第1話 【虫たち】

文字数 557文字

僕は虫を2匹飼っていた。
名前は「サバイバー、虐待サバイバー」

虫が僕の前に現れる時は、思考が停止して
パニックになる。
まるで世界に僕の存在すべてを否定されているみたいだった。
悲しくてつらくて声を出さずに涙が出た。

普通に生活をしていて突然、僕の周りを飛び回り
常識外れの、めちゃくちゃなことを言うんだ。
そして、めちゃくちゃなことをすると笑って喜ぶんだ。
例えば、タバコの火を歩いている人に投げたり、
車に乗っていて歩いている人に暴言を吐いたりすると虫はゲラゲラと笑いだす。

虫のせいでぼくは強く成ろうとした。
髪型は茶髪にされて今どき流行りのいかつい髪型になった。
はやく大人になれと、虫たちが進めたのは「お酒」と「タバコ」だった。

僕は周囲に怖がられた。
でも、ある人たちからは、わがまま、なまけている、甘えていると誤解された。

虫たちは周囲の人たちの常識とは違うことをいう、コマーシャルのACはクソだといい、ウザイという。虫たちは自分たちが正しいと、テレビに怒鳴った。
虫はいつもいっていた。「他人はしょせん敵だ」と。
僕は虫たちから愛情が欲しかったんだ。まだ、欲しかったんだ。
誕生日にはケーキでお祝いしてもらって、休日はどこかに一緒に行きたかった。
でも、虫たちは夜になると僕をひとりぼっちにさせた。
僕はひとり布団の中で声を殺して泣いた。
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