第8話 次なる戦い
文字数 4,446文字
白の大地は、太陽と月が存在し、草木が生い茂る恵みの大地。アディに聞いた通りだった。ゴルディオンの情報を求め、旅を続けていた。今まで、太陽が降り注ぎ、草木が生い茂っているのが当たり前だった。黒の大地が近づいてくるにつれて、薄暗くなった。そして辺りに草木がない土地に出くわした。
(これが、聞いていた黒の大地か)
常に薄暗く、昼夜の区別がほとんどない。草木の育ちにくい不毛の大地。住んでいる生き物の多くは飢えており、獰猛。その通りだった。
早速、魔物のお出まし。
「キキキ」
「グルルッ」
イロイロな種族がいる。食べる気満々の様子。
(猫は美味しくないぞ、あっちへ行け)
そう心の中で思っていたのだが、魔物はレグス達にアッサリ、返り討ちにあっていた。辺りは、返り討ちにあった魔物達の駒が転がっていた。
(レグス達は強いな)
この先に街か村はあるのだろうか? 食べ物や宿はあるのだろうか?
(あっても歓迎されないだろうな)
てくてくと歩いていると、村の灯りが見えてきた。
なんと意外にも人間の村であった。村の中を捜索して分かったのだが、この村は魔の軍勢の本拠地から離れているので治安はいい方。戦乱に巻き込まれていないが、それがいつまで続くか、誰にも分からない。取りあえず、今日はこの村で宿泊。
「明日は、決闘都市に行くから今日はゆっくり休んでね。明日は大変だから・・・じゃあね」
アディ達は酒場に消えていった。皆、別行動。
いつも通り、ランドタイラント、イモードラ、ムスタバ兄弟と一緒に過ごすことにした。イモードラの焼き芋をほおばることで幸せを感じる。
(でもなぁ)
草木のないところでどうやって焼き芋を作ったのだろう。
(不思議なこともあるものだな)
「どうやって焼き芋作ったの? 落ち葉とか無いよね」
「無い物のことを考えても仕方がないモイ。石は一杯あるから石焼き芋にした。こうするんだ」
石を積み上げて、自分の火炎で熱していた。熱々の石の中に芋を入れていた。
(なるほど、納得)
アルン達、剣士は剣の技についての話で盛り上がっていた。
アルフェッカは侍女二人といる。
クロリスは商いをして、軍資金を調達している。元々、物資の少ない黒の大地。飛ぶように売れる。アムルガルは、その用心棒。暇そうにしていた。
それぞれの一夜を過ごした。
次の朝、薄暗いから朝かどうかは分からない。皆が集まってきた。皆、様子が変だった。
「おはよー、オテロ」
眠そうな声でアディがやって来た。
「おはよう、アディ」
そう言う私も眠かった。アクビが止まらない。
(何か、変だな)
白の大地では太陽と月があったせいかある程度、生活リズムというものがあったが、黒の大地では環境に慣れないせいか調子が狂う。まずは、この大地に順応しなくてはいけない。こんなコンディションの時に、襲われては対応できない。
「もう一日、この村に滞在しよう。この状態で先に進むのは危険だよ」
「そうね。オテロのいう通りよね。この村にもう一日だけ、滞在するから黒の大地に早く順応してよ。また明日、あの枯れ木の下に集合ね」
アディは同じことを皆に言った。
(さて、丸一日どうするか?)
