第12話 最凶マッドブロブ
文字数 4,200文字
黒の大地を目指して旅をしていた。その時、街道沿いの森林をフラフラと眠そうな女性の竜人が歩いていた。赤いボサボサの髪をしている。
「眠そうだけど、大丈夫?」と一応、声を掛けてみた。
「・・・」
その女性からの返事はない。
(聞こえてなかったのかな?)
気にしないで旅を続けようと思ったら、その女性は小声で「なんだ猫ちゃんか?」とこちらに向かってやってきた。
(なんか覇気の無い、眠そうな女性だな、声をかけなかった方がよかったかな?)
「猫ちゃん見つけた。こんな所で何をしてるの?」
その女性は小声で聞いてきた。
「私の名前はオテロ。ここにいる仲間と旅をしているんだ」
「私の名前はマロニィ。マッドブロブという魔物のせいで住む家を失ってしまって・・・」
「その魔物はまだこの辺りにいるの?」
「いるかどうかは判らない? でも、瘴気で弱らせてから人や家畜を取り込むから、人や家畜の集まる所は危ないかも・・・」
(狙われる可能性があるのか)
幸いにもマッドブロブとは遭遇してなかった。
(運が良かったのだな)
聞き耳をたてていた、アディは警戒した。
「マッドブロブと遭遇するのは、よくないわね。私の知っている情報では、国、地域を越えて討伐隊を編成して対応せざるを得ない魔物なの。普段は国、地域で争っているくせにね。それだけ脅威ということよ。取り込んだら、取り込んだだけ大きくなるなんて生態系を乱す化け物ね」
マロニィは仲間が欲しかったのかもしれない。
「私も一緒に旅しちゃダメかな」
アディはしばらく考え込んだ。
「どうしよう」
結局、相談してきた。
(うーん?)
考えて答えた。
「旅の仲間は一人でも多い方がいいんじゃないかな?」
「うーん。じゃー、一緒についてきて」
マロニィを仲間に加えた。
(足手まといにならないといいな)
その時は、そう思っていた。彼女の強さを全然知らなかった。もちろん、他のメンバーも・・・。
(この気だるさそうな姿を見ていれば、誰もがそう思うよね)
気を取り直して、コロシアムへ向かうため先を急いだ。
その時、鳥が飛び立ち、獣は我先に逃げ出して、我々の前を通りすぎて行った。
(なんだ、なんだ)
「気をつけて、奴が現れたかも」
マロニィが皆に言った。
黒い瘴気がモヤモヤと立ち込めてきたかと思ったら、巨大な影が見えた。噂のマッドブロブが現れたようだ。身体の真ん中に、桃色の核が見える。丸まった大きなアゴ。紫色の身体。取り込んだ岩や木を背中に張りつけている。まるで鎧。背中からの攻撃は、無駄かもしれない。
我々が、次の標的にされたのだ。どうやら、戦うしか生き延びるすべは無い。今、命懸けの死闘が幕を開ける。
マッドブロブは我々を取りこもうと迫って来ていた。そんな中、運悪く悪魔達が大群で現れた。絶体絶命。死を覚悟した。前方にマッドブロブ。後方に悪魔達。
(マッドブロブだけでも大変なのに、よりによってこんな時に・・・)
両方の相手は無理だと思っていた。そんな中、悪魔達のボスが先頭に現れ、攻撃するように命令を下した。漆黒の翼を持つ悪魔。上級悪魔だと直ぐに分かった。
(やれるだけやってやるさ)
悪魔達は我々ではなく、素通りしてマッドブロブに襲いかかった。眼中に無いみたいだった。
(どうなっているの?)
