第13話 小喧嘩

文字数 952文字

 今日も夫の天邪鬼な物言いに、腹を立ててしまいました。

 定年後の家計のやりくりは、誰もが気になるところ。ウチの場合、夫が働いているときから夫が管理している。思えば遠い昔の結婚2年目辺り。まだまだ新米主婦だった私は上の子を出産して、てんてこ舞いな毎日を送っていた。育児もやって、家事もやって……自分なりに頑張っていたつもりだったが、夫の目にはそう見えなかったみたいだ。

「今月、子どもの〇〇買ったから、生活費が足りなくなった」

と申告。

「ええっ?何に使ったの?」

と驚かれ、あれやこれと言い訳のように出費の内訳を言った。出産後は何かと物入りだった。だが今思えばそれ以外、例えば食費は金をかけ過ぎていたかもとも思う。そんな反省の弁は口が裂けても言わないが。それでも出産当初は、私の言うままに家計が回っていた。そう、夫から見れば湯水のようにジャブジャブと金を使って……あるとき

「1ヶ月〇万円でやって」

 この突然の申し出から今日に至るまで、ずっと夫が家計の実権を握っている。実家の家計は専業主婦の母が握っていた。父が給料袋をそのまま母に渡すのを何度も見た。そんな家庭で育った私に違和感が無かったと言えば嘘になる。働いていなかった私は反論の余地が無かった。夫が示した額は、夫の同僚家族を参考にしたもの。出来ないはずはないと言われた。

 夫から言わせれば、ドンブリ勘定のように家計を回していた私だったが、家計簿はつけていた。レシートまで貼って。夫主導になってからもレシートだけは証拠として貼っていた。だがその行為は夫にとって何の意味もなく、つけていた家計簿も

「 こんなんじゃ分からん」

と、まともに見てくれなかった。

 コレは今の私たちが会話を無くした、きっかけの1つとも言える。それでも当時はぶつかりながらも、会話はあった。

 複雑な思いを胸に、家計の全面降伏をして早数十年。家計簿はつけてないが、生活費を越えることはない。そんな習慣を分かっているはずなのに

「どれだけ使っているか見せてよ」

と思い出したように今朝、喧嘩を売られた。老後の生活に不安を覚えてきたのかもしれない。私の知ったことか。アンタの采配で生活しているんだから、使い方くらい好きにさせてよと心で叫んだ。

「アンタの資産開示が先じゃないの〜?」と言ってみようかなぁ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み