。やっぱそういう事態は避けられないか」
「ちゃんと説明して下さい」
「お前の言う通り俺はお前に嘘をついていた。見ての通り俺が炎を操れるのは本当だがバリアなんて最初から無かったんだよ。いやぁ、もう少し騙せると思ったんだけどなぁ」
「何故そんなことをしたんですか!?」
「おお、こわいこわい。そんなに怒るなよ。現にお前は寄生虫の被害に遭っていないじゃないか」
「…確かに」
「言っただろう、ホルニッセみたいに自身の精神力でなんとかできちゃうやつもいるって。バリアがあるという安心感だけでお前は寄生虫に勝っていたんだよ」
「そんな…」
「まあでも蝶がいればもう大丈夫だろ。寄生虫が近付けば美味しくいただいてくれる」
「確かにそうですけど」
…これでまず早々に一つ目の嘘を暴かれてしまったわけだ。だが二つ目はそう簡単にいかないだろうしそれこそ知られてはまずいことだ。互いのためにも何としてでもこの秘密だけは守らねばならない。