「あらあら、あなたたち生きてたのねぇ。化け物相手にねぇ。ふーん」
悪魔達のボスが上から見下している。その姿を見て興奮するレグス。
「てめぇは、七罪のサタン。このイカサマ野郎!」
「あらっ、みた顔がいると思ったら、あの時の負け犬ねぇ」
「イカサマで勝っただけじゃねぇか」
「それを気付かないで、最後までギャンブルをしたあなたが悪いのよ。気づいた時点で止めるべきだったわねぇ」
「てめぇ!」
激昂していたが、サタンは相手にしていない。
「そんな昔のことより、今はマッドブロブを何とかしなくっちゃ。この世界がメチャクチャになるわぁ」
レグスを無視して、悪魔達の指揮をとっていた。
「くそっ、後で覚えてろよっ!」
レグスは怒っていたが、マッドブロブの方を先に片付けることを選択した。
マッドブロブは強い。全然倒れる気配がない。レグス、アムルガルが本気で戦っているのにも関わらず・・・苦戦中。瘴気に取り込まれてしまえば命を落とすかもしれないのだ。戦い方が慎重になる。体力は無限ではない。誰もがそれなりに疲労している。マッドブロブは雑魚悪魔達を取り込み、吸収している。ドンドン大きくなって、手に負えなくなってきた。
「ちょっとマズイわねぇ。こんなのどうしたらいいのかしら・・・」
攻撃のタイミングを失くしていた。この世界で幸運の女神は、私の側にいた。そう感じていた。その女神は、この場面に天使を遣わした。
「化け物め、宿魔の剣を受けてみよ」
声がした。それと同時に剣圧が飛んできた。
聞き覚えのある声。その方向を見ると天軍の将ゼルエルがいた。彼女は、そのままマッドブロブへ突撃して行った。
マッドブロブは反撃を試みていたが、上空からの剣圧と突撃に参っている。その戦う姿は、美しい蝶が舞っているかのよう。視線を完全に奪われていた。
「あの天使の小娘、なかなかやるわねぇ」
いつの間にかサタンが側に来ていた。
(ドキッ)
気配を感じなかった。
(これが七罪の魔王。敵として戦場で出会っていたなら死んでいたな)
それを気づかれないようにしていた。
膠着状態となった戦場。どちらも手が出せない。
(・・・ひょっとしたら)
あることを閃いた。化け物に勝てる可能性を見つけた。
「黒の大地に押し戻せば勝機があるかも・・・」
「何か作戦があるみたいねぇ。いいわ、言ってみなさい。特別に聞いてあげる」
「白の大地ではドンドン吸収して大きくなるから、黒の大地で補給線を絶ったらどうかな? そうすれば大きくなることを防げて、体力も無限じゃ無くなるかもしれないよ」
「なかなか面白い発想ねぇ。いいわ、今はそれしかないみたい。仕方がないわねぇ。私が囮になって引き寄せるから黒の大地で仕留めるわよ」
サタンがおとり役、黒の大地で奴を仕留める作戦。
仲間とゼルエルに伝えようとした。ゼルエルがこちらに向かってやってくる。背後から触手がゼルエルめがけてのびる。全く気づいていない。
(危ない)
そう思った時、森の中から矢が飛んで、触手を撃ち抜いた。触手の先がボトッと落ちる。
「森の平和をみだす奴は、この俺がゆるさん!」
よく見るとウルの姿がそこにあった。
「オテロ、久しぶりだな」
ウルが側にきた。
「助かったよ。ありがとう」
「こんな、化け物と戦っているとはな、驚いた。旅先で仲間ができたのだな。会えてよかったよ」
「ウルも元気でよかったよ。黒の大地で奴を討伐するのを手伝ってくれないかな」
「分かった。一緒に戦おう。この森を守ることになるのだからな。当然だ」
ここにきての助っ人は非常にありがたかった。
マッドブロブを黒の大地に誘うべく、興味を引くようにサタンの援護をしていた。
ここまではマッドブロブに気づかれていない。順調に作戦が進行している。サタンが選んだ決戦の場所は白の大地と黒の大地の境界線の辺りにある開けた土地だ。
マッドブロブは怒っているのか、進む速度を上げ、魔の軍勢を取り込もうとしていた。
(よし、決戦だ)
サタンの選んだ戦場に着いた。
