第2話 わからない

文字数 496文字

「こっちです!」

複数の足音と雑貨店の店主の声。


6畳一間のアパートは人で埋まり
戸口にいた私は廊下に追い出されるように出た。

そのうち、警察官の男性の一人が私を抱き寄せた。
私は…

頭の中で
警察官の気持ちを察して
泣いた。

しかし同時に
母が亡くなった事に泣いていない自分に戸惑い、
混乱し、訳がわからない!!

部屋の中だけでなく、廊下にまで人が溢れ、
誰が誰かもわからないまま
大人の男の人が私に聞いた。

「今日は誰のところに居たい?」


誰?
誰のところに…?

おじちゃん…?
いや、ダメだ。
誰って…誰もいない…けど…

怖いと有名な担任は
歯に衣を着せない感じが
ほんの少し母の気質に似てる気がして
とっさに担任の名前を伝えた。

その後どうやって担任の家に着いたのか
覚えていない。

夫婦で寝ているベッドに案内され、
152cmあった私に先生は、クリーム色の寝間着を貸してくれた。
慣れない匂い。
はじめて知った先生の匂い。


明日から
私はどうなるのか。

目をつむると
昨夜、夜中に台所に立ってた母を思い出した。
普段着ない浴衣を着ていたのに
「おかあちゃん、何しとんの?」
声かけたけど、無言だった。振り向きもしなかった。
あれが生きてる母を見た最後だった。









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