第6話
文字数 761文字
「いただきます」
店主は嬉しそうに頷いたあと、そっと美里の耳元で囁いた。
「これはサービス。他のお客さんには内緒ね」
そういってまわりのお客をみまわしてから、お手製らしいプリンが載った小さな皿をプレートの横に置いた。
「え?」
美里が店主をみあげると細い瞳をさらに細めて彼女は微笑んだ。
「お姉さん、なんだか元気がないようにみえたから。プリン苦手?」
美里はぶんぶんと首を横にふる。
「それならよかった。食べて元気をだしてね」
カウンターに戻る店主の後ろ姿を見つめる。すこしぽっちゃりした丸い背中が、母親に被って涙がでそうになる。それからうん、とひとつうなづいてトーストに手を伸ばした。
バターが染み込んだ厚切りトーストが胃に落ちていったら一気に食欲がわいてきて、あっという間にモーニングを平らげてしまった。最後にプリンをスプーンですくって口にいれる。手作りの懐かしい甘い味が舌に染み込んで美里は思わず目を閉じる。
美里のなかに気力が満ちてくるのを感じた。これは亡くなった母からのエールだ。誰が信じなくても美里自身はそう感じた。頼りない自分を心配したお腹の赤ちゃんが、天国にいる美里の母親に伝えてくれたのかもしれない。全て綺麗に食べきって一息ついたあと、美里は立ち上がった。
「ご馳走様でした。とっても美味しかったです」
レジで美里が心を込めてそう伝えると、店主は嬉しそうに何度もうなづいた。
「お姉さんの顔をみたらわかる。とっても美味しく食べてくれたんだなって」
店主の笑顔が反射したように美里の表情も明るくなる。また必ず来ます。そう言って頭を下げた。お腹も心も満たされた美里は店の外にでると、スマホをとりだした。とにかく彼に妊娠のことをつたえようと心を決めた。その後どうなるかはまた考えればいい。一番大事なのは赤ちゃんなのだから。
店主は嬉しそうに頷いたあと、そっと美里の耳元で囁いた。
「これはサービス。他のお客さんには内緒ね」
そういってまわりのお客をみまわしてから、お手製らしいプリンが載った小さな皿をプレートの横に置いた。
「え?」
美里が店主をみあげると細い瞳をさらに細めて彼女は微笑んだ。
「お姉さん、なんだか元気がないようにみえたから。プリン苦手?」
美里はぶんぶんと首を横にふる。
「それならよかった。食べて元気をだしてね」
カウンターに戻る店主の後ろ姿を見つめる。すこしぽっちゃりした丸い背中が、母親に被って涙がでそうになる。それからうん、とひとつうなづいてトーストに手を伸ばした。
バターが染み込んだ厚切りトーストが胃に落ちていったら一気に食欲がわいてきて、あっという間にモーニングを平らげてしまった。最後にプリンをスプーンですくって口にいれる。手作りの懐かしい甘い味が舌に染み込んで美里は思わず目を閉じる。
美里のなかに気力が満ちてくるのを感じた。これは亡くなった母からのエールだ。誰が信じなくても美里自身はそう感じた。頼りない自分を心配したお腹の赤ちゃんが、天国にいる美里の母親に伝えてくれたのかもしれない。全て綺麗に食べきって一息ついたあと、美里は立ち上がった。
「ご馳走様でした。とっても美味しかったです」
レジで美里が心を込めてそう伝えると、店主は嬉しそうに何度もうなづいた。
「お姉さんの顔をみたらわかる。とっても美味しく食べてくれたんだなって」
店主の笑顔が反射したように美里の表情も明るくなる。また必ず来ます。そう言って頭を下げた。お腹も心も満たされた美里は店の外にでると、スマホをとりだした。とにかく彼に妊娠のことをつたえようと心を決めた。その後どうなるかはまた考えればいい。一番大事なのは赤ちゃんなのだから。