「ここまでご苦労さま。ここがあなたの墓場よ」
魔の軍勢に突撃の指令。
我々とゼルエル、ウルは魔の軍勢の隙間をぬって、攻撃をしていた。
マッドブロブは補給線を絶たれて、目の前の獲物を吸収することしかできない。移動にも体力を消費する様子。
「今だ」
「今ねぇ」
ゼルエルとサタンが、ほぼ同時に突撃してマッドブロブに大ダメージを与えた。そこにウルが渾身の矢を放つ。
マッドブロブが大きく体勢を崩した。
(やったぞ)
それを待っていた女性がいた。マロニィが闘気を鞭のように放った一撃。マッドブロブを真っ二つにした。予期しない一撃だった。
(普段は気だるそうな姿なのに・・・)
人は見かけによらないと言うことか? あの時、マロニィが偶然にも「旅の仲間になりたい」と言った時、適当なことを言ってしまった。私はダメな人間だ。見る目を改めることにした。・・・反省。
(やっと終わった)
安堵と達成感に、ひたっていた。
「ありがとう。これで森の仲間達の仇がとれた」
小声でしゃべるマロニィ。顔が一瞬、笑顔になるのが見えた。
その後、しばらくしてサタンが側に寄ってきた。
「オテロ、あなたの作戦通りだったわねぇ。この世界の危機は、ひとまず去ったかしら。・・・ところでオテロ。あなた、魔族の仲間になるつもりはないかしら? あなたほどの実力なら直ぐに七罪の一角となれるわよぅ。ルシファーちゃんも喜んであなたを迎えるでしょうねぇ。『魔の大軍師オテロ』なんて二つ名で呼んでくれるかもよ。どうかしら?」
サタンが私を突然、スカウトしてきた。
「貴様」
ゼルエルはサタンの鼻先に剣を突き出した。
「ケンカっぱやい小娘ねぇ。やだわぁ」
微動だにしなかった。剣がそこで止まることをあらかじめ分かっていた様子。
「オテロが魔の軍勢に入る訳が無いだろう」
ゼルエルは興奮している。
「あらっ、そんなことはないわよぅ。オテロ、次第かしら?」
不敵な笑みを浮かべていた。
「・・・だとしても、オテロは貴様らには渡さん」
剣を真横に振った。するとサタンは飛び上がり、剣圧をかわした。
「今日は疲れたから、これくらいにしといてあげるわぁ。ルシファーちゃんに報告しないといけないからねぇ。また改めてスカウトにくるわぁ。じゃーね、魔の大軍師さん」
魔の軍勢と一緒に引き揚げて行った。
こうして、マッドブロブ戦は終了。
この世界の平和が守られたように思えた。新たな戦いが起こると誰も分からなかった。
(モテ期到来かな?)
「眠そうだけど、大丈夫?」と一応、声を掛けてみた。
「・・・」
その女性からの返事はない。
(聞こえてなかったのかな?)
気にしないで旅を続けようと思ったら、その女性は小声で「なんだ猫ちゃんか?」とこちらに向かってやってきた。
(なんか覇気の無い、眠そうな女性だな、声をかけなかった方がよかったかな?)
「猫ちゃん見つけた。こんな所で何をしてるの?」
その女性は小声で聞いてきた。
「私の名前はオテロ。ここにいる仲間と旅をしているんだ」
「私の名前はマロニィ。マッドブロブという魔物のせいで住む家を失ってしまって・・・」
「その魔物はまだこの辺りにいるの?」
「いるかどうかは判らない? でも、瘴気で弱らせてから人や家畜を取り込むから、人や家畜の集まる所は危ないかも・・・」
(狙われる可能性があるのか)
幸いにもマッドブロブとは遭遇してなかった。
(運が良かったのだな)
聞き耳をたてていた、アディは警戒した。
「マッドブロブと遭遇するのは、よくないわね。私の知っている情報では、国、地域を越えて討伐隊を編成して対応せざるを得ない魔物なの。普段は国、地域で争っているくせにね。それだけ脅威ということよ。取り込んだら、取り込んだだけ大きくなるなんて生態系を乱す化け物ね」
マロニィは仲間が欲しかったのかもしれない。
「私も一緒に旅しちゃダメかな」
アディはしばらく考え込んだ。
「どうしよう」
結局、相談してきた。
(うーん?)
考えて答えた。
「旅の仲間は一人でも多い方がいいんじゃないかな?」
「うーん。じゃー、一緒についてきて」
マロニィを仲間に加えた。
(足手まといにならないといいな)
その時は、そう思っていた。彼女の強さを全然知らなかった。もちろん、他のメンバーも・・・。
(この気だるさそうな姿を見ていれば、誰もがそう思うよね)
気を取り直して、コロシアムへ向かうため先を急いだ。
その時、鳥が飛び立ち、獣は我先に逃げ出して、我々の前を通りすぎて行った。
(なんだ、なんだ)
「気をつけて、奴が現れたかも」
マロニィが皆に言った。
黒い瘴気がモヤモヤと立ち込めてきたかと思ったら、巨大な影が見えた。噂のマッドブロブが現れたようだ。身体の真ん中に、桃色の核が見える。丸まった大きなアゴ。紫色の身体。取り込んだ岩や木を背中に張りつけている。まるで鎧。背中からの攻撃は、無駄かもしれない。
我々が、次の標的にされたのだ。どうやら、戦うしか生き延びるすべは無い。今、命懸けの死闘が幕を開ける。
マッドブロブは我々を取りこもうと迫って来ていた。そんな中、運悪く悪魔達が大群で現れた。絶体絶命。死を覚悟した。前方にマッドブロブ。後方に悪魔達。
(マッドブロブだけでも大変なのに、よりによってこんな時に・・・)
両方の相手は無理だと思っていた。そんな中、悪魔達のボスが先頭に現れ、攻撃するように命令を下した。漆黒の翼を持つ悪魔。上級悪魔だと直ぐに分かった。
(やれるだけやってやるさ)
悪魔達は我々ではなく、素通りしてマッドブロブに襲いかかった。眼中に無いみたいだった。
(どうなっているの?)
「あらあら、あなたたち生きてたのねぇ。化け物相手にねぇ。ふーん」
悪魔達のボスが上から見下している。その姿を見て興奮するレグス。
「てめぇは、七罪のサタン。このイカサマ野郎!」
「あらっ、みた顔がいると思ったら、あの時の負け犬ねぇ」
「イカサマで勝っただけじゃねぇか」
「それを気付かないで、最後までギャンブルをしたあなたが悪いのよ。気づいた時点で止めるべきだったわねぇ」
「てめぇ!」
激昂していたが、サタンは相手にしていない。
「そんな昔のことより、今はマッドブロブを何とかしなくっちゃ。この世界がメチャクチャになるわぁ」
レグスを無視して、悪魔達の指揮をとっていた。
「くそっ、後で覚えてろよっ!」
レグスは怒っていたが、マッドブロブの方を先に片付けることを選択した。
マッドブロブは強い。全然倒れる気配がない。レグス、アムルガルが本気で戦っているのにも関わらず・・・苦戦中。瘴気に取り込まれてしまえば命を落とすかもしれないのだ。戦い方が慎重になる。体力は無限ではない。誰もがそれなりに疲労している。マッドブロブは雑魚悪魔達を取り込み、吸収している。ドンドン大きくなって、手に負えなくなってきた。
「ちょっとマズイわねぇ。こんなのどうしたらいいのかしら・・・」
攻撃のタイミングを失くしていた。この世界で幸運の女神は、私の側にいた。そう感じていた。その女神は、この場面に天使を遣わした。
「化け物め、宿魔の剣を受けてみよ」
声がした。それと同時に剣圧が飛んできた。
聞き覚えのある声。その方向を見ると天軍の将ゼルエルがいた。彼女は、そのままマッドブロブへ突撃して行った。
マッドブロブは反撃を試みていたが、上空からの剣圧と突撃に参っている。その戦う姿は、美しい蝶が舞っているかのよう。視線を完全に奪われていた。
「あの天使の小娘、なかなかやるわねぇ」
いつの間にかサタンが側に来ていた。
(ドキッ)
気配を感じなかった。
(これが七罪の魔王。敵として戦場で出会っていたなら死んでいたな)
それを気づかれないようにしていた。
膠着状態となった戦場。どちらも手が出せない。
(・・・ひょっとしたら)
あることを閃いた。化け物に勝てる可能性を見つけた。
「黒の大地に押し戻せば勝機があるかも・・・」
「何か作戦があるみたいねぇ。いいわ、言ってみなさい。特別に聞いてあげる」
「白の大地ではドンドン吸収して大きくなるから、黒の大地で補給線を絶ったらどうかな? そうすれば大きくなることを防げて、体力も無限じゃ無くなるかもしれないよ」
「なかなか面白い発想ねぇ。いいわ、今はそれしかないみたい。仕方がないわねぇ。私が囮になって引き寄せるから黒の大地で仕留めるわよ」
サタンがおとり役、黒の大地で奴を仕留める作戦。
仲間とゼルエルに伝えようとした。ゼルエルがこちらに向かってやってくる。背後から触手がゼルエルめがけてのびる。全く気づいていない。
(危ない)
そう思った時、森の中から矢が飛んで、触手を撃ち抜いた。触手の先がボトッと落ちる。
「森の平和をみだす奴は、この俺がゆるさん!」
よく見るとウルの姿がそこにあった。
「オテロ、久しぶりだな」
ウルが側にきた。
「助かったよ。ありがとう」
「こんな、化け物と戦っているとはな、驚いた。旅先で仲間ができたのだな。会えてよかったよ」
「ウルも元気でよかったよ。黒の大地で奴を討伐するのを手伝ってくれないかな」
「分かった。一緒に戦おう。この森を守ることになるのだからな。当然だ」
ここにきての助っ人は非常にありがたかった。
マッドブロブを黒の大地に誘うべく、興味を引くようにサタンの援護をしていた。
ここまではマッドブロブに気づかれていない。順調に作戦が進行している。サタンが選んだ決戦の場所は白の大地と黒の大地の境界線の辺りにある開けた土地だ。
マッドブロブは怒っているのか、進む速度を上げ、魔の軍勢を取り込もうとしていた。
(よし、決戦だ)
サタンの選んだ戦場に着いた。
「ここまでご苦労さま。ここがあなたの墓場よ」
魔の軍勢に突撃の指令。
我々とゼルエル、ウルは魔の軍勢の隙間をぬって、攻撃をしていた。
マッドブロブは補給線を絶たれて、目の前の獲物を吸収することしかできない。移動にも体力を消費する様子。
「今だ」
「今ねぇ」
ゼルエルとサタンが、ほぼ同時に突撃してマッドブロブに大ダメージを与えた。そこにウルが渾身の矢を放つ。
マッドブロブが大きく体勢を崩した。
(やったぞ)
それを待っていた女性がいた。マロニィが闘気を鞭のように放った一撃。マッドブロブを真っ二つにした。予期しない一撃だった。
(普段は気だるそうな姿なのに・・・)
人は見かけによらないと言うことか? あの時、マロニィが偶然にも「旅の仲間になりたい」と言った時、適当なことを言ってしまった。私はダメな人間だ。見る目を改めることにした。・・・反省。
(やっと終わった)
安堵と達成感に、ひたっていた。
「ありがとう。これで森の仲間達の仇がとれた」
小声でしゃべるマロニィ。顔が一瞬、笑顔になるのが見えた。
その後、しばらくしてサタンが側に寄ってきた。
「オテロ、あなたの作戦通りだったわねぇ。この世界の危機は、ひとまず去ったかしら。・・・ところでオテロ。あなた、魔族の仲間になるつもりはないかしら? あなたほどの実力なら直ぐに七罪の一角となれるわよぅ。ルシファーちゃんも喜んであなたを迎えるでしょうねぇ。『魔の大軍師オテロ』なんて二つ名で呼んでくれるかもよ。どうかしら?」
サタンが私を突然、スカウトしてきた。
「貴様」
ゼルエルはサタンの鼻先に剣を突き出した。
「ケンカっぱやい小娘ねぇ。やだわぁ」
微動だにしなかった。剣がそこで止まることをあらかじめ分かっていた様子。
「オテロが魔の軍勢に入る訳が無いだろう」
ゼルエルは興奮している。
「あらっ、そんなことはないわよぅ。オテロ、次第かしら?」
不敵な笑みを浮かべていた。
「・・・だとしても、オテロは貴様らには渡さん」
剣を真横に振った。するとサタンは飛び上がり、剣圧をかわした。
「今日は疲れたから、これくらいにしといてあげるわぁ。ルシファーちゃんに報告しないといけないからねぇ。また改めてスカウトにくるわぁ。じゃーね、魔の大軍師さん」
魔の軍勢と一緒に引き揚げて行った。
こうして、マッドブロブ戦は終了。
この世界の平和が守られたように思えた。新たな戦いが起こると誰も分からなかった。
(モテ期到来かな?)