第5話 里子として

文字数 639文字

新聞を読んで、母は両手首を切って失血死だったよう。

私に同情したご夫婦が、養女前提で引取を希望した。

喫茶店で里母予定の人と、両ひじから先を失った担当職員との面会がセッティングされた。

話す事なんてほぼ無く、良いも嫌もなく、
恐らくコレを断れば、児童相談所なりに私は行くのだろうとは思った。

数回母の入院時に児童相談所にはお世話になった事がある。いつも流行り病にかかり、個室生活だったが、好きに出入りが出来ず、子供同志のいざこざもあるので、望んで行こうとは思わない。

「ウチに来る?」と里母予定の人に聞かれ、私は頷いた。

アパートの荷物から里親宅へ持っていくものの選別をした。

母が撮り溜めた私のアルバム。洋服。そして、お兄ちゃんの仏壇。ここに母も一緒になってる。

母の遺骨は兄と同じ骨仏にしてもらった。
おじちゃんにそれを頼み、一緒にお寺へ行った。

恐らく生物学上の父ともコレが最後になった。

荷物は選別して最小限にする様に言われ、後は預かってくれるとの事だった。

その中で、仏壇は持って行くなと言われた。
母も入ってる仏壇は、自分が守らなきゃいけない、そして、母との別れをモノに変えられるわけでもなかったが、手放したくなかった。
だから、どうしても持っていきたいと職員にお願いをした。
 
これから行く里親宅がどういうところか
わからない。

何を期待されているのかとか、
どういうつもりで養女を迎えたいのか、
大人のような思考が無いだけ、
期待も不安もなかった。
行ってみないとわからないしと。
その思考だけが幸いだった。
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