第1話 母の死

文字数 384文字

おじちゃん!
おかあちゃん起きへん。
死んどう、死んどう!

雑貨店の店主は驚いて

あんた!はよう、救急車呼ばな!


あかん、もう死んどう、死んどうねん…


赤電話を切って店の裏のアパートに戻り、
部屋のドア口に座り込んだ。

部屋に充満する血の臭い。

起きた時は気が付かなかった。

朝方近く、
一緒に寝てた万年床の敷布団が濡れたのを感じ、
もう、お母ちゃん、おねしょした…?
布団どこに干そうか…?
うつらうつら考えながらまた眠ってしまった。


ハッと、8時過ぎの時計が目に入り飛び起きた。

お母ちゃん、学校遅れる、お母ちゃん!
揺り起こすと同時に
洗面器の中から溢れてる真っ赤な液体…

腰が抜けそうになりながら、小銭だけ持って表通りの店に飛び込んだ。

電話の相手はおじちゃんと呼んでいたが、
遺伝子上の父。

団地に住んでいた2歳の頃、
お父ちゃんと呼ばず、おじちゃんと呼ぶように母に言われた。


戸籍上、父の名前はなかった。

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