そう考えていた時、アルンに声をかけられた。
「オテロ。久しぶりに剣の稽古につきあってくれないか?」
「いいよ。この大地に順応するには、まず動いてみなければ分からないよね」
「そう言うことだな。その背中の木刀を一本貸してくれないか?」
アルンに一本渡し、辺りに影響が無いように、村はずれの広場に移動した。
「では始めようか」
剣をかまえるアルン。
(今度は前のように不様な負けは、しないぞ)
「よろしくお願いします」
アルンに剣を打ち込んでいった。先手必勝。
お互いの木刀がぶつかる。音がカーンと辺りに響く。
集中していた。お互い、どれだけ打ち込んでいたのだろう。気がつけば、歓声がきこえる。
「オテロ。頑張って」
「アルン。手加減はいらんぞ」
「両方、頑張れー」
いつの間にかアルフェッカ達、ラフィリス達、イモードラ達のグループが集まっていた。
その声援に呼応するようにアルンが力を込めて打ち込んできた。負けずに打ち込んでいたハズだったが、やはり実力が違う。
「うぉりゃー」
アルンが力を入れると木刀が、弾き飛ばされてしまった。
「まいりました」
またアルンに負けてしまった。
「ありがとうございました」
頭を下げる。二度目の完敗。
「ありがとうございました」
勝者のアルンは飛ばされた木刀を回収し、二本の木刀を私に渡す。
「また一緒に稽古してくれ」
剣士グループの祝福の輪に入って行った。
敗者の私にはイモードラが側にいてくれた。
「これでも食って元気だせ」
イモードラは石焼き芋をくれた。
「熱っ。でも、美味しいよ。ありがとう」
そう返すだけで精一杯だった。あまりしゃべると悔し涙がこぼれ落ちそうだった。涙をグッとこらえて、石焼き芋をほおばった。
「アルンって強いのね」
アルフェッカが近づいてきて、隣にすわった。
「そうだね」
「オテロ。泣いてるの」
顔を下からのぞき込んでいる。
(何だよ、涙をこらえているのに・・・)
こぼれ落ちた涙を拭いた。
「もう大丈夫。心配させてゴメンね」
アルフェッカは頬を赤らめていた。
(何で?)
「心配なんかしてないんだから。オテロのバカ」
怒ってアルンの方に行った。侍女の二人は頭を下げて、彼女を追いかけて行った。
(サッパリ、分からない)
姫様の気持ちに気づいていなかった。
「オテロのバカっ」
イモードラとランドタイラントは何が気に入ったのか、アルフェッカの真似をして笑っていた。ムスタバ兄弟は拍手して喜んでいる。皆、それぞれこの村を楽しめた。
(勘弁してくれよ)
気分を変えるために村の中を観光することにした。
その時、二人の女性に出会った。名前はファウルーナとアメリア。
ブーメラン使いのファウルーナ。赤い髪。黒いマントを羽織る。自身の背丈ほどのブーメランを扱う。飾りでは無いと説明する。きゃしゃな細腕のように思えた。
(よく、こんなの投げれるなー)
不思議そうな顔をした。
「そんなことはないわよ。彼女は『剛腕の風姫』なんだから、あのブーメランを放る姿をみれば分かるわよ」
(剛腕ねー)
そのように見えなかった。普通、剛腕といえば、もっと筋肉ムキムキな太い腕を想像するのだが・・・。
鞭使いのアメリア。銀の髪に羊のような角。メガネをかけている。白いブーツを履き、軍服を肩から羽織っている。腰には鞭。本当に軍師なのだろうか? どうしても軍師といえば、あの天才軍師を想像するのだが・・・。
「どうせ別の軍師と比較していたんでしょう。諸葛亮と比べられても困るんだけど・・・」
怒って鞭をかまえる。
心の声がもれていた。・・・反省。
「あなた、一度、私の鞭をくらいなさい」
地面を鞭で叩いた。ファウルーナが助けてくれた。
「アメリアは『聡明なる竜軍師』と言われているんだよ。スゴいよね。オテロが戦闘で、ぼさっとしていたら、後ろから鞭が飛んでくるかもね」
(えっ、何で)
「どうして名前を知っているの? まだ自己紹介してないよね」
「あー、それね。あなた、赤い竜娘と試合していたでしょう。たしかアルンと言っていたかしら、あの娘。そして、あなたが黒猫のオテロだったわよね。偶然、通りかかって見ていたのよ」
「すごい試合だったよね。猫のくせに竜人に挑むなんて、無謀よね。最初はそう思っていたの。それなのに・・・私、感動しちゃった。あなたのファンになったの」
頬を赤らめるファウルーナ。私の手を握ってブンブンと振っていた。
(戦う姿がかっこよかったのかな? いやー、まいったな)
照れ臭くなった。こっちまで赤くなりそうだ。
「そんなことないでしょう。あれはアルンって娘が手を抜いていたから、そう見えただけよ。あきらかに実力に差がありすぎるわ。ファウルーナも冷静になりなさい」
「えー、アメリアも熱心に見てたじゃない。オテロが攻撃した時、身を乗り出していたでしょ」
「ほ、ほうがんびいきよ。そう、判官びいき。わ、私が猫を応援するわけないでしょう」
「うーん、まっ、そういうことにしておくか。ところでオテロは、ここで何をしているの?」
二人に、この村に滞在している理由を説明した。
「じゃぁ、私達も仲間に入れてよ」
ファウルーナ達を仲間にすることとなった。集合時間を教えた。
一旦、二人と別れ、ランドタイラント達と合流し、一緒に時間を過ごした。今すべきは、この大地への順応。ゆっくり休むことにした。気力が充実した。
「オテロ、おはよー」
アディも元気を取り戻している。
皆が集まるのを待って、新たな仲間を紹介し、この村を後にした。薄暗い中、街道のわだちを頼りして前に進んでいた。
黒の大地は草木が育たないから隠れることができない。辺りを警戒しながら、次の街を目指した。
所々で現れる魔物。しかし、レグス達に返り討ち。残骸の駒がいたるところに散らばる。
(まだ着かないのだろうか?)
薄暗いから視界が悪い。見張り番を交代しながら、休憩をする事にした。
次の街が決闘都市と呼ばれている事をアディに聞いた。
「私が知っている限り、その街では上位クラスと勝者だけが評価されるみたい。下位クラスと敗者はゴミクズ扱いされる。勝者こそ全ての街なのよ。私達はその街で勝ち上がり、最上位のダイヤモンドマスターの証しを手に入れる事が次の目標よ」
「そんなの簡単に手にする事ができないよね」
「当然、時間がかかるでしょうね。オテロ、覚悟しておいて。その証しがないといけない場所があるから絶対に手に入れるからね。例え、何ヵ月かかっても絶対に手に入れるわよ。・・・どう、オテロ。怖くなった?」
「大丈夫。必ず手に入れられるように頑張ってみるよ」
アディの不安感を取り除くように言った。本当は、不安だった。
「きっと大丈夫よ」
アディは私の背中をポーンと叩いた。見張り番を交代した。休憩中に魔の軍勢に襲われることは無かった。
「さぁ、出発よ」
薄暗いから視界が悪い。ゆっくり移動している。
やがて街の姿が見えてきた。はやる気持ちを押さえた。
(で、でかい)
やっと決闘都市の前まで来た。この先には何が待ち受けるのか? 新たな戦いが、いよいよ始まろうとしていた。
(ここまでアディについてきたけど、結局、元の世界へ帰る方法は、見つからなかったな)
(これが、聞いていた黒の大地か)
常に薄暗く、昼夜の区別がほとんどない。草木の育ちにくい不毛の大地。住んでいる生き物の多くは飢えており、獰猛。その通りだった。
早速、魔物のお出まし。
「キキキ」
「グルルッ」
イロイロな種族がいる。食べる気満々の様子。
(猫は美味しくないぞ、あっちへ行け)
そう心の中で思っていたのだが、魔物はレグス達にアッサリ、返り討ちにあっていた。辺りは、返り討ちにあった魔物達の駒が転がっていた。
(レグス達は強いな)
この先に街か村はあるのだろうか? 食べ物や宿はあるのだろうか?
(あっても歓迎されないだろうな)
てくてくと歩いていると、村の灯りが見えてきた。
なんと意外にも人間の村であった。村の中を捜索して分かったのだが、この村は魔の軍勢の本拠地から離れているので治安はいい方。戦乱に巻き込まれていないが、それがいつまで続くか、誰にも分からない。取りあえず、今日はこの村で宿泊。
「明日は、決闘都市に行くから今日はゆっくり休んでね。明日は大変だから・・・じゃあね」
アディ達は酒場に消えていった。皆、別行動。
いつも通り、ランドタイラント、イモードラ、ムスタバ兄弟と一緒に過ごすことにした。イモードラの焼き芋をほおばることで幸せを感じる。
(でもなぁ)
草木のないところでどうやって焼き芋を作ったのだろう。
(不思議なこともあるものだな)
「どうやって焼き芋作ったの? 落ち葉とか無いよね」
「無い物のことを考えても仕方がないモイ。石は一杯あるから石焼き芋にした。こうするんだ」
石を積み上げて、自分の火炎で熱していた。熱々の石の中に芋を入れていた。
(なるほど、納得)
アルン達、剣士は剣の技についての話で盛り上がっていた。
アルフェッカは侍女二人といる。
クロリスは商いをして、軍資金を調達している。元々、物資の少ない黒の大地。飛ぶように売れる。アムルガルは、その用心棒。暇そうにしていた。
それぞれの一夜を過ごした。
次の朝、薄暗いから朝かどうかは分からない。皆が集まってきた。皆、様子が変だった。
「おはよー、オテロ」
眠そうな声でアディがやって来た。
「おはよう、アディ」
そう言う私も眠かった。アクビが止まらない。
(何か、変だな)
白の大地では太陽と月があったせいかある程度、生活リズムというものがあったが、黒の大地では環境に慣れないせいか調子が狂う。まずは、この大地に順応しなくてはいけない。こんなコンディションの時に、襲われては対応できない。
「もう一日、この村に滞在しよう。この状態で先に進むのは危険だよ」
「そうね。オテロのいう通りよね。この村にもう一日だけ、滞在するから黒の大地に早く順応してよ。また明日、あの枯れ木の下に集合ね」
アディは同じことを皆に言った。
(さて、丸一日どうするか?)
そう考えていた時、アルンに声をかけられた。
「オテロ。久しぶりに剣の稽古につきあってくれないか?」
「いいよ。この大地に順応するには、まず動いてみなければ分からないよね」
「そう言うことだな。その背中の木刀を一本貸してくれないか?」
アルンに一本渡し、辺りに影響が無いように、村はずれの広場に移動した。
「では始めようか」
剣をかまえるアルン。
(今度は前のように不様な負けは、しないぞ)
「よろしくお願いします」
アルンに剣を打ち込んでいった。先手必勝。
お互いの木刀がぶつかる。音がカーンと辺りに響く。
集中していた。お互い、どれだけ打ち込んでいたのだろう。気がつけば、歓声がきこえる。
「オテロ。頑張って」
「アルン。手加減はいらんぞ」
「両方、頑張れー」
いつの間にかアルフェッカ達、ラフィリス達、イモードラ達のグループが集まっていた。
その声援に呼応するようにアルンが力を込めて打ち込んできた。負けずに打ち込んでいたハズだったが、やはり実力が違う。
「うぉりゃー」
アルンが力を入れると木刀が、弾き飛ばされてしまった。
「まいりました」
またアルンに負けてしまった。
「ありがとうございました」
頭を下げる。二度目の完敗。
「ありがとうございました」
勝者のアルンは飛ばされた木刀を回収し、二本の木刀を私に渡す。
「また一緒に稽古してくれ」
剣士グループの祝福の輪に入って行った。
敗者の私にはイモードラが側にいてくれた。
「これでも食って元気だせ」
イモードラは石焼き芋をくれた。
「熱っ。でも、美味しいよ。ありがとう」
そう返すだけで精一杯だった。あまりしゃべると悔し涙がこぼれ落ちそうだった。涙をグッとこらえて、石焼き芋をほおばった。
「アルンって強いのね」
アルフェッカが近づいてきて、隣にすわった。
「そうだね」
「オテロ。泣いてるの」
顔を下からのぞき込んでいる。
(何だよ、涙をこらえているのに・・・)
こぼれ落ちた涙を拭いた。
「もう大丈夫。心配させてゴメンね」
アルフェッカは頬を赤らめていた。
(何で?)
「心配なんかしてないんだから。オテロのバカ」
怒ってアルンの方に行った。侍女の二人は頭を下げて、彼女を追いかけて行った。
(サッパリ、分からない)
姫様の気持ちに気づいていなかった。
「オテロのバカっ」
イモードラとランドタイラントは何が気に入ったのか、アルフェッカの真似をして笑っていた。ムスタバ兄弟は拍手して喜んでいる。皆、それぞれこの村を楽しめた。
(勘弁してくれよ)
気分を変えるために村の中を観光することにした。
その時、二人の女性に出会った。名前はファウルーナとアメリア。
ブーメラン使いのファウルーナ。赤い髪。黒いマントを羽織る。自身の背丈ほどのブーメランを扱う。飾りでは無いと説明する。きゃしゃな細腕のように思えた。
(よく、こんなの投げれるなー)
不思議そうな顔をした。
「そんなことはないわよ。彼女は『剛腕の風姫』なんだから、あのブーメランを放る姿をみれば分かるわよ」
(剛腕ねー)
そのように見えなかった。普通、剛腕といえば、もっと筋肉ムキムキな太い腕を想像するのだが・・・。
鞭使いのアメリア。銀の髪に羊のような角。メガネをかけている。白いブーツを履き、軍服を肩から羽織っている。腰には鞭。本当に軍師なのだろうか? どうしても軍師といえば、あの天才軍師を想像するのだが・・・。
「どうせ別の軍師と比較していたんでしょう。諸葛亮と比べられても困るんだけど・・・」
怒って鞭をかまえる。
心の声がもれていた。・・・反省。
「あなた、一度、私の鞭をくらいなさい」
地面を鞭で叩いた。ファウルーナが助けてくれた。
「アメリアは『聡明なる竜軍師』と言われているんだよ。スゴいよね。オテロが戦闘で、ぼさっとしていたら、後ろから鞭が飛んでくるかもね」
(えっ、何で)
「どうして名前を知っているの? まだ自己紹介してないよね」
「あー、それね。あなた、赤い竜娘と試合していたでしょう。たしかアルンと言っていたかしら、あの娘。そして、あなたが黒猫のオテロだったわよね。偶然、通りかかって見ていたのよ」
「すごい試合だったよね。猫のくせに竜人に挑むなんて、無謀よね。最初はそう思っていたの。それなのに・・・私、感動しちゃった。あなたのファンになったの」
頬を赤らめるファウルーナ。私の手を握ってブンブンと振っていた。
(戦う姿がかっこよかったのかな? いやー、まいったな)
照れ臭くなった。こっちまで赤くなりそうだ。
「そんなことないでしょう。あれはアルンって娘が手を抜いていたから、そう見えただけよ。あきらかに実力に差がありすぎるわ。ファウルーナも冷静になりなさい」
「えー、アメリアも熱心に見てたじゃない。オテロが攻撃した時、身を乗り出していたでしょ」
「ほ、ほうがんびいきよ。そう、判官びいき。わ、私が猫を応援するわけないでしょう」
「うーん、まっ、そういうことにしておくか。ところでオテロは、ここで何をしているの?」
二人に、この村に滞在している理由を説明した。
「じゃぁ、私達も仲間に入れてよ」
ファウルーナ達を仲間にすることとなった。集合時間を教えた。
一旦、二人と別れ、ランドタイラント達と合流し、一緒に時間を過ごした。今すべきは、この大地への順応。ゆっくり休むことにした。気力が充実した。
「オテロ、おはよー」
アディも元気を取り戻している。
皆が集まるのを待って、新たな仲間を紹介し、この村を後にした。薄暗い中、街道のわだちを頼りして前に進んでいた。
黒の大地は草木が育たないから隠れることができない。辺りを警戒しながら、次の街を目指した。
所々で現れる魔物。しかし、レグス達に返り討ち。残骸の駒がいたるところに散らばる。
(まだ着かないのだろうか?)
薄暗いから視界が悪い。見張り番を交代しながら、休憩をする事にした。
次の街が決闘都市と呼ばれている事をアディに聞いた。
「私が知っている限り、その街では上位クラスと勝者だけが評価されるみたい。下位クラスと敗者はゴミクズ扱いされる。勝者こそ全ての街なのよ。私達はその街で勝ち上がり、最上位のダイヤモンドマスターの証しを手に入れる事が次の目標よ」
「そんなの簡単に手にする事ができないよね」
「当然、時間がかかるでしょうね。オテロ、覚悟しておいて。その証しがないといけない場所があるから絶対に手に入れるからね。例え、何ヵ月かかっても絶対に手に入れるわよ。・・・どう、オテロ。怖くなった?」
「大丈夫。必ず手に入れられるように頑張ってみるよ」
アディの不安感を取り除くように言った。本当は、不安だった。
「きっと大丈夫よ」
アディは私の背中をポーンと叩いた。見張り番を交代した。休憩中に魔の軍勢に襲われることは無かった。
「さぁ、出発よ」
薄暗いから視界が悪い。ゆっくり移動している。
やがて街の姿が見えてきた。はやる気持ちを押さえた。
(で、でかい)
やっと決闘都市の前まで来た。この先には何が待ち受けるのか? 新たな戦いが、いよいよ始まろうとしていた。
(ここまでアディについてきたけど、結局、元の世界へ帰る方法は、見つからなかったな)