第1話
文字数 719文字
④【葛藤】×【世話好き】
世話好きというのはこういう男のことを言うのだろう。私は目の前で自分のではない課題の手伝いをしている男を見ながらそう思った。
「うんうん、それでええと思う」
どうやら話はまとまったらしい。
件の男はにこやかに別れを告げてようやく自分の課題に取り掛かり始めた。この男、山下譲(やましたゆずる)は名前の通り自分のことを後回しにして他者のことを優先するのだ。
しかもそれを美徳にしている訳でなく、自然とそうしているようだ。
よく出来た人間だと思うし、自分なら真似は出来ない。
うんうんと一人でに頷いていると山下がちらりとこちらを見ていた。
「なんや」
視線に気づきそう言えば山下はモジモジとしながら言葉を紡ぎ始める。
「付き合ってくれてありがとなあ。キミ、ほんま世話好きやんな」
「世話好きなのは自分やろ、今も自分の課題後回しにして相手してやっとったやないか」
まさかの山下の口から世話好きという言葉が出てくるとは思わず面食らってしまう。
「そうやなくて、菊池くん僕だけに世話好きやなあて」
ふにゃふにゃと笑いながら山下がそう言うのだ。そう言われてしまうとそうな気がしてきた。コイツの課題が終わるまで待つ気で居たし、分からない所は教えようとしていた。もしかして自分こそが世話好きなのか? と葛藤する。
「帰る」
「あー待って待って帰らんとってや。もう少しで終わるから」
鞄を持って立ち上がった自分を山下が行き先を塞ぐ。
「なあお願い」
頼むわあと言葉を告げたした山下が片目を瞑ってお願いしてくる。
「しゃあないな」
これはお願いされたからで自分が世話好きな訳では無い、とブツブツと呟きながら椅子に座り直すと山下の課題が終わるのを待つのだった。
世話好きというのはこういう男のことを言うのだろう。私は目の前で自分のではない課題の手伝いをしている男を見ながらそう思った。
「うんうん、それでええと思う」
どうやら話はまとまったらしい。
件の男はにこやかに別れを告げてようやく自分の課題に取り掛かり始めた。この男、山下譲(やましたゆずる)は名前の通り自分のことを後回しにして他者のことを優先するのだ。
しかもそれを美徳にしている訳でなく、自然とそうしているようだ。
よく出来た人間だと思うし、自分なら真似は出来ない。
うんうんと一人でに頷いていると山下がちらりとこちらを見ていた。
「なんや」
視線に気づきそう言えば山下はモジモジとしながら言葉を紡ぎ始める。
「付き合ってくれてありがとなあ。キミ、ほんま世話好きやんな」
「世話好きなのは自分やろ、今も自分の課題後回しにして相手してやっとったやないか」
まさかの山下の口から世話好きという言葉が出てくるとは思わず面食らってしまう。
「そうやなくて、菊池くん僕だけに世話好きやなあて」
ふにゃふにゃと笑いながら山下がそう言うのだ。そう言われてしまうとそうな気がしてきた。コイツの課題が終わるまで待つ気で居たし、分からない所は教えようとしていた。もしかして自分こそが世話好きなのか? と葛藤する。
「帰る」
「あー待って待って帰らんとってや。もう少しで終わるから」
鞄を持って立ち上がった自分を山下が行き先を塞ぐ。
「なあお願い」
頼むわあと言葉を告げたした山下が片目を瞑ってお願いしてくる。
「しゃあないな」
これはお願いされたからで自分が世話好きな訳では無い、とブツブツと呟きながら椅子に座り直すと山下の課題が終わるのを待つのだった。