第4話
文字数 676文字
ブラブラと商店街を歩く。買い物は駅の近くにあるスーパーですませてしまう事が多いので、この商店街はほとんど来ることがない。ファミレスにでも行こうか。そう思った矢先にある張り紙が目に止まった。
平日限定モーニングアリマス。五百円。美味しいヨ。
イメージ写真もなにもない張り紙は、丸っこい可愛らしい文字で書かれていて、妙なところでカタカナを使っている。けれどその感じが美里は嫌いじゃなかった。むしろワンコインなら失敗しても好奇心に投資したと思えばいいという気持ちにさせる。店を見上げると昭和レトロという表現がピッタリな昔ながらのレンガ作りの店構えだ。『ゆくすゑ』という店名も渋くて悪くない。美里はよしチャレンジ、とつぶやいてそっとドアをあける。チリリンというドアベルが鳴ると同時に店主らしい女性が声をかけてきた。
「いらっしゃい。お好きな席にどうぞ」
美里は慣れない店ゆえに落ち着かず、なんとなく奥まった席にちょこんと腰掛けた。
「あの、モーニングをお願いしたいのですが」
オーダーをとりにきた店主は美里の顔をほんの数秒見つめたあと、目尻をさげて微笑んだ。
「モーニングですね。少々お待ちください」
その優しい笑顔になんとなく身体の力が抜けて、美里は背もたれに身を委ねた。オレンジ色の革張りソファに、使い込まれた飴色の木製テーブル。レンガ模様のビニールタイプの床。お店は落ち着いたジャズのナンバーが流れていて、静か過ぎずうるさ過ぎない。店主らしき女性は母親と同じくらいの年齢だろう。母親が生きていた頃の実家の雰囲気にお店がすこし似ている気がして、美里の心は和む。
平日限定モーニングアリマス。五百円。美味しいヨ。
イメージ写真もなにもない張り紙は、丸っこい可愛らしい文字で書かれていて、妙なところでカタカナを使っている。けれどその感じが美里は嫌いじゃなかった。むしろワンコインなら失敗しても好奇心に投資したと思えばいいという気持ちにさせる。店を見上げると昭和レトロという表現がピッタリな昔ながらのレンガ作りの店構えだ。『ゆくすゑ』という店名も渋くて悪くない。美里はよしチャレンジ、とつぶやいてそっとドアをあける。チリリンというドアベルが鳴ると同時に店主らしい女性が声をかけてきた。
「いらっしゃい。お好きな席にどうぞ」
美里は慣れない店ゆえに落ち着かず、なんとなく奥まった席にちょこんと腰掛けた。
「あの、モーニングをお願いしたいのですが」
オーダーをとりにきた店主は美里の顔をほんの数秒見つめたあと、目尻をさげて微笑んだ。
「モーニングですね。少々お待ちください」
その優しい笑顔になんとなく身体の力が抜けて、美里は背もたれに身を委ねた。オレンジ色の革張りソファに、使い込まれた飴色の木製テーブル。レンガ模様のビニールタイプの床。お店は落ち着いたジャズのナンバーが流れていて、静か過ぎずうるさ過ぎない。店主らしき女性は母親と同じくらいの年齢だろう。母親が生きていた頃の実家の雰囲気にお店がすこし似ている気がして、美里の心は